昔々、ハンサン王という偉い人がいた。人々は、「将来はハンサン王がこの島を治めてくれるだろう。」と願っていると、反対の人間もいて、「ハンサン王をどうしてもどこかにやらないと自分らの勝手にはできないぞ。」と思って、ハンサン王を島流しにしたいと考えて、上の人にいろいろ嘘をついてハンサン王の悪口を言ったので、上の人はそれを本当だと思って、「それでは、ハンサン王を早くどこかにやらないと良くない。虎島に島流しにしろ。」と命令した。このハンサン王という人は正直な人間だから、上から命令されるとおとなしく島流しの船に乗った。やがてハンサン王を乗せて来た船は虎島に着いた。虎島という島は大きいけれども、人は一人もおらず、虎ばかりがいたから、ハンサン王を島流しにしたいと思っていた人達は、その島に置けば、ハンサン王は虎に食われるはずだと思って、ハンサン王を置き去りにするとすぐに帰って行った。虎島に置き去りにされたハンサン王は、どうすれば虎に食べられないかと考えて、「まず上に登ってみよう。」と島の上の方に登ると広いきれいな野原があった。見ると遠い所に大きな柳の木があった。ハンサン王は、「ああ、この柳の下に行って休んでからどっかに行こう。」とそこに行って休んでいるうちに、向こうの山から大きな虎が出て来てどんどん近くに来た。「この虎は自分を食べに来たんだなあ。私はこの虎の腹に入るだろう。」と思っていると虎は、ハンサン王の傍に来て坐った。その虎の頭や足に触ってみたが、虎はハンサン王を食おうとしなかった。「これは不思議だ。私を食いに来たかと思ったら、おとなしくしている。」と立ち上がると虎も立ち上がり、座ると虎も座った。「おかしいな。」と、ハンサン王がまた立つと、虎は後から来て、まるで乗れというようにするので、虎の背中にまたがって乗ると、虎は耳に捕まれというように耳を動かすから、耳に捕まると虎は立ち上がって、一足二足歩き、それから山に向かって走り出した。ハンサン王は驚いて、「山の中に行くのは恐いなあ。」と思っていると、虎はどんどん山の中に入って行って、とうとう一番大きい山の奥に連れて行った。そこには大きな川原があってね、その傍には、人が住める大きい岩屋があった。ハンサン王は疲れていたから、その岩屋に入って休んでいるうちに、虎はどこかに下りて行った。だから、ハンサン王は、「仲間を連れて来るのかな。」と思っていたが、それからは虎は一匹も来なかった。ハンサン王は山から木をどんどん取って来ると、火打ち石を打って火を焚(た)き、近くの木にぶら下がっている芋のようなものがあったから、それを取って来て火に焼いて食べてみたら、おいしかった。生でも食べてみると生でも食えた。「これだったらもういつまでも大丈夫だ。」とその芋ばっかし食べながら元気に暮らしていた。そのうちに一カ年が経った。ハンサン王は仕事がないから、刀で木を削った板に「ハンサン王」と書いて川に流した。また枯木や木の葉にも「ハンサン王」と書いてどんどん流した。そのころ、ハンサン王を島流しにした悪い人間は、もうむちゃくちゃな政治をしたので、人々は飢えていた。そのうちに、「これじゃあしようがない。ハンサン王でなければこの島の人々は暮らせない。」と言っているうちに、海岸に行った人々が「ハンサン王」と書いてある木の葉を見つけた。だから、「ハンサン王は虎島に流されて死んでいると思ったら、名前が書いてあるから、これは生きているんだなあ。」と考えて、村に帰るとみんなに言った。「ハンサン王は、まだ生きてるよ。」と言った。「どうして分かるか。」「はい、海岸端に行った人が皆ハンサン王と書いた木の葉を持って来たよ。」と上の人に見せた。すると、上の人は、「ハンサン王はいったいどこにいるか。」と言うと、葉を拾ってきた人は、「ハンサン王と書いたのが川を流れてきているから、虎島の一番大きい川の川原の傍にいる。」と言うと、上の人は考えて、「そんなら、そこまで行ってハンサン王に罪をまぬがれているから早く帰って来いと言って、ハンサン王をお連れして来い。」と言った。偉い人に命令された人は虎島に行き一番大きい川をどんどん逆上って行くと、川原の傍にハンサン王がいたので、「私は、ハンサン王さんのお連れして来いと言われたから来ました。どうぞお帰りください。」と言うと、ハンサン王は、「いや、わしはもう島流しされて、ここに来ているから帰ることはできない。」と言ったが、「いや、これまであなたを罪にした人が島をむちゃくちゃにしてしまって、あなたでなかったら、島の人は暮らせないということになってハンサン王は罪をまぬがれているから早くお迎えして来いと言われて来ました。」「それじゃ、帰ることにする。あんたらはあっちで待っててくれ。」と言って、「自分はこの島に来て野原に出たとき、あの木の下に行ったから、この木の技を記念として持って帰る。」と柳の枝を折り、そこに咲いていた菊の花を持って来た。また、「わしは何を食べたかと言うと芋ばっかし食べたから、これは自分の命の親として持って行かんといけない。これを持って帰る。」と言って、芋も虎島から初めて持って帰って来て、「わしは、こういうもんを食べていたよ。これは苗を植えても、切って土に埋めただけでも大きくなる。食うときは焼いてでも生のままでも食えるから、食物にいちばんいい。」と人々に言ってその芋を広めた。その芋を持って帰ってきたのが、九月九日だから芋のお祝いは九月九日にやるようになった。
| レコード番号 | 47O202063 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C110 |
| 決定題名 | トラ島のハンサン王(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 大久真徳 |
| 話者名かな | だいくしんとく |
| 生年月日 | 18941018 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町小浜 |
| 記録日 | 19760805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄県口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字小浜T29A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 虎,芋,九月九日 |
| 梗概(こうがい) | 昔々、ハンサン王という偉い人がいた。人々は、「将来はハンサン王がこの島を治めてくれるだろう。」と願っていると、反対の人間もいて、「ハンサン王をどうしてもどこかにやらないと自分らの勝手にはできないぞ。」と思って、ハンサン王を島流しにしたいと考えて、上の人にいろいろ嘘をついてハンサン王の悪口を言ったので、上の人はそれを本当だと思って、「それでは、ハンサン王を早くどこかにやらないと良くない。虎島に島流しにしろ。」と命令した。このハンサン王という人は正直な人間だから、上から命令されるとおとなしく島流しの船に乗った。やがてハンサン王を乗せて来た船は虎島に着いた。虎島という島は大きいけれども、人は一人もおらず、虎ばかりがいたから、ハンサン王を島流しにしたいと思っていた人達は、その島に置けば、ハンサン王は虎に食われるはずだと思って、ハンサン王を置き去りにするとすぐに帰って行った。虎島に置き去りにされたハンサン王は、どうすれば虎に食べられないかと考えて、「まず上に登ってみよう。」と島の上の方に登ると広いきれいな野原があった。見ると遠い所に大きな柳の木があった。ハンサン王は、「ああ、この柳の下に行って休んでからどっかに行こう。」とそこに行って休んでいるうちに、向こうの山から大きな虎が出て来てどんどん近くに来た。「この虎は自分を食べに来たんだなあ。私はこの虎の腹に入るだろう。」と思っていると虎は、ハンサン王の傍に来て坐った。その虎の頭や足に触ってみたが、虎はハンサン王を食おうとしなかった。「これは不思議だ。私を食いに来たかと思ったら、おとなしくしている。」と立ち上がると虎も立ち上がり、座ると虎も座った。「おかしいな。」と、ハンサン王がまた立つと、虎は後から来て、まるで乗れというようにするので、虎の背中にまたがって乗ると、虎は耳に捕まれというように耳を動かすから、耳に捕まると虎は立ち上がって、一足二足歩き、それから山に向かって走り出した。ハンサン王は驚いて、「山の中に行くのは恐いなあ。」と思っていると、虎はどんどん山の中に入って行って、とうとう一番大きい山の奥に連れて行った。そこには大きな川原があってね、その傍には、人が住める大きい岩屋があった。ハンサン王は疲れていたから、その岩屋に入って休んでいるうちに、虎はどこかに下りて行った。だから、ハンサン王は、「仲間を連れて来るのかな。」と思っていたが、それからは虎は一匹も来なかった。ハンサン王は山から木をどんどん取って来ると、火打ち石を打って火を焚(た)き、近くの木にぶら下がっている芋のようなものがあったから、それを取って来て火に焼いて食べてみたら、おいしかった。生でも食べてみると生でも食えた。「これだったらもういつまでも大丈夫だ。」とその芋ばっかし食べながら元気に暮らしていた。そのうちに一カ年が経った。ハンサン王は仕事がないから、刀で木を削った板に「ハンサン王」と書いて川に流した。また枯木や木の葉にも「ハンサン王」と書いてどんどん流した。そのころ、ハンサン王を島流しにした悪い人間は、もうむちゃくちゃな政治をしたので、人々は飢えていた。そのうちに、「これじゃあしようがない。ハンサン王でなければこの島の人々は暮らせない。」と言っているうちに、海岸に行った人々が「ハンサン王」と書いてある木の葉を見つけた。だから、「ハンサン王は虎島に流されて死んでいると思ったら、名前が書いてあるから、これは生きているんだなあ。」と考えて、村に帰るとみんなに言った。「ハンサン王は、まだ生きてるよ。」と言った。「どうして分かるか。」「はい、海岸端に行った人が皆ハンサン王と書いた木の葉を持って来たよ。」と上の人に見せた。すると、上の人は、「ハンサン王はいったいどこにいるか。」と言うと、葉を拾ってきた人は、「ハンサン王と書いたのが川を流れてきているから、虎島の一番大きい川の川原の傍にいる。」と言うと、上の人は考えて、「そんなら、そこまで行ってハンサン王に罪をまぬがれているから早く帰って来いと言って、ハンサン王をお連れして来い。」と言った。偉い人に命令された人は虎島に行き一番大きい川をどんどん逆上って行くと、川原の傍にハンサン王がいたので、「私は、ハンサン王さんのお連れして来いと言われたから来ました。どうぞお帰りください。」と言うと、ハンサン王は、「いや、わしはもう島流しされて、ここに来ているから帰ることはできない。」と言ったが、「いや、これまであなたを罪にした人が島をむちゃくちゃにしてしまって、あなたでなかったら、島の人は暮らせないということになってハンサン王は罪をまぬがれているから早くお迎えして来いと言われて来ました。」「それじゃ、帰ることにする。あんたらはあっちで待っててくれ。」と言って、「自分はこの島に来て野原に出たとき、あの木の下に行ったから、この木の技を記念として持って帰る。」と柳の枝を折り、そこに咲いていた菊の花を持って来た。また、「わしは何を食べたかと言うと芋ばっかし食べたから、これは自分の命の親として持って行かんといけない。これを持って帰る。」と言って、芋も虎島から初めて持って帰って来て、「わしは、こういうもんを食べていたよ。これは苗を植えても、切って土に埋めただけでも大きくなる。食うときは焼いてでも生のままでも食えるから、食物にいちばんいい。」と人々に言ってその芋を広めた。その芋を持って帰ってきたのが、九月九日だから芋のお祝いは九月九日にやるようになった。 |
| 全体の記録時間数 | 15:45 |
| 物語の時間数 | 14:54 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |