〔方言原話〕 くれえー、昔(んかし)ぬ北谷屋良村んかい、仲ぬわっさる兄弟(ちょーでぇー)ぬ、仲のーいさる話(はな)しい。昔(んかし)屋良村んかい、兄弟二人(ちょーでぇーたい)うしが、二人(たい)なむん、仲ぬわっさぬ、うぬ弟(うっとぉー)自分(どぅー)ぬ兄(しーじゃ)やかにん、兄弟(ちょでぇ)やか以上(うぇ)に交際(ふぃら)とぉーる友(どぅし)ぬうしが、兄(しーじゃ)とぉー仲ぬわっさぬ、ぬーてぃーちん、一緒(まじゅー)のーさんたんでぃ。あんし、うぬ弟(うっとぅ)ぬ畑(はろー)、陥没池(むるち)んち、だてぇーんそうる池(くむい)ぬあしが、うまぬ側(すば)んかいあてぃ、じこーいー畑(はる)なやーに、土地(ぢー)やくぇーとぉーくとぅ、ちゅくいむじゅくいゆーでぃきたんでぃ。だーうれー、兄(しーじゃ)とぉー仲(なかー)わっさしが、畑仕事(はるしぐとぉー)はまいくとぅ、作物(ちゅくいむのー)じこーゆかいたんでぃ。あんし、ある年(とぅし)、うぬ畑(はる)んかい、トォーナチンうぃーてぃさくとぅ、トォーナチぬんじこーゆかてぃ、穂(ふー)んたいかんてぃそうるむんぬ、なーやがてぃとぅらりいっさーんでぃうむたくとぅ、片側(かたはら)から、むるうり盗まーがんぢてぃ、なーうぬトォーナチンぬ首びけーちんうーてぃむっちはちさくとぅ、うぬ弟(うっとぉー)、「とおーなーくれえーかんそーてぇーならん。なーくれえー、今晩(ちゅー)ん暗闇(くらしん)やくとぅ、ゆうーさんあれー今晩(ちゅー)んんぢてぃちゅーるはじやくとぅ。」んでぃうむやーなかい、六尺棒(るくさんぼー)むっち、土手(あぶし)ぬ後(くし)んかいくゎっくぃてぃそういねえー、いんねーすんねえー片側(かたはら)から、真っ暗(まっくーる)そうる盗人(ぬすどぅ)ぬんぢやーなかい、しぐトォーナチンぬ首、てぃーちなーてぃーちなーちんうーてぃんぢゃくとぅ、「くぬひゃーるやてぇーっさみ。」んでぃ言ゃーなかい、肩から頭(ちぶる)から、ちゃーぱくないすぐたくとぅ、だーうぬ者(むのー)、後(くし)からうまーじふらーじすぐいたっくゎさっくゎさっとぉーくとぅ、ちゅらーく、うまうてぃ死亡(しなー)なかい、なーんじゅかんなてぃねえーらんさくとぅ、うぬ弟(うっとぉー)たましぬぎやーなかい、「くぬ野郎(ひゃー)やそーいりりわるやるんちるすぐたしが、なーくれえー死亡(けーしじ)ねえーらん、一大事(いちでぇーじ)なとぉーん。」でぃうむやーなかい、夜道(ゆるぬみち)はーえーし友(どぅし)ぬ家(やー)んかいんぢゃーなかい、「いぇー私(わん)ねえーなー今晩(ちゅー)や、人(ちゅ)すぐいくるちねえーらん。私達(わったー)畑(はる)ぬトォーナチン盗まぎいし後(くし)から、みっくゎたっくゎすぐいたっくゎちゃくとぅ、なー死亡(しなー)なかい、んぢゅかんなとぉーくとぅ、でぃー二人(たい)さーなかい、人(ちゅ)ぬ見だんまーどぅかたぢきてぃ、まーがなんかい一緒(まじゅーん)しうくてぃとぅらさんなー。」んでぃ言ちゃくとぅ、うぬ友(どぅせー)、「いーいーいー、うりびけーやなー私(わん)ねえー君(やー)とぉーならんさ。あんせーやー、うりんでぇー人(ちゅ)んかいわからりーねえー私達二人(わったーたい)さーに、共謀(むんぐん)さーに、くるちかたぢきてぇーんでぃる事(くとぅ)んかいないくとぅ、私(わん)にん一緒(まじゅう)ん咎(とぅが)受きらんあれえーならんないくとぅ、とぉーうれえーならんさ。」んでぃ言ちゃくとぅ、うぬ弟(うっとぉー)、「とぉーなーくれえー、ぢゃーふぇーなとぉーん。なーかんなたる以上(うぃー)やー、うぬまま人(ちゅ)くるち、はんなぎとぉーちゅるわきにんいかんくとぅ。」んでぃうむやーに、日頃(ふぃじー)や仲ぬわっさる兄(しーじゃ)ぬ家(やー)んかい行ちゃーなかい、「じちぇーなー、くんぐとぅくんぐとぅし人(ちゅ)くるちねえーらんくとぅ、なー一緒(まじゅん)しかたじきてぃ、うくてぃとぅらし。」んでぃ言ちゃくとぅ、兄(しーじゃー)、「やみ。なーあんせえー君(やー)が人(ちゅ)くるち、いかな盗人(ぬすどぅ)やてぃん人(ちゅ)るやくとぅ、あぬー一緒(まじゅーん)しかたじききらわるないさ。」んち、二人(たい)なむんはーえーなてぃ行ちゃーに、うぬとぉーりてぃんじゅかんなとぉー人(ちゅ)んーちゃくとぅ、わーなー、人(ちょー)あらん大鰻(うふんなじ)なてぃ、「とぉーくれえー、人(ちゅ)あらん、大鰻(うふんなじ)ぬる、トォーチンぬ穂(ふー)や、むる、くりがるくゎてぇーっさみ。」んち、うりから、うぬ大鰻(うふんなじ)二人(たい)しかたみてぃちゃーに、家(やー)んじ煮やーなかい、翌日(なーちゃ)なたくとぅ、ちゅけーとぅねーぬ人達(ちゅぬちゃー)皆(んな)あちみてぃ、「とぉー陥没池(むるち)からんじとぉーる大鰻(うふんなぜー)くるちぇーくとぅ、うり皆(んな)しかみいるんせえー、なー今(なま)から、畑(はたき)荒らしいがーくーんはじやくとぅ。」んでぃ言ゃーなかい、御馳走(くゎっちー)しみたんでぃ。あんしそうしが、だーうぬ友(どぅせー)、一緒(まじゅー)かたじきらんでぃる言ちぇーくとぅ、うぬ御馳走(くゎっちー)かみいがーちーゆさんたんでぃ。あんさくとぅ、うんたんに兄(しーじゃ)ぬ、「指(いーべー)、自分(どぅー)ぬ前(めー)んかいうーりる。血(ちー)ぬちながとぉーる肉親(にくし)のー、ちっちんちらん縁(いん)し結ばってぃるうくとぅやー。」んでぃ言ゃーなかい、うんにんからー仲ぬわっさたる兄弟二人(ちょーでぇーたい)や、じこー仲ぬゆたしくなてぃ、ぬーぐとぅん二人(たい)し一緒(まじゅん)ちゅいしーじーしんぢゃーなかい、いー兄弟(ちょーでぇー)なてぃ皆(んな)かいうれえーまさりいるあたぬ兄弟(ちょーでぇー)なたんでぃさ。くりが陥没池(むるち)ぬ大鰻(うふんなじ)ぬ話(はな)しい。〔共通語訳〕 これは、昔の北谷屋良村にいた、仲の悪い兄弟が仲直りした話。昔、屋良村に兄弟二人居て、その兄弟二人共仲が悪く、その弟の方は自分の兄よりも兄弟以上に交際している友人がおりましたが、兄とは仲が悪く、何事も一切一緒にはしなかったそうだが。その弟の畑は、陥没池(むるち)という大きな池があるがその池の側にあり、とても肥沃で土地も肥えていて、色々な農作物が良くできる畑であったそうだ。それで、その弟は、兄とは仲は悪くても、畑仕事は大変精出して働くので、農作物はとても良くできたそうだ。そして或る年、そこに黍(とーきび)を植えると、黍(とーきび)も大変良くできて、穂も垂れ下がり満作しているが、もうやがて収穫できそうだなあと思っていると、片側から、次第にそれを盗む者が出て、その黍(とーきび)の穂の部分だけ折り取って持って行くので、その弟は、「ああもうこれは、このままではいけない。もうこれは、今晩も暗闇だから、多分出てくるに違いない。」と思い、六尺棒を持っていき、土手の後ろの方に隠れて待っていると、予想していた通り、片側から真っ黒い泥棒が出てきて、すぐに黍(とーきび)の先の穂の部分だけを、一つ一つ折り取っているのを見たので、「この野郎だったのか。」と怒って、後ろの方から肩の辺りや頭の所を、目茶苦茶に殴ったら、それはもう、後ろの方からおもわず殴りつけられたので、そのままそこで死んでしまって、動かなくなってしまったのです。するとその弟は度肝を抜かれて、「この野郎を懲らしめてやろうと思って殴りつけたのだが、これはもう死んでしまった。さあ大変な事になってしまった。」と思い、夜道を走って友人の家に行き、「あのう、私は今夜、人を殴り殺してしまった。私の畑から黍(とーきび)を盗みよるのを見て、後ろから目茶苦茶に殴りつけたので、もう死んでしまって動きもしなくなっているから、二人で片づけて、他人が見ないうちにどこかに二人で一緒に葬ってくれないか。」と言いますと、その友人は頭を横に振って、「いいえ、それだけは君と一緒にできないよ。それはね、その事がもし他人に知られたとなると、私達二人で共謀して殺して片づけたという事になり、私も一緒に咎を受けなければいけないから、もうそれはできない。」と言うので、その弟は、「もうこれは困った事になった。もうこうなった以上は、このまま人を殺して捨てておくわけにもいけない。」と思い、仕方なく、日頃は仲の悪い兄の家に行って、「実はもう、こうこうして人を殺してしまったから、一緒に行って片づけて葬ってくれないか。」と言いますと、その兄は、「そうか、お前が人を殺したのか。いくら泥棒であっても人間だから、一緒に片づけなければいけないなあ。」と言って、二人で走って行って、その倒れて動かなくなった人を覗き込んで見ると、わあもう、人ではなくて大鰻なので、「ああ、これは人ではなくて大鰻が、黍(とーきび)の穂を喰い尽くしたのか。」とわかり、それからその大鰻を二人で担いできて、家で煮ておいて、翌朝になると、隣近所の人達を呼び集めて、「これは陥没池(むるち)から出る大鰻を殺したものだから、これをみんなで食べると、もう今度は畑を荒らしに来ないはずだから。」と言って、みんなに御馳走したそうだ。そうしたのだが、その時弟の友人は、一緒に片づけないと言ったので、御馳走を食べにくる事はできなかったそうだ。そうすると、その時兄は、「指は自分の前にしか折れない。血の繋がった肉親というのは、切っても切れない縁で結ばれているからな。」と言って、その時から、仲の悪かった兄弟二人は大変仲良くなり、何事をするにも二人で一緒にやって助け合っていき、仲の良い兄弟になってみんなから羨ましがられる様な兄弟になったとさ。これが陥没池(むるち)の大鰻の話。識名隆人翻字 T5B3
| レコード番号 | 47O170043 |
|---|---|
| CD番号 | 47O17C005 |
| 決定題名 | 陥没池の大鰻(方言) |
| 話者がつけた題名 | 陥没池の大鰻(ムルチぬうふんなじ) |
| 話者名 | 阿波根昌栄 |
| 話者名かな | あはごんしょうえい |
| 生年月日 | 19210309 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県中頭郡北谷町字上勢頭 |
| 記録日 | 19970217 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | T05B04 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話、 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 『想い出の昔話』 |
| キーワード | 屋良,仲の悪い兄弟,池,泥棒,大鰻 |
| 梗概(こうがい) | 〔方言原話〕 くれえー、昔(んかし)ぬ北谷屋良村んかい、仲ぬわっさる兄弟(ちょーでぇー)ぬ、仲のーいさる話(はな)しい。昔(んかし)屋良村んかい、兄弟二人(ちょーでぇーたい)うしが、二人(たい)なむん、仲ぬわっさぬ、うぬ弟(うっとぉー)自分(どぅー)ぬ兄(しーじゃ)やかにん、兄弟(ちょでぇ)やか以上(うぇ)に交際(ふぃら)とぉーる友(どぅし)ぬうしが、兄(しーじゃ)とぉー仲ぬわっさぬ、ぬーてぃーちん、一緒(まじゅー)のーさんたんでぃ。あんし、うぬ弟(うっとぅ)ぬ畑(はろー)、陥没池(むるち)んち、だてぇーんそうる池(くむい)ぬあしが、うまぬ側(すば)んかいあてぃ、じこーいー畑(はる)なやーに、土地(ぢー)やくぇーとぉーくとぅ、ちゅくいむじゅくいゆーでぃきたんでぃ。だーうれー、兄(しーじゃ)とぉー仲(なかー)わっさしが、畑仕事(はるしぐとぉー)はまいくとぅ、作物(ちゅくいむのー)じこーゆかいたんでぃ。あんし、ある年(とぅし)、うぬ畑(はる)んかい、トォーナチンうぃーてぃさくとぅ、トォーナチぬんじこーゆかてぃ、穂(ふー)んたいかんてぃそうるむんぬ、なーやがてぃとぅらりいっさーんでぃうむたくとぅ、片側(かたはら)から、むるうり盗まーがんぢてぃ、なーうぬトォーナチンぬ首びけーちんうーてぃむっちはちさくとぅ、うぬ弟(うっとぉー)、「とおーなーくれえーかんそーてぇーならん。なーくれえー、今晩(ちゅー)ん暗闇(くらしん)やくとぅ、ゆうーさんあれー今晩(ちゅー)んんぢてぃちゅーるはじやくとぅ。」んでぃうむやーなかい、六尺棒(るくさんぼー)むっち、土手(あぶし)ぬ後(くし)んかいくゎっくぃてぃそういねえー、いんねーすんねえー片側(かたはら)から、真っ暗(まっくーる)そうる盗人(ぬすどぅ)ぬんぢやーなかい、しぐトォーナチンぬ首、てぃーちなーてぃーちなーちんうーてぃんぢゃくとぅ、「くぬひゃーるやてぇーっさみ。」んでぃ言ゃーなかい、肩から頭(ちぶる)から、ちゃーぱくないすぐたくとぅ、だーうぬ者(むのー)、後(くし)からうまーじふらーじすぐいたっくゎさっくゎさっとぉーくとぅ、ちゅらーく、うまうてぃ死亡(しなー)なかい、なーんじゅかんなてぃねえーらんさくとぅ、うぬ弟(うっとぉー)たましぬぎやーなかい、「くぬ野郎(ひゃー)やそーいりりわるやるんちるすぐたしが、なーくれえー死亡(けーしじ)ねえーらん、一大事(いちでぇーじ)なとぉーん。」でぃうむやーなかい、夜道(ゆるぬみち)はーえーし友(どぅし)ぬ家(やー)んかいんぢゃーなかい、「いぇー私(わん)ねえーなー今晩(ちゅー)や、人(ちゅ)すぐいくるちねえーらん。私達(わったー)畑(はる)ぬトォーナチン盗まぎいし後(くし)から、みっくゎたっくゎすぐいたっくゎちゃくとぅ、なー死亡(しなー)なかい、んぢゅかんなとぉーくとぅ、でぃー二人(たい)さーなかい、人(ちゅ)ぬ見だんまーどぅかたぢきてぃ、まーがなんかい一緒(まじゅーん)しうくてぃとぅらさんなー。」んでぃ言ちゃくとぅ、うぬ友(どぅせー)、「いーいーいー、うりびけーやなー私(わん)ねえー君(やー)とぉーならんさ。あんせーやー、うりんでぇー人(ちゅ)んかいわからりーねえー私達二人(わったーたい)さーに、共謀(むんぐん)さーに、くるちかたぢきてぇーんでぃる事(くとぅ)んかいないくとぅ、私(わん)にん一緒(まじゅう)ん咎(とぅが)受きらんあれえーならんないくとぅ、とぉーうれえーならんさ。」んでぃ言ちゃくとぅ、うぬ弟(うっとぉー)、「とぉーなーくれえー、ぢゃーふぇーなとぉーん。なーかんなたる以上(うぃー)やー、うぬまま人(ちゅ)くるち、はんなぎとぉーちゅるわきにんいかんくとぅ。」んでぃうむやーに、日頃(ふぃじー)や仲ぬわっさる兄(しーじゃ)ぬ家(やー)んかい行ちゃーなかい、「じちぇーなー、くんぐとぅくんぐとぅし人(ちゅ)くるちねえーらんくとぅ、なー一緒(まじゅん)しかたじきてぃ、うくてぃとぅらし。」んでぃ言ちゃくとぅ、兄(しーじゃー)、「やみ。なーあんせえー君(やー)が人(ちゅ)くるち、いかな盗人(ぬすどぅ)やてぃん人(ちゅ)るやくとぅ、あぬー一緒(まじゅーん)しかたじききらわるないさ。」んち、二人(たい)なむんはーえーなてぃ行ちゃーに、うぬとぉーりてぃんじゅかんなとぉー人(ちゅ)んーちゃくとぅ、わーなー、人(ちょー)あらん大鰻(うふんなじ)なてぃ、「とぉーくれえー、人(ちゅ)あらん、大鰻(うふんなじ)ぬる、トォーチンぬ穂(ふー)や、むる、くりがるくゎてぇーっさみ。」んち、うりから、うぬ大鰻(うふんなじ)二人(たい)しかたみてぃちゃーに、家(やー)んじ煮やーなかい、翌日(なーちゃ)なたくとぅ、ちゅけーとぅねーぬ人達(ちゅぬちゃー)皆(んな)あちみてぃ、「とぉー陥没池(むるち)からんじとぉーる大鰻(うふんなぜー)くるちぇーくとぅ、うり皆(んな)しかみいるんせえー、なー今(なま)から、畑(はたき)荒らしいがーくーんはじやくとぅ。」んでぃ言ゃーなかい、御馳走(くゎっちー)しみたんでぃ。あんしそうしが、だーうぬ友(どぅせー)、一緒(まじゅー)かたじきらんでぃる言ちぇーくとぅ、うぬ御馳走(くゎっちー)かみいがーちーゆさんたんでぃ。あんさくとぅ、うんたんに兄(しーじゃ)ぬ、「指(いーべー)、自分(どぅー)ぬ前(めー)んかいうーりる。血(ちー)ぬちながとぉーる肉親(にくし)のー、ちっちんちらん縁(いん)し結ばってぃるうくとぅやー。」んでぃ言ゃーなかい、うんにんからー仲ぬわっさたる兄弟二人(ちょーでぇーたい)や、じこー仲ぬゆたしくなてぃ、ぬーぐとぅん二人(たい)し一緒(まじゅん)ちゅいしーじーしんぢゃーなかい、いー兄弟(ちょーでぇー)なてぃ皆(んな)かいうれえーまさりいるあたぬ兄弟(ちょーでぇー)なたんでぃさ。くりが陥没池(むるち)ぬ大鰻(うふんなじ)ぬ話(はな)しい。〔共通語訳〕 これは、昔の北谷屋良村にいた、仲の悪い兄弟が仲直りした話。昔、屋良村に兄弟二人居て、その兄弟二人共仲が悪く、その弟の方は自分の兄よりも兄弟以上に交際している友人がおりましたが、兄とは仲が悪く、何事も一切一緒にはしなかったそうだが。その弟の畑は、陥没池(むるち)という大きな池があるがその池の側にあり、とても肥沃で土地も肥えていて、色々な農作物が良くできる畑であったそうだ。それで、その弟は、兄とは仲は悪くても、畑仕事は大変精出して働くので、農作物はとても良くできたそうだ。そして或る年、そこに黍(とーきび)を植えると、黍(とーきび)も大変良くできて、穂も垂れ下がり満作しているが、もうやがて収穫できそうだなあと思っていると、片側から、次第にそれを盗む者が出て、その黍(とーきび)の穂の部分だけ折り取って持って行くので、その弟は、「ああもうこれは、このままではいけない。もうこれは、今晩も暗闇だから、多分出てくるに違いない。」と思い、六尺棒を持っていき、土手の後ろの方に隠れて待っていると、予想していた通り、片側から真っ黒い泥棒が出てきて、すぐに黍(とーきび)の先の穂の部分だけを、一つ一つ折り取っているのを見たので、「この野郎だったのか。」と怒って、後ろの方から肩の辺りや頭の所を、目茶苦茶に殴ったら、それはもう、後ろの方からおもわず殴りつけられたので、そのままそこで死んでしまって、動かなくなってしまったのです。するとその弟は度肝を抜かれて、「この野郎を懲らしめてやろうと思って殴りつけたのだが、これはもう死んでしまった。さあ大変な事になってしまった。」と思い、夜道を走って友人の家に行き、「あのう、私は今夜、人を殴り殺してしまった。私の畑から黍(とーきび)を盗みよるのを見て、後ろから目茶苦茶に殴りつけたので、もう死んでしまって動きもしなくなっているから、二人で片づけて、他人が見ないうちにどこかに二人で一緒に葬ってくれないか。」と言いますと、その友人は頭を横に振って、「いいえ、それだけは君と一緒にできないよ。それはね、その事がもし他人に知られたとなると、私達二人で共謀して殺して片づけたという事になり、私も一緒に咎を受けなければいけないから、もうそれはできない。」と言うので、その弟は、「もうこれは困った事になった。もうこうなった以上は、このまま人を殺して捨てておくわけにもいけない。」と思い、仕方なく、日頃は仲の悪い兄の家に行って、「実はもう、こうこうして人を殺してしまったから、一緒に行って片づけて葬ってくれないか。」と言いますと、その兄は、「そうか、お前が人を殺したのか。いくら泥棒であっても人間だから、一緒に片づけなければいけないなあ。」と言って、二人で走って行って、その倒れて動かなくなった人を覗き込んで見ると、わあもう、人ではなくて大鰻なので、「ああ、これは人ではなくて大鰻が、黍(とーきび)の穂を喰い尽くしたのか。」とわかり、それからその大鰻を二人で担いできて、家で煮ておいて、翌朝になると、隣近所の人達を呼び集めて、「これは陥没池(むるち)から出る大鰻を殺したものだから、これをみんなで食べると、もう今度は畑を荒らしに来ないはずだから。」と言って、みんなに御馳走したそうだ。そうしたのだが、その時弟の友人は、一緒に片づけないと言ったので、御馳走を食べにくる事はできなかったそうだ。そうすると、その時兄は、「指は自分の前にしか折れない。血の繋がった肉親というのは、切っても切れない縁で結ばれているからな。」と言って、その時から、仲の悪かった兄弟二人は大変仲良くなり、何事をするにも二人で一緒にやって助け合っていき、仲の良い兄弟になってみんなから羨ましがられる様な兄弟になったとさ。これが陥没池(むるち)の大鰻の話。識名隆人翻字 T5B3 |
| 全体の記録時間数 | 5:26 |
| 物語の時間数 | 5:26 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |