運玉義留という人は、昔の沖縄での大変な大泥棒なのですが、何故、大泥棒になったかと言いますと、昔、首里に槍突き儀保という槍術の大変上手な武士が居りまして、義留はそこの下男として働いていましたが、ある時、里主(儀保)に、「私達が精一杯働いて一生懸命勉強したならば、どれくらいまで上がる事ができますか。」と主人に話ますと、主人は、「君達は百姓だから精一杯働いて一生懸命勉強すると、地頭代だね。」と言われましたので、義留は、「それではもう、私は地頭代までしか上がれなければ、大泥棒になって名を残した方が良い。私が大泥棒になったら貴方の黄金の枕を拝借しに来ますがよろしいですか。」と言いますと、「取れるものなら取ってごらん。」とおっしゃいますので、それから運玉森に行き、柴木の枯れ葉を集めて地面に敷きつめ、その上から抜き足差し足で音を立てない様に歩く練習をして泥棒になったそうです。それからあちこちで盗みをして歩きますが、そこは皆、金持ちの家だけに入り、盗んだお金や物品は全部貧乏者に分け与え、十本の指が皆、同じ高さになれば世の中は良くなるという考えだったそうです。そうこうしているうちに、油喰坊主と友達になりました。何故油喰坊主という名が付いているかと言いますと、運玉義留に、「弟子にしてくれ。」と言いますと、運玉が、「それでは君はお金を持たないでこの徳利いっぱいの油を買っておいで。」と言いつけて、一升徳利を渡しますと、もう一つの徳利を持っていって道の側に隠しておき、油を買いにいく徳利の中に綿を入れておいて、油を五合計らしてから代金を問いまして、「高いから買わない。」といって戻させてから店を出て、綿から油を搾って、隠してある徳利に入れておき、今度はまた別の店でも同じ様にして油を集めて、後、徳利が満杯になったのでそれを持っていき、運玉義留の弟子になり、油喰坊主と名付けられたそうです。運玉義留は身軽で知恵もありますが、油喰坊主は、知恵は運玉義留よりも上ですが身軽さがなかったそうです。弟子になったので運玉義留が兄貴でした。ある時二人である家に入って、戸棚を開けて中に入り、取り出し役は油喰が、運び役は運玉がやり、だいぶ取ったので運玉は急に戸を閉めて自分は逃げだしたのです。すると物音に気づいて主人が起きたので、油喰は戸棚の中で鼠の真似をしてガサガサと何度もやっていると、家の主人は戸棚の中に鼠が入ったと思い、ゆっくりゆっくり戸を開け、出てくる鼠を捕まえるつもりでしゃがんで待っていますと、急に戸を引き開けて大声で、「わー。」と叫ぶと同時に飛び出したのです。すると家の主人は度肝を抜かれて仰天し、尻餅をついて後ろに引っ繰り返っり、その間に油喰は逃げだして兄貴の所に行きました。義留は美しい反物を一反隠して残りを二人で山分けしようとしましてた。すると油喰が、「もう一反あった。」と口論になり、「それなら行って聞いてこよう。」と二人で盗んだ家の門の所で、「幾つだった。」「いや幾つだった。」と、座って口論していますと、ここの家の主人が出てきて、「君達は何を口論しているのか。私達は昨夜着物を何枚、反物を何反盗まれたよ。」と話したので、二人は、「ああそうでしたか。」と言ってその場を去ったのだが、少し行くと、「どうだどうだ。」と油喰が言ったそうです。つまり油喰が言っている事が当たっているので、隠してあった反物を出して二人で分けたそうです。そのあと雨が降ってきたので、二人は仕事に行けなくなり、呆然と座っていると兄貴(義留)が、「私の姉は今の御主加那志前の后だが、私はお金が無い時は常に借りようと思って行こうとするが、君は私が何処まで行ったと思うか。」と油喰に言いますと、油喰は、「嘘物語りは門までも届かんと言うから、兄貴は門かでは行けなかった。」と話したそうです。それから、賭をしているからと、儀保里主の方に連絡して、「何月何日に約束した黄金の枕を拝借しに参ります。」と知らせたそうです。そしてその日になると、その家では下男達を集めて、一人は火吹筒を持たせて火お越し役。一人は竹筒を持たせて法螺吹き役。一人は鍋を持たせて鐘打ち役にして番をさせたのです。夜中になると、月は無く真っ暗闇です。それで二人で行って、油喰は雨傘を開いて軒下に立ち、義留は屋根に登って大豆を流して雨垂れの所を行きつ戻りつさると、家の中の人達は、雨が降っていると思い、「雨が降っても私達が番をしているので、入ろうとしても奴等は入れないのだな。」と話しあっているのですが、次第に眠くなり、みんなが寝入ってしまうと、中に入ってきて、火吹人には竹筒を、竹法螺の人には火吹筒を取り替えて持たせ、鍋持人にはザルを持たせ、みんなの尻の下には池の泥を置いておき、手拭いに水を掛けて軽く搾り、里主の側に行き鼠の真似をしてチュウチュウと声を出し、耳に上から二、三滴水を落とすと里主は、 「この悪い小鼠達は。」と頭を上げ、耳に入った水出す為に反対向きになると、今まで胴に抱いて暖めてあった枕と黄金の枕とを取り替えて、後ろの方に退いたのですが、里主はすぐにわかり、枕元に置いてあった槍を取って、中柱に義留の腿を突き止めると、義留は、「もう少しでしたな。」と言い、「これでもか。」と言って槍を抜いたので、着物で槍の先を掴んで血を拭いとり、逃げていきました。番をしていた人達は、驚いて起きていましたが、尻に何か引っついているので、「昨夜は漏らしてしまったなあ。」と思って、みんな羞恥心と嫌気で渋っていましたが、それでも起きて、各人に分担の仕事をしようとすると、火起役の人が吹くと竹筒なので灰を吹き上げ、竹法螺役の人は火吹筒なので音は出ずにフウフウするだけ、鐘打役はザルを打っているのでサラサラするだけで鐘は鳴りません。みんなが目を回している間に飛び出して逃げたそうです。それから公儀(首里城)で二人を捕まえる会議が始まると儀保里主は、「運玉は知恵と武で捕まえる事はできない。情けで捕まえる事ができる。」と話したそうです。それから、あちらこちらで追い回されてみんなに囲まれてしまったが、蓮池の近くで見失ってしまったそうです。すると儀保里主はが、「私の目に止まれば、この蓮の葉の様に刺すのだが。」と言いながら一枚の蓮の葉を槍で突き刺すと、その葉の下に、運玉は竹筒をくわえて潜んでおり、その腿に槍の先が突き刺したのです。槍の先に泥を塗りましたが血が流れだし、みんなに知られると反対側に泳いで逃げていったのですが、みんなに追われて最後は降伏原でみんなに囲まれてここで降伏しました。それでそこは降伏原と名付けられたそうです。それで兄貴が捕らえられたので油喰も出てきて、「私は何処までも兄貴と一緒である。」と言って、一緒に捕らえられたという話。その時、儀保里主は、「君達二人が武士であったならば、十本の指を同じ高さにする事ができたかもしれないのになあ。」と、可哀相に思い、惜しんでいられたという話である。運玉義留の話はもっとたくさんあるが、残りは他の人にお願いし、私の話は終わり。
| レコード番号 | 47O419003 |
|---|---|
| CD番号 | 47O41C464 |
| 決定題名 | 運玉義留(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 阿波根昌栄 |
| 話者名かな | あはごんしょうえい |
| 生年月日 | 19210309 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 北谷町 |
| 記録日 | 19960814 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄国際大学口承研 |
| 元テープ番号 | 北谷町T17A03 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 運玉義留,大泥棒,首里に槍突き儀保,地頭代,枯れ葉,油喰坊主と友達,戸棚の中で鼠の真似,儀保里主,火吹筒,竹筒,鍋,雨 |
| 梗概(こうがい) | 運玉義留という人は、昔の沖縄での大変な大泥棒なのですが、何故、大泥棒になったかと言いますと、昔、首里に槍突き儀保という槍術の大変上手な武士が居りまして、義留はそこの下男として働いていましたが、ある時、里主(儀保)に、「私達が精一杯働いて一生懸命勉強したならば、どれくらいまで上がる事ができますか。」と主人に話ますと、主人は、「君達は百姓だから精一杯働いて一生懸命勉強すると、地頭代だね。」と言われましたので、義留は、「それではもう、私は地頭代までしか上がれなければ、大泥棒になって名を残した方が良い。私が大泥棒になったら貴方の黄金の枕を拝借しに来ますがよろしいですか。」と言いますと、「取れるものなら取ってごらん。」とおっしゃいますので、それから運玉森に行き、柴木の枯れ葉を集めて地面に敷きつめ、その上から抜き足差し足で音を立てない様に歩く練習をして泥棒になったそうです。それからあちこちで盗みをして歩きますが、そこは皆、金持ちの家だけに入り、盗んだお金や物品は全部貧乏者に分け与え、十本の指が皆、同じ高さになれば世の中は良くなるという考えだったそうです。そうこうしているうちに、油喰坊主と友達になりました。何故油喰坊主という名が付いているかと言いますと、運玉義留に、「弟子にしてくれ。」と言いますと、運玉が、「それでは君はお金を持たないでこの徳利いっぱいの油を買っておいで。」と言いつけて、一升徳利を渡しますと、もう一つの徳利を持っていって道の側に隠しておき、油を買いにいく徳利の中に綿を入れておいて、油を五合計らしてから代金を問いまして、「高いから買わない。」といって戻させてから店を出て、綿から油を搾って、隠してある徳利に入れておき、今度はまた別の店でも同じ様にして油を集めて、後、徳利が満杯になったのでそれを持っていき、運玉義留の弟子になり、油喰坊主と名付けられたそうです。運玉義留は身軽で知恵もありますが、油喰坊主は、知恵は運玉義留よりも上ですが身軽さがなかったそうです。弟子になったので運玉義留が兄貴でした。ある時二人である家に入って、戸棚を開けて中に入り、取り出し役は油喰が、運び役は運玉がやり、だいぶ取ったので運玉は急に戸を閉めて自分は逃げだしたのです。すると物音に気づいて主人が起きたので、油喰は戸棚の中で鼠の真似をしてガサガサと何度もやっていると、家の主人は戸棚の中に鼠が入ったと思い、ゆっくりゆっくり戸を開け、出てくる鼠を捕まえるつもりでしゃがんで待っていますと、急に戸を引き開けて大声で、「わー。」と叫ぶと同時に飛び出したのです。すると家の主人は度肝を抜かれて仰天し、尻餅をついて後ろに引っ繰り返っり、その間に油喰は逃げだして兄貴の所に行きました。義留は美しい反物を一反隠して残りを二人で山分けしようとしましてた。すると油喰が、「もう一反あった。」と口論になり、「それなら行って聞いてこよう。」と二人で盗んだ家の門の所で、「幾つだった。」「いや幾つだった。」と、座って口論していますと、ここの家の主人が出てきて、「君達は何を口論しているのか。私達は昨夜着物を何枚、反物を何反盗まれたよ。」と話したので、二人は、「ああそうでしたか。」と言ってその場を去ったのだが、少し行くと、「どうだどうだ。」と油喰が言ったそうです。つまり油喰が言っている事が当たっているので、隠してあった反物を出して二人で分けたそうです。そのあと雨が降ってきたので、二人は仕事に行けなくなり、呆然と座っていると兄貴(義留)が、「私の姉は今の御主加那志前の后だが、私はお金が無い時は常に借りようと思って行こうとするが、君は私が何処まで行ったと思うか。」と油喰に言いますと、油喰は、「嘘物語りは門までも届かんと言うから、兄貴は門かでは行けなかった。」と話したそうです。それから、賭をしているからと、儀保里主の方に連絡して、「何月何日に約束した黄金の枕を拝借しに参ります。」と知らせたそうです。そしてその日になると、その家では下男達を集めて、一人は火吹筒を持たせて火お越し役。一人は竹筒を持たせて法螺吹き役。一人は鍋を持たせて鐘打ち役にして番をさせたのです。夜中になると、月は無く真っ暗闇です。それで二人で行って、油喰は雨傘を開いて軒下に立ち、義留は屋根に登って大豆を流して雨垂れの所を行きつ戻りつさると、家の中の人達は、雨が降っていると思い、「雨が降っても私達が番をしているので、入ろうとしても奴等は入れないのだな。」と話しあっているのですが、次第に眠くなり、みんなが寝入ってしまうと、中に入ってきて、火吹人には竹筒を、竹法螺の人には火吹筒を取り替えて持たせ、鍋持人にはザルを持たせ、みんなの尻の下には池の泥を置いておき、手拭いに水を掛けて軽く搾り、里主の側に行き鼠の真似をしてチュウチュウと声を出し、耳に上から二、三滴水を落とすと里主は、 「この悪い小鼠達は。」と頭を上げ、耳に入った水出す為に反対向きになると、今まで胴に抱いて暖めてあった枕と黄金の枕とを取り替えて、後ろの方に退いたのですが、里主はすぐにわかり、枕元に置いてあった槍を取って、中柱に義留の腿を突き止めると、義留は、「もう少しでしたな。」と言い、「これでもか。」と言って槍を抜いたので、着物で槍の先を掴んで血を拭いとり、逃げていきました。番をしていた人達は、驚いて起きていましたが、尻に何か引っついているので、「昨夜は漏らしてしまったなあ。」と思って、みんな羞恥心と嫌気で渋っていましたが、それでも起きて、各人に分担の仕事をしようとすると、火起役の人が吹くと竹筒なので灰を吹き上げ、竹法螺役の人は火吹筒なので音は出ずにフウフウするだけ、鐘打役はザルを打っているのでサラサラするだけで鐘は鳴りません。みんなが目を回している間に飛び出して逃げたそうです。それから公儀(首里城)で二人を捕まえる会議が始まると儀保里主は、「運玉は知恵と武で捕まえる事はできない。情けで捕まえる事ができる。」と話したそうです。それから、あちらこちらで追い回されてみんなに囲まれてしまったが、蓮池の近くで見失ってしまったそうです。すると儀保里主はが、「私の目に止まれば、この蓮の葉の様に刺すのだが。」と言いながら一枚の蓮の葉を槍で突き刺すと、その葉の下に、運玉は竹筒をくわえて潜んでおり、その腿に槍の先が突き刺したのです。槍の先に泥を塗りましたが血が流れだし、みんなに知られると反対側に泳いで逃げていったのですが、みんなに追われて最後は降伏原でみんなに囲まれてここで降伏しました。それでそこは降伏原と名付けられたそうです。それで兄貴が捕らえられたので油喰も出てきて、「私は何処までも兄貴と一緒である。」と言って、一緒に捕らえられたという話。その時、儀保里主は、「君達二人が武士であったならば、十本の指を同じ高さにする事ができたかもしれないのになあ。」と、可哀相に思い、惜しんでいられたという話である。運玉義留の話はもっとたくさんあるが、残りは他の人にお願いし、私の話は終わり。 |
| 全体の記録時間数 | 3:35 |
| 物語の時間数 | 3:23 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |