またもう一つは、もう奥さんが不倫をはたらく話があるんです。昔、役人が二人で、山原(ヤンバル)からずーともう国勢調査をすることになって、先に決まった前川という人の方は、前から人の奥さんと不倫働いておって、その奥さんのご夫をいつかは殺してやろうと思っていたから、その夫の家に行って、「今度の国勢調査には、一緒に行きましょう。」って言って誘ったら、この誘われた人にはね、先妻に、男の子と女の子がいるんですよ。それで、誘いに来たこの前川という友達と自分の奥さんとちょっとおかしいと思って
いたけど、「じゃあ、一緒に行きましょう。」っちゅうことになったけど、そのお父さんがね、妻が不倫はたらいているとしょちゅって感じてるから、旅に出るときに、二人の子供のお母さんのお墓の後ろの方に財産全部を入れた金庫を隠して、そっと二人の子供を呼んでね、「金庫は、お墓の後ろに埋めてあるからいざというときにはそれを取りなさいね。兄弟仲良くするんですよ。」ってお父さん言って、それで、この男の子と女の子は、「はい。」と言っているんですよ。それで、このお父さんは前川という役人と一緒に旅に出るわけ。また不倫をしていた前川は、二人の子供の継母にこっそり会って、「あんたの夫は、旅に途中で殺すから、この子供たちを亡き者にすれば、あんたと一緒になれる。」ということで、旅に出て行ったから、継母は、夫が国勢調査に回っている間にこの二人の継子をとってもいじめるの。もう最初は人を雇ってこの女の子と男の子をいじめる。この子達のお父さんはずうっと国勢調査で回ってるでしょ。
で、旅に出た二人は、国勢調査で十日ぐらいずうっと沖縄を全部回っている。その間にこの前川という男は、お父さんを山原(やんばる)の山の中で殺そうとして、薬まいてお父さんの目を見えないようにしておいて、叩いて、「お前はまだ分からんか。お前の奥さんは自分と一緒だよ。」ってもう言ってしまう。そのように言ってしまったらね、お父さんもね、「実は自分も薄々感じ取ってた。やっぱしそうだったか。」と言ったら、「だから、お前のお家ではもうね、この子供二人はお前の妻がちゃんとね、始末するようにしてあるから、お前もうこっちで死ね。あんたたちがいるとおれ達は、一緒になれない。」言いながら戦うわけさね。
お父さんは、「そんなことは、神様は許さよう。」と言って戦いますが、もう目が見えないから、お父さんは、叩かれて谷底に落とされて、もう死ぬところにね、きこりが猪取って担いで来て、そこに人が倒れているから、この人が助けて自分家に連れて行って看病してね、やっとのことで、お父さんの命を取り留めたが、そのときからお父さんは、目が見えなくなって、ずっとこのきこりと一緒に住んでおった。「もうお家に帰らんといかん。」と言うけど、目が見えないから歩けない。それで、こっちではこの奥さんが財産を自分のものにしようと、金庫を捜したらないから、この継子の二人をね、三吉という人を雇ってよ、引っ張らして叩いて、「その財産が入ったこの金庫がね、どこにあるか言いなさい。これどこにあるか、どこにあるか。」と一生懸命いじめて言ってるけど、その間にね、隙を見て、この男の子と女の子は、自分のお母さんのお墓のところに走って行って、墓の後ろを掘り起こして、昔の手提げ金庫を取ってね、それを持ってからもう走って逃げて、逃げていたら、すぐまた継お母さんに見つかったから、走ってって桜の木の下に行って、木の枝を折って金庫を隠していたら、また追われていったら、その後でね、郵便配達が桜の木の所に来て、「このいたずら子供が桜の枝みんな折ってない。」っちゅうって言っから、桜の木の枝を折ってある下を見たらそこに金庫があった。「誰がこんなところに金庫を置いたか。これは警察に出さんといかん。」と、金庫を警察に持って行った後に、この継母も感ずいて桜の木の所に来たんだが、もうそのときは、郵便配達人が取って行ってるもんだから、金庫はもう警察に渡ってないんですよね。
そうしている間に、また山の中で命拾いしたお父さんは、「目は見えなくても、自分の家に帰ろう。」と家に帰って来たら、その時までには前川という男と継母が、二人の子供をもう物言わさんように唖になしてしまうんですよ。そしたら、このお父さんはまた盲にされて、何も見えないようになっているし、二人の子供はものの言えない唖になっていて、盲にされているお父さんに会ったから、唖になった子供たちはお父さんにすがりついて、「もう自分のお父さんだ。お父さんだ。お父さんだ。」って言おうとするんですけどよ、唖になっているから言葉が出て来ない。このお父さんはだから、二人の子供よりすがってるけど、どうしてなのか分からない。だから、言葉は言えないし、「どうするどうする。」って、もう物がいえないから、一生懸命地面に字を書いて、「これは私のお父さんです。」って、書いてるけど、連れて歩く三吉さんはもう字が読めない。それで、三吉さんは、「字読める人は盲、書いてるのは唖だ。」と言って困ってるところに、郵便配達がまたお家の近くを通ったから、「郵便屋さん、郵便屋さん、こっちの子供が唖になって字を
書いている、字を読んで下さい。」と頼むと、郵便屋さんは、「これは私のお父さんです。」とか書いてあるから、「この子供はあんたの子供さんだよ。」って、この三吉さんに言ったら、お父さんは、そこにいるのが、自分の子供だと分かったから、その子供によりすがって泣いて、「前川という男と私の妻は、こんなに悪い意地を働いて、お前なんかを唖にしてしまって、自分を盲にしてしまったんか。」って言って、「そんなら、神様のところに行ってお願いしよう。」と言って、神様の所に行って、お祈りしたらお父さんの目は開いて、子供たちは口がきけるようになった。そこへ警察が来て、「この金庫あんたなんかのでしょ。」って言って財産も戻ったし、この前川という男とこのお母さんとは、怒られてどこかへ逃げたらしい。
・国勢調査‥‥国の人口およびこれに関する諸種の事項を全国いっせいに調査すること。・やんばる(山原)‥‥沖縄本島北部、国頭郡の俗称。俗に島尻を下方(しもかた)、中頭を田舎(いなか)と呼ぶのにたいして国頭を山原(やんばる)という。
| レコード番号 | 47O200327 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C019 |
| 決定題名 | ものをいえなくされた継子(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 細原千代 |
| 話者名かな | ほそはらちよ |
| 生年月日 | 19200124 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町字竹富 |
| 記録日 | 19950910 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字竹富T26A13 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 沖国大国文学科平成8度卒業論文 竹富島の民話 p81 |
| キーワード | 墓,金庫,目, |
| 梗概(こうがい) | またもう一つは、もう奥さんが不倫をはたらく話があるんです。昔、役人が二人で、山原(ヤンバル)からずーともう国勢調査をすることになって、先に決まった前川という人の方は、前から人の奥さんと不倫働いておって、その奥さんのご夫をいつかは殺してやろうと思っていたから、その夫の家に行って、「今度の国勢調査には、一緒に行きましょう。」って言って誘ったら、この誘われた人にはね、先妻に、男の子と女の子がいるんですよ。それで、誘いに来たこの前川という友達と自分の奥さんとちょっとおかしいと思って いたけど、「じゃあ、一緒に行きましょう。」っちゅうことになったけど、そのお父さんがね、妻が不倫はたらいているとしょちゅって感じてるから、旅に出るときに、二人の子供のお母さんのお墓の後ろの方に財産全部を入れた金庫を隠して、そっと二人の子供を呼んでね、「金庫は、お墓の後ろに埋めてあるからいざというときにはそれを取りなさいね。兄弟仲良くするんですよ。」ってお父さん言って、それで、この男の子と女の子は、「はい。」と言っているんですよ。それで、このお父さんは前川という役人と一緒に旅に出るわけ。また不倫をしていた前川は、二人の子供の継母にこっそり会って、「あんたの夫は、旅に途中で殺すから、この子供たちを亡き者にすれば、あんたと一緒になれる。」ということで、旅に出て行ったから、継母は、夫が国勢調査に回っている間にこの二人の継子をとってもいじめるの。もう最初は人を雇ってこの女の子と男の子をいじめる。この子達のお父さんはずうっと国勢調査で回ってるでしょ。 で、旅に出た二人は、国勢調査で十日ぐらいずうっと沖縄を全部回っている。その間にこの前川という男は、お父さんを山原(やんばる)の山の中で殺そうとして、薬まいてお父さんの目を見えないようにしておいて、叩いて、「お前はまだ分からんか。お前の奥さんは自分と一緒だよ。」ってもう言ってしまう。そのように言ってしまったらね、お父さんもね、「実は自分も薄々感じ取ってた。やっぱしそうだったか。」と言ったら、「だから、お前のお家ではもうね、この子供二人はお前の妻がちゃんとね、始末するようにしてあるから、お前もうこっちで死ね。あんたたちがいるとおれ達は、一緒になれない。」言いながら戦うわけさね。 お父さんは、「そんなことは、神様は許さよう。」と言って戦いますが、もう目が見えないから、お父さんは、叩かれて谷底に落とされて、もう死ぬところにね、きこりが猪取って担いで来て、そこに人が倒れているから、この人が助けて自分家に連れて行って看病してね、やっとのことで、お父さんの命を取り留めたが、そのときからお父さんは、目が見えなくなって、ずっとこのきこりと一緒に住んでおった。「もうお家に帰らんといかん。」と言うけど、目が見えないから歩けない。それで、こっちではこの奥さんが財産を自分のものにしようと、金庫を捜したらないから、この継子の二人をね、三吉という人を雇ってよ、引っ張らして叩いて、「その財産が入ったこの金庫がね、どこにあるか言いなさい。これどこにあるか、どこにあるか。」と一生懸命いじめて言ってるけど、その間にね、隙を見て、この男の子と女の子は、自分のお母さんのお墓のところに走って行って、墓の後ろを掘り起こして、昔の手提げ金庫を取ってね、それを持ってからもう走って逃げて、逃げていたら、すぐまた継お母さんに見つかったから、走ってって桜の木の下に行って、木の枝を折って金庫を隠していたら、また追われていったら、その後でね、郵便配達が桜の木の所に来て、「このいたずら子供が桜の枝みんな折ってない。」っちゅうって言っから、桜の木の枝を折ってある下を見たらそこに金庫があった。「誰がこんなところに金庫を置いたか。これは警察に出さんといかん。」と、金庫を警察に持って行った後に、この継母も感ずいて桜の木の所に来たんだが、もうそのときは、郵便配達人が取って行ってるもんだから、金庫はもう警察に渡ってないんですよね。 そうしている間に、また山の中で命拾いしたお父さんは、「目は見えなくても、自分の家に帰ろう。」と家に帰って来たら、その時までには前川という男と継母が、二人の子供をもう物言わさんように唖になしてしまうんですよ。そしたら、このお父さんはまた盲にされて、何も見えないようになっているし、二人の子供はものの言えない唖になっていて、盲にされているお父さんに会ったから、唖になった子供たちはお父さんにすがりついて、「もう自分のお父さんだ。お父さんだ。お父さんだ。」って言おうとするんですけどよ、唖になっているから言葉が出て来ない。このお父さんはだから、二人の子供よりすがってるけど、どうしてなのか分からない。だから、言葉は言えないし、「どうするどうする。」って、もう物がいえないから、一生懸命地面に字を書いて、「これは私のお父さんです。」って、書いてるけど、連れて歩く三吉さんはもう字が読めない。それで、三吉さんは、「字読める人は盲、書いてるのは唖だ。」と言って困ってるところに、郵便配達がまたお家の近くを通ったから、「郵便屋さん、郵便屋さん、こっちの子供が唖になって字を 書いている、字を読んで下さい。」と頼むと、郵便屋さんは、「これは私のお父さんです。」とか書いてあるから、「この子供はあんたの子供さんだよ。」って、この三吉さんに言ったら、お父さんは、そこにいるのが、自分の子供だと分かったから、その子供によりすがって泣いて、「前川という男と私の妻は、こんなに悪い意地を働いて、お前なんかを唖にしてしまって、自分を盲にしてしまったんか。」って言って、「そんなら、神様のところに行ってお願いしよう。」と言って、神様の所に行って、お祈りしたらお父さんの目は開いて、子供たちは口がきけるようになった。そこへ警察が来て、「この金庫あんたなんかのでしょ。」って言って財産も戻ったし、この前川という男とこのお母さんとは、怒られてどこかへ逃げたらしい。 ・国勢調査‥‥国の人口およびこれに関する諸種の事項を全国いっせいに調査すること。・やんばる(山原)‥‥沖縄本島北部、国頭郡の俗称。俗に島尻を下方(しもかた)、中頭を田舎(いなか)と呼ぶのにたいして国頭を山原(やんばる)という。 |
| 全体の記録時間数 | 8:50 |
| 物語の時間数 | 8:10 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |