昔、兄弟二人がおって兄さんは親不孝だから自分の親父(おやじ)を養いたくなかったから、弟に、「自分は親を養わないから、あんたが養え。」と言った。弟は親孝行者(おやこうこうもん)だったから毎日山に行って薪を取った金で年寄った親を養っていた。ある日、弟が薪を探しにずうっと山奥へ入って行くと爺さんと婆さんが山の中に住んでいたので、その爺さんと婆さんに、「人もいない山奥でなぜ暮らしているんですか。」と聞いたら、「わしら二人は村にいると税金やいろんなものがあるから食うことができなくて、税金がないここに逃げてきて住んでいる。」と言ったからね、「ああ、そうですか。」と言うと、爺さんが、「あんたは、またなんでこんなに遠い所に来たのか。」と言うから、「私は毎日薪を切って来て売って親を養っています。最初は近くの山の木を切っていたが、近くの山には薪になる木がなくなったから、今日はこんな山の中に来ました。」と言ったら、「そうか、あんたが親父を養ってるのか。そんならあんたに儲けをさせてやるから、わしの言うことを聞きなさい。」と言うから、「はい、教えて下さい。」と返事すると、「薪をどんどん売って金を貯めたらお正月前には、町で牛の肉を売っているから、あんたの持てるぐらい牛肉を買って持って来なさい。そうしたら、あんたはとても良いことがある。」と教えてくれた。だから、この人は毎日山奥から薪を取ると町に行って売り、お金を貯めておいて、お正月になると牛肉を沢山買って、山奥の爺さんと婆さんのところに担いで来た。「教えてもらったように肉を持って来ました。」「そんなら、もっと山奥に行く道があるから、その道をずんずん通って行くとそこに村があるから、その村に牛肉を持って行って見せなさい。そしたら、その村の人はお金でも、お米でも何でも、あなたが持ちきれないくらいくれると言っても、それは絶対受け取らないで、粉を挽(ひ)く臼と交換しなさい。その臼を持って来たら、臼の使い方を教えてやる。」と言ったから、この男はもっと山奥の村に牛肉を持って行った。その村の人は牛肉(うしにく)がとても好きで、何を売っても牛肉を食べたいと思っていたから、その男の人が牛の肉を持って行って、「お金では絶対に売らない。臼となら交換する。」と言うと、部落民はどうするかと相談した。すると、すぐに、「ああ、この臼を出したら大変だ。」と反対する人もいたが、半分以上の人は、「この臼は使い道が分からないから臼と交換して肉を食べよう。」と言ったので、臼と牛の肉を交換してくれた。男は、その臼を婆さん爺さん所へ持って来て、「臼を持って来ました。これをどうするのですか。」と言うと、「あんたの欲しいものはね、こんなにする。」と臼を挽きながら、「今日は、おいしいもの食べたい。」と言って臼を挽いたらね、その臼からおいしいご飯も、いろんなおかずもみんなどんどん出てきた。だからおいしい食べ物を年寄りの夫婦も食べ、自分も食べて、「次はなに出ろ。」と欲しい食べ物を言ったら、すぐ臼から出てきた。だからそれも食べていると、「これはこうして使えば、欲しいものが何でも出てくるから、あんたはこれから金持になるよ。」と言って、臼を渡してくれたから、「爺さん婆さんには何が欲しいですか。」と言ったら、「お米を出して行け。」と言ったので、「お米が欲しい。」と言って米を出したら、家いっぱい米が出た。その男は家に帰ると臼を親に見せて、「欲しいものを言ってこの臼を回すと、米でも何でも欲しいものはみんな出て来るから、それを食べて下さい。」と言って親に教えると、親は米もいっぱいに出してご飯を食べた。そうして親を養っていると、旅に出ていた兄さんが帰ってきて弟が宝の臼を持ってきて楽にしていると聞いたから、弟の家に来て見ると弟は、「今はとてものんきにしている。これ以上楽なことはないよ。」と言うから、「あんたは臼を持って来たと言うのは本当か。」と聞くから、弟は、「そうだよ。どんなおいしいものを食べる。」と言って、「おいしいもの。」って臼を挽いたら、おいしいものがたくさん出た。兄さんは、それを食べたらとっても羨ましくなって、「これは、わしに貸せ。」と言った。「いや、これだけは絶対貸さない。」と弟が言うからね、兄さんは、弟のいない時に臼を盗むと舟に乗せて自分の家に持って行く途中で、塩がいちばんおいしいと思ったから、「塩よ、出ろ。」と回したら、塩が舟いっぱい出たから、舟は持ちきれん。ボンボンと舟はそのまま海の中に沈んで臼も沈んで、それから毎日、海の底で塩を出すから、昔の海の水は甘かったけど、今はその臼のせいで世界中の海の潮が辛くなっているという話だ。
| レコード番号 | 47O201853 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C101 |
| 決定題名 | 塩吹き臼(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 大久真徳 |
| 話者名かな | だいくしんとく |
| 生年月日 | 18941018 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町小浜 |
| 記録日 | 19750808 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄県口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字小浜T46A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 兄弟,薪,牛肉,臼,塩 |
| 梗概(こうがい) | 昔、兄弟二人がおって兄さんは親不孝だから自分の親父(おやじ)を養いたくなかったから、弟に、「自分は親を養わないから、あんたが養え。」と言った。弟は親孝行者(おやこうこうもん)だったから毎日山に行って薪を取った金で年寄った親を養っていた。ある日、弟が薪を探しにずうっと山奥へ入って行くと爺さんと婆さんが山の中に住んでいたので、その爺さんと婆さんに、「人もいない山奥でなぜ暮らしているんですか。」と聞いたら、「わしら二人は村にいると税金やいろんなものがあるから食うことができなくて、税金がないここに逃げてきて住んでいる。」と言ったからね、「ああ、そうですか。」と言うと、爺さんが、「あんたは、またなんでこんなに遠い所に来たのか。」と言うから、「私は毎日薪を切って来て売って親を養っています。最初は近くの山の木を切っていたが、近くの山には薪になる木がなくなったから、今日はこんな山の中に来ました。」と言ったら、「そうか、あんたが親父を養ってるのか。そんならあんたに儲けをさせてやるから、わしの言うことを聞きなさい。」と言うから、「はい、教えて下さい。」と返事すると、「薪をどんどん売って金を貯めたらお正月前には、町で牛の肉を売っているから、あんたの持てるぐらい牛肉を買って持って来なさい。そうしたら、あんたはとても良いことがある。」と教えてくれた。だから、この人は毎日山奥から薪を取ると町に行って売り、お金を貯めておいて、お正月になると牛肉を沢山買って、山奥の爺さんと婆さんのところに担いで来た。「教えてもらったように肉を持って来ました。」「そんなら、もっと山奥に行く道があるから、その道をずんずん通って行くとそこに村があるから、その村に牛肉を持って行って見せなさい。そしたら、その村の人はお金でも、お米でも何でも、あなたが持ちきれないくらいくれると言っても、それは絶対受け取らないで、粉を挽(ひ)く臼と交換しなさい。その臼を持って来たら、臼の使い方を教えてやる。」と言ったから、この男はもっと山奥の村に牛肉を持って行った。その村の人は牛肉(うしにく)がとても好きで、何を売っても牛肉を食べたいと思っていたから、その男の人が牛の肉を持って行って、「お金では絶対に売らない。臼となら交換する。」と言うと、部落民はどうするかと相談した。すると、すぐに、「ああ、この臼を出したら大変だ。」と反対する人もいたが、半分以上の人は、「この臼は使い道が分からないから臼と交換して肉を食べよう。」と言ったので、臼と牛の肉を交換してくれた。男は、その臼を婆さん爺さん所へ持って来て、「臼を持って来ました。これをどうするのですか。」と言うと、「あんたの欲しいものはね、こんなにする。」と臼を挽きながら、「今日は、おいしいもの食べたい。」と言って臼を挽いたらね、その臼からおいしいご飯も、いろんなおかずもみんなどんどん出てきた。だからおいしい食べ物を年寄りの夫婦も食べ、自分も食べて、「次はなに出ろ。」と欲しい食べ物を言ったら、すぐ臼から出てきた。だからそれも食べていると、「これはこうして使えば、欲しいものが何でも出てくるから、あんたはこれから金持になるよ。」と言って、臼を渡してくれたから、「爺さん婆さんには何が欲しいですか。」と言ったら、「お米を出して行け。」と言ったので、「お米が欲しい。」と言って米を出したら、家いっぱい米が出た。その男は家に帰ると臼を親に見せて、「欲しいものを言ってこの臼を回すと、米でも何でも欲しいものはみんな出て来るから、それを食べて下さい。」と言って親に教えると、親は米もいっぱいに出してご飯を食べた。そうして親を養っていると、旅に出ていた兄さんが帰ってきて弟が宝の臼を持ってきて楽にしていると聞いたから、弟の家に来て見ると弟は、「今はとてものんきにしている。これ以上楽なことはないよ。」と言うから、「あんたは臼を持って来たと言うのは本当か。」と聞くから、弟は、「そうだよ。どんなおいしいものを食べる。」と言って、「おいしいもの。」って臼を挽いたら、おいしいものがたくさん出た。兄さんは、それを食べたらとっても羨ましくなって、「これは、わしに貸せ。」と言った。「いや、これだけは絶対貸さない。」と弟が言うからね、兄さんは、弟のいない時に臼を盗むと舟に乗せて自分の家に持って行く途中で、塩がいちばんおいしいと思ったから、「塩よ、出ろ。」と回したら、塩が舟いっぱい出たから、舟は持ちきれん。ボンボンと舟はそのまま海の中に沈んで臼も沈んで、それから毎日、海の底で塩を出すから、昔の海の水は甘かったけど、今はその臼のせいで世界中の海の潮が辛くなっているという話だ。 |
| 全体の記録時間数 | 8:13 |
| 物語の時間数 | 7:42 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |