北斗七星(共通語)

概要

 昔、大変貧乏者の息子が金持ちの家に奉公していた。その息子の母親は目が悪かったので、息子の炊いたご飯を食べ、いつも息子の帰りを家で待っていた。大変な孝行者の息子は主人の家でもらったご飯は、半分は食べて、半分は木の葉に包んで隠しておいて、夕方仕事がひけると家に持って帰って、それを目の悪い母親に食べさせて、洗濯もし、母親の体を洗ってやっていたれりつくせりの孝行をしていた。ところが大変貧乏なので誰もその息子の嫁に来る人はなかった。その地上の孝行息子を毎晩見ていた天上の北斗七星の長女が、「大変気の毒な息子で、誰もお嫁さんになる人がいないから私が行ってお嫁さんになろう。」と決心してね、ある晩天女がその息子が家に帰って来るときを待って地上に降りきた。その息子は家へ帰ってくる途中で、道の真ん中にすばらしく綺麗な女性が立っていたので、息子は、そんな綺麗な人を見たことがないし、まるで神様のように綺麗な人だから恐くなって、引返して別の道を通って家へ帰ろうとして行くと、またそこにも、その女の人が立っていた。なんべん別の道を行こうとしても、その女の人が立っているから、勇気を出して、その女の側を通り抜けようとすると、その女の人が息子の着物を捕まえて言った。「ちょっと待って下さい。私はあんたのお嫁さんになりにきました。だからどうか私をお嫁さんにして下さい。」と頼んだ。息子は、「私は貧乏で家はみすぼらしいのでお断りします。とてもあなたのような美しい人をお嫁さんにはできません。」と断った。しかし、何度断っても、その北斗七星の長女は、「お嫁さんにして下さい。」と後からついて来て、押しかけ女房になり、二、三年暮らしているうちに、男の赤ちゃんができた。そのころ当時の星占いをしている天文学者がね、星を見ていると、七つ星の一番上の星が消えているので王様に、「七つ星の一番上の姉さんの星がなくなっている。学者たちの研究では、これは必ず地上のどこかに降りてきているから消えているに相違ありません。」と王様に申し上げた。王様は、「それを探してこい。」それでね、学者たちが四方八方に手分けしてその女を探しやっとこれがその天女が住んでいる貧乏な家を見つけた。学者は、天女に、「二、三日のうちに王様の家に連れていくから用意をしておきなさい。」と言った。天女はそれを聞くと、羽衣をちゃんとお弼の中にしまって、夫には隠しておいたから、夜になるとお弼の中から、その羽衣を出して着ると、蝋燭の明かりで子供の顔をみながら、「これで別れるんだ。仕方がない。」と言って天へ舞い上がって行った。だけど、天の口が開くところで上がると、子供のことを思い出して、「どうしても子供を残して天国へ行くことはできない。」と、再びまだ夜が明けないうちに降りてきて息子を抱きかかえて天上にあがった。それで、「私はいったん結婚して子供までできて体が汚れたから、七つ星の一番上の長女としてみんなを指導する資格はない。」と言って、妹を上の方にあげて位置を入れ替わってもらい、この長女は二番目の星になった。だから、今も北斗七星の第二番目の星の傍には、小っちゃな赤ん坊の星がかすかに見えている。
①北斗七星女房‥‥本土及び沖縄本島の「天人女房」は宮古では、スバルの中の一人が地上に下る話になり、八重山諸島では、北斗七星の長女が孝行息子の妻になって、その息子を助けた後、昇天する話が伝えられている。こうした星が人間の妻になる話型は、中国の南部にも伝えられているので、中国南部との交流から先島に伝えられたものと思われる。ただし、この話型に類似する星と人間の婚姻の話は南米に居住する先住民も伝承していることから、極めて古くから人類が伝えていた可能性がある。②これで別れるんだ‥‥他界からこの世を訪れて貧乏者と結婚していた女を身分の高い者がその女を発見して連れ去ろうとするモチーフは、「絵姿女房」と共通であり、その複合話型と思われる。

再生時間:7:40

民話詳細DATA

レコード番号 47O200536
CD番号 47O20C031
決定題名 北斗七星(共通語)
話者がつけた題名
話者名 根本精能
話者名かな ねもとせいのう
生年月日 19020725
性別
出身地 沖縄県八重山郡竹富町字竹富
記録日 19750811
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 竹富町字竹富T71A1
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 民俗
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料
キーワード 孝行者,長女,羽衣
梗概(こうがい)  昔、大変貧乏者の息子が金持ちの家に奉公していた。その息子の母親は目が悪かったので、息子の炊いたご飯を食べ、いつも息子の帰りを家で待っていた。大変な孝行者の息子は主人の家でもらったご飯は、半分は食べて、半分は木の葉に包んで隠しておいて、夕方仕事がひけると家に持って帰って、それを目の悪い母親に食べさせて、洗濯もし、母親の体を洗ってやっていたれりつくせりの孝行をしていた。ところが大変貧乏なので誰もその息子の嫁に来る人はなかった。その地上の孝行息子を毎晩見ていた天上の北斗七星の長女が、「大変気の毒な息子で、誰もお嫁さんになる人がいないから私が行ってお嫁さんになろう。」と決心してね、ある晩天女がその息子が家に帰って来るときを待って地上に降りきた。その息子は家へ帰ってくる途中で、道の真ん中にすばらしく綺麗な女性が立っていたので、息子は、そんな綺麗な人を見たことがないし、まるで神様のように綺麗な人だから恐くなって、引返して別の道を通って家へ帰ろうとして行くと、またそこにも、その女の人が立っていた。なんべん別の道を行こうとしても、その女の人が立っているから、勇気を出して、その女の側を通り抜けようとすると、その女の人が息子の着物を捕まえて言った。「ちょっと待って下さい。私はあんたのお嫁さんになりにきました。だからどうか私をお嫁さんにして下さい。」と頼んだ。息子は、「私は貧乏で家はみすぼらしいのでお断りします。とてもあなたのような美しい人をお嫁さんにはできません。」と断った。しかし、何度断っても、その北斗七星の長女は、「お嫁さんにして下さい。」と後からついて来て、押しかけ女房になり、二、三年暮らしているうちに、男の赤ちゃんができた。そのころ当時の星占いをしている天文学者がね、星を見ていると、七つ星の一番上の星が消えているので王様に、「七つ星の一番上の姉さんの星がなくなっている。学者たちの研究では、これは必ず地上のどこかに降りてきているから消えているに相違ありません。」と王様に申し上げた。王様は、「それを探してこい。」それでね、学者たちが四方八方に手分けしてその女を探しやっとこれがその天女が住んでいる貧乏な家を見つけた。学者は、天女に、「二、三日のうちに王様の家に連れていくから用意をしておきなさい。」と言った。天女はそれを聞くと、羽衣をちゃんとお弼の中にしまって、夫には隠しておいたから、夜になるとお弼の中から、その羽衣を出して着ると、蝋燭の明かりで子供の顔をみながら、「これで別れるんだ。仕方がない。」と言って天へ舞い上がって行った。だけど、天の口が開くところで上がると、子供のことを思い出して、「どうしても子供を残して天国へ行くことはできない。」と、再びまだ夜が明けないうちに降りてきて息子を抱きかかえて天上にあがった。それで、「私はいったん結婚して子供までできて体が汚れたから、七つ星の一番上の長女としてみんなを指導する資格はない。」と言って、妹を上の方にあげて位置を入れ替わってもらい、この長女は二番目の星になった。だから、今も北斗七星の第二番目の星の傍には、小っちゃな赤ん坊の星がかすかに見えている。 ①北斗七星女房‥‥本土及び沖縄本島の「天人女房」は宮古では、スバルの中の一人が地上に下る話になり、八重山諸島では、北斗七星の長女が孝行息子の妻になって、その息子を助けた後、昇天する話が伝えられている。こうした星が人間の妻になる話型は、中国の南部にも伝えられているので、中国南部との交流から先島に伝えられたものと思われる。ただし、この話型に類似する星と人間の婚姻の話は南米に居住する先住民も伝承していることから、極めて古くから人類が伝えていた可能性がある。②これで別れるんだ‥‥他界からこの世を訪れて貧乏者と結婚していた女を身分の高い者がその女を発見して連れ去ろうとするモチーフは、「絵姿女房」と共通であり、その複合話型と思われる。
全体の記録時間数 9:12
物語の時間数 7:40
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP