昔、按司様の隣にお婆さんとお爺さんがおった。お婆さんは山に薪(たきぎ)を取りに行って薪をたくさん取ったが、縛って自分の頭に載せることができないので、薪の側(そば)で泣いていた。そこを按司様が通った。「なぜ泣いておるか、婆さん。」と尋ねたから、「私は薪をたくさん取って、自分一人で頭の上に載せることができないので泣いています。」と言うと、 「ああ、泣くな。私が手伝ってやる。その代わりあなたの孫娘一人を私の嫁にくれ。」と按司様が言うから、婆さん「はい。」と約束をすると、按司様は薪(たきぎ)を婆さんの頭に上げてやった。家に帰りながら、お婆さんは、「貧乏者が按司様の嫁になんて、どうしても行くとは言わないだろう。」と思いながら家に帰ると、長女が来たので、長女に、「今さっき、私が薪をたくさん取って頭に上げられないでいると按司様がいらっしゃったから、頭に上げてもらったらあんたの孫娘一人を嫁にくれって言うので、くれると約束してきたよ。」と言った。長女は、「私は貧乏者だから、按司様の家になんて行かない。」と言から、お婆さんは泣いていた。そこに、次女が来て、「お婆さん、なぜ泣いておるか。」と尋ねたから、「今さっき、私が薪をたくさん取って、頭に上げられないでいると按司様がいらっしゃったから、頭に上げてもらったらあんたの孫娘一人を嫁にくれって言ったから、くれると約束してきたよ。」と言と、次女は、「私が行くから心配しないで。」と言って次女が按司様の奥さんになった。按司の奥さんになった次女は着る着物もいいし、簪(かんざし)も金の簪をさすから、長女はそれを見て非常に羨ましくなって憤慨した。なんとかして自分が按司の妻になれないかと思って、按司の家に行くと、妹に、「今日は天気もいいから、家に帰って婆ちゃん爺ちゃんに会いに行こう。」と言って、次女を按司様の家から自分の家に連れて来て、「お婆ちゃんとお爺ちゃんは、ずうっと下まで井戸を掘っている。あんたはそのままでは、井戸に降りられないから、着物を脱いで降りられるところまで行って、お婆ちゃん爺ちゃんと大声で呼びなさい。」と言うから、妹は着物を脱いで簪も抜いて姉さんに渡した。すると、長女は次女を井戸の底に突き落として殺してしまった。姉は妹の着物を着、簪を刺して、妹の代わり按司の家へ行った。そのとき、按司は旅に行っていたが、帰る途中の舟の中に、どこからかきれいな鳥が来て、面白く鳴いた。按司様は、その鳥を捕まえて、「この鳥はきれいだから、家に持って行って飼おう。」と持って帰り、家で養っていた。するとその鳥は、姉が機織りをしているのを見ると機織(はたお)りをしようとして、麻苧(ぶ ー)を足で掻いていたので、妹に化けた姉の嫁は、「この鳥は悪いから殺して食べよう。」と言ったそうだ。「そうしなさい。」と按司様が言うので、小鳥を殺して肉は食べ、骨は屋敷に埋めておいた。その小鳥の骨を埋めた所から、松の木がすうっと上まで伸び、三年間で大木になった。姉はそれを切って織物の機(はた)を作ったが、この機では少しもきれいな反物ができないから、姉は怒って機を割ると火に燃やした。そのうちに隣から姉の家のお婆ちゃんが火をもらいに来たから、按司様は、「今日は機の薪(まき)の火がたくさんあるから、たくさん持って行きなさい。」と言うので、お婆ちゃんは火とたくさんの薪を貰って家まで持って来るうちに薪は黄金になった。お婆ちゃんは、「ああ、これはとてもいい。」と思って、人にも知らせず箪笥に入れておいた。そうしたところが箪笥の中でチャンチャンチャンと機を織る音がする。「なにかねえ、妙なもんだなあ。」と思って箪笥を開けて見ると、きれいな娘が機をたくさん織っていた。お婆ちゃんは、その箪笥の中で機を織っていた娘を自分の娘のように可愛いがっていた。ある日、その娘が、「お婆ちゃん、今日はねえ、りっぱなおいしいご馳走作るから按司加那志を案内しておいでなさい。」と言うから、「それはいいことですねえ。」と言って、お婆ちゃんは按司様を家に案内して来た。ところが、お米は半分煮て、お汁(つゆ)は何かの葉っぱを取って来て、お汁も何も食えないようにして炊いて、按司様が来ると早速、それをお膳に出した。按司様が、「このご飯はおいしくないねえ。」と言うと、お膳を用意した娘が、「自分の妻が誰か分からない人が、ご飯をおいしいとか、おいしくないとかが分かりますか。」と言ったので、按司様は、「これは妙なもんですねえ。」と思って良く見ると、それは最初に嫁になった次女なので、その次女と連れて家へ帰った。姉は按司様の妻になっておったが、本物の妹が来て、按司様も事情が分かったので、「お前は、自分の妻ではない。」と言って長女を追い出すと、長女は足がたくさん生えた雨垂れ虫になって、這って逃げた。妹はまた按司様の嫁になって幸福に世の中を暮らしたということだ。
①雨垂れ虫‥‥やすでのこと。
| レコード番号 | 47O200117 |
|---|---|
| CD番号 | 47O20C008 |
| 決定題名 | 身代わり花嫁(方言) |
| 話者がつけた題名 | 正直者は勝つ |
| 話者名 | 大山功 |
| 話者名かな | おおさんこう |
| 生年月日 | 18921025 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡竹富町字竹富 |
| 記録日 | 19760804 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 竹富町字竹富T36A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 『竹富島・小浜島の昔話』17 按司の身代わり花嫁 |
| キーワード | 薪,花嫁,長女,次女,井戸,按司,鳥,松,機織り,ごはん,雨垂れ虫 |
| 梗概(こうがい) | 昔、按司様の隣にお婆さんとお爺さんがおった。お婆さんは山に薪(たきぎ)を取りに行って薪をたくさん取ったが、縛って自分の頭に載せることができないので、薪の側(そば)で泣いていた。そこを按司様が通った。「なぜ泣いておるか、婆さん。」と尋ねたから、「私は薪をたくさん取って、自分一人で頭の上に載せることができないので泣いています。」と言うと、 「ああ、泣くな。私が手伝ってやる。その代わりあなたの孫娘一人を私の嫁にくれ。」と按司様が言うから、婆さん「はい。」と約束をすると、按司様は薪(たきぎ)を婆さんの頭に上げてやった。家に帰りながら、お婆さんは、「貧乏者が按司様の嫁になんて、どうしても行くとは言わないだろう。」と思いながら家に帰ると、長女が来たので、長女に、「今さっき、私が薪をたくさん取って頭に上げられないでいると按司様がいらっしゃったから、頭に上げてもらったらあんたの孫娘一人を嫁にくれって言うので、くれると約束してきたよ。」と言った。長女は、「私は貧乏者だから、按司様の家になんて行かない。」と言から、お婆さんは泣いていた。そこに、次女が来て、「お婆さん、なぜ泣いておるか。」と尋ねたから、「今さっき、私が薪をたくさん取って、頭に上げられないでいると按司様がいらっしゃったから、頭に上げてもらったらあんたの孫娘一人を嫁にくれって言ったから、くれると約束してきたよ。」と言と、次女は、「私が行くから心配しないで。」と言って次女が按司様の奥さんになった。按司の奥さんになった次女は着る着物もいいし、簪(かんざし)も金の簪をさすから、長女はそれを見て非常に羨ましくなって憤慨した。なんとかして自分が按司の妻になれないかと思って、按司の家に行くと、妹に、「今日は天気もいいから、家に帰って婆ちゃん爺ちゃんに会いに行こう。」と言って、次女を按司様の家から自分の家に連れて来て、「お婆ちゃんとお爺ちゃんは、ずうっと下まで井戸を掘っている。あんたはそのままでは、井戸に降りられないから、着物を脱いで降りられるところまで行って、お婆ちゃん爺ちゃんと大声で呼びなさい。」と言うから、妹は着物を脱いで簪も抜いて姉さんに渡した。すると、長女は次女を井戸の底に突き落として殺してしまった。姉は妹の着物を着、簪を刺して、妹の代わり按司の家へ行った。そのとき、按司は旅に行っていたが、帰る途中の舟の中に、どこからかきれいな鳥が来て、面白く鳴いた。按司様は、その鳥を捕まえて、「この鳥はきれいだから、家に持って行って飼おう。」と持って帰り、家で養っていた。するとその鳥は、姉が機織りをしているのを見ると機織(はたお)りをしようとして、麻苧(ぶ ー)を足で掻いていたので、妹に化けた姉の嫁は、「この鳥は悪いから殺して食べよう。」と言ったそうだ。「そうしなさい。」と按司様が言うので、小鳥を殺して肉は食べ、骨は屋敷に埋めておいた。その小鳥の骨を埋めた所から、松の木がすうっと上まで伸び、三年間で大木になった。姉はそれを切って織物の機(はた)を作ったが、この機では少しもきれいな反物ができないから、姉は怒って機を割ると火に燃やした。そのうちに隣から姉の家のお婆ちゃんが火をもらいに来たから、按司様は、「今日は機の薪(まき)の火がたくさんあるから、たくさん持って行きなさい。」と言うので、お婆ちゃんは火とたくさんの薪を貰って家まで持って来るうちに薪は黄金になった。お婆ちゃんは、「ああ、これはとてもいい。」と思って、人にも知らせず箪笥に入れておいた。そうしたところが箪笥の中でチャンチャンチャンと機を織る音がする。「なにかねえ、妙なもんだなあ。」と思って箪笥を開けて見ると、きれいな娘が機をたくさん織っていた。お婆ちゃんは、その箪笥の中で機を織っていた娘を自分の娘のように可愛いがっていた。ある日、その娘が、「お婆ちゃん、今日はねえ、りっぱなおいしいご馳走作るから按司加那志を案内しておいでなさい。」と言うから、「それはいいことですねえ。」と言って、お婆ちゃんは按司様を家に案内して来た。ところが、お米は半分煮て、お汁(つゆ)は何かの葉っぱを取って来て、お汁も何も食えないようにして炊いて、按司様が来ると早速、それをお膳に出した。按司様が、「このご飯はおいしくないねえ。」と言うと、お膳を用意した娘が、「自分の妻が誰か分からない人が、ご飯をおいしいとか、おいしくないとかが分かりますか。」と言ったので、按司様は、「これは妙なもんですねえ。」と思って良く見ると、それは最初に嫁になった次女なので、その次女と連れて家へ帰った。姉は按司様の妻になっておったが、本物の妹が来て、按司様も事情が分かったので、「お前は、自分の妻ではない。」と言って長女を追い出すと、長女は足がたくさん生えた雨垂れ虫になって、這って逃げた。妹はまた按司様の嫁になって幸福に世の中を暮らしたということだ。 ①雨垂れ虫‥‥やすでのこと。 |
| 全体の記録時間数 | 7:55 |
| 物語の時間数 | 7:55 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |