牛舌娘(方言)

概要

〔方言原話〕 昔(んかし)有(あ)たんでぃる話いやしが、屠殺業者(うゎーさー)、屠殺場(とぅとぅんば)うてぃ、牛、馬(んま)、豚(うゎー)ぬしぬん殺(くる)ち、皆(んな)んい持(む)たする仕事(しぐとぅ)そうしんかえー、屠殺業者(うゎーさー)んでぃ言(いゅ)しが、昔(んかし)、親(うや)ぬ代(ゆー)から屠殺業者(うゎーさー)し、大変(じこー)儲(もー)きてぃ、財産(ぜーさぬ)んまんでぃ、家(やー)ん美屋(ちゅらやー)造(ちゅく)てぃ暮(く)らちょーる家庭(ちねー)ぬ有(あ)たんでぃ。あんしんま、娘子(うぃなぐんぐゎ)一人(ちゅい)生(ん)まりてぃ、後(あとー)生(ん)まりらんたんでぃしが、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)大変(じこー)ぬ美人(ちゅらかーぎー)やたんでぃしが、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ年頃(とぅしぐる)なてぃん、くーやーが来(くー)ん、うぬ、娘子(うぃなぐんぐゎー)美人(ちゅらかーぎー)んやしが、平生(ふぃーじー)ぬ様子(よーてー)見(んー)じーねー、美服装(ちゅらすがい)さん、仕事(しぐとぅ)ぬ手伝(てぃがねー)ん、大変(じこー)うーはまいし、親(うや)ぬ孝(こー)ゆーそーる、真面目(まくとぅー)娘子(うぃなぐんぐゎ)やんでぃる話いん出(んぢ)てぃそーしが、一人(ちゅい)ん嫁(ゆみ)しみてぃくぃみそーり、嫁(ゆみ)なてぃとぅらさんなーんでぃる人(ちょー)居(う)らん。ぬーがんでー、昔(んかし)から、牛やてぃん、豚(うゎー)やてぃん、家畜(いちむし)千匹(しびち)殺(くる)しーねー、人(ちゅ)、一人(ちゅい)殺(くる)ちーしとー同等(いーぬ)罪(ちみ)罰(ばち)当(あ)たいんでぃ言(いゃっ)とーしが、うぬ家庭(ちねー)や、親(うや)ぬ代(ゆー)からぬ屠殺業者(うゎーさー)やくとぅ、なげーうぬ業(わざ)し、ちゃっさが家畜(いちむし)殺(くる)ちゃらわからんあたいやくとぅ、富豪(うぇーき)し、財産(ぜーさぬ)んまんどーしが、んな、家畜(いちむし)千匹(しんびち)殺(くる)しーねー、人(ちゅ)、一人(ちゅい)殺(くる)ちぇーくとぅ、同等(いーぬ)罪(ちみ)罰(ばち)当(あ)たいんでぃせー、わかてぃるうくとぅ、なかなかいーが行(い)ちゅる人(ちゅー)居(う)らんなてぃさくとぅ、んまぬ主人(ぬーせー)、「くんぐとぅそーてーならんむん。」でぃ思(うむ)やーに、「財産(ぜーさん)、全部(むる)いーらさはん、半分いーらさはんすくとぅ、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ一生涯(いちみとぅとぅま)ぬくぇーちゅー持(む)たちやらすくとぅ、妻(とぅぢ)しんしむんでぃ思(うむ)いる青年(にーせー)が居(う)らー、話いしーが来(くー)。」んち、隣(ちゅけー)、近所(とぅねー)んかい、話い出(んぢゃ)ちさくとぅ、隣(とぅな)ぬ村ぬ人達(ちゅぬちゃー)や、うぬ話い聞(ち)ちゃーに、「とーとー、なーあんせー、私達(わったー)や、食(か)むしんいきらさぬ、ぬーんねーらんむん、んまぬ婿(むーく)やーなかい、財産(ぜーさん)ぬ半分やてぃん、さんいちやらわんしむくとぅ、分(わ)きてぃ取(とぅ)らするむんやれー、婿(むーく)なてぃんしむん。」でぃち、話いなやーに、うぬ家(やー)んかい行(いん)ぢ、親達(うやぬちゃー)とー座敷(ざしち)分(わ)かち、娘子(うぃなぐんぐゎ)とぅ一緒(ましゆー)ん寝(に)んてぃさくとぅ、夜中(ゆなか)なてぃさくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)男(いきが)かなささーに、夫婦(みいとぅんだ)ぬ契(ちぢ)り終(う)わてぃ後(あとぅ)、男(いきが)ぬ寝(に)んじ込(く)みーねー、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)舌(しば)しうぬ男(いきが)ぬ体(どぅー)舐(な)みてぃとぅらすんでぃ。やしが、当(あ)たい前(めー)ぬ人(ちゅ)ぬ、舌(しば)し、舐(な)みーねーなー面白(うぃるき)さるある筈(はじ)やしが、うりが舌(しばー)、牛ぬ舌(しちゃ)ぬぐとぅし長(なが)さぬ、また、牛ぬ舌(しちゃ)ぬぐとぅざらざらし、なー、後(あとー)、きーぶりだーちゃーし、んまからふぃんぎてぃ、なー、うりとー寝(に)んちぇー暮(く)らしゆーさんなやーなかい、自分(どぅー)ぬ家(やー)んかい帰(けー)てぃそーしが、うぬ男(いきがー)、「とーなー、寝(に)んじゅせー寝(に)んたしが、くれーなー、妻(とぅぢ)するわまねーいかん、また、私(わー)がんでー、うぬ話い、世間(しき)ぬんかいしーねーでーじんち、また、うれー、牛るんやんどーし、皆(んな)んかい話いしーねーいちでーじんかいないん。」でぃ思(うむ)やーに黙(だま)てぃ、「私(わー)がんまぬ婿(むーこーなゆーさん。」でぃち話いさくとぅ、うぬ後(あとぅ)、一人(ちゅい)代(か)わい代(が)わい婿(むーく)ないがんち、行(い)ちゅしが、皆(んな)、戻(むどぅ)てぃちさくとぅ、一人(ちゅい)ぬ親(うやー)、「私達(わったー)や、貧乏者(ふぃんすーむん)どぅやくとぅ、あまぬ婿(むーく)ないるんせー、いふぇー難儀(なんじ)やたんてーん、難儀(なんじ)ん苦労(くんじ)ん当(あ)たい前(めー)るやる、富豪者(うぇーきんちゅ)ぬ婿(むーこー)難儀(なんじ)やせー当(あ)たい前(めー)やさ。」んちそーしが、「あねーあらん、あまー、首里(すい)、那覇(なーふぁ)、むる、ちゃーぬ、かーぬしならん、私(わー)があまうてーぬ暮(く)らせーしーゆーさん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「なーあんせーならん、あれー、仕方ならんさ。」んちそーしが、また、他(ふか)ぬ人(ちゅ)ぬうぬ話い聞(ち)ちゃーなかい、「あれー、戻(むどぅ)てぃちゅーんどー、ありがーならんぎさーやん。」でぃちさくとぅ、また他(ふか)ぬ青年達(にーせーたー)がん皆(んな)戻(むどぅ)てぃちさくとぅ。こんどー外(ふか)ぬ村ぬ青年(にーせー)が行(い)ちゃーなかいそーしが、娘子(うぃなぐんぐゎ)、同様(いーぬぐとぅ)夫婦(みいとぅんだ)ぬいーくとぅし後(あとぅ)、男(いきが)ぬ寝(に)んてぃ、寝(に)んじいーねー、舌(しば)し舐(な)みてぃさくとぅ、うぬ男(いきが)ぬ、「ぬーがやー舌(しばー)。」んちさくとぅ、「うーなー、私(わん)ねーくんぐとぅなてぃ、誰(たー)が泊(とぅ)まてぃん一緒(まじゅー)のならんしが、他(ふか)ぬ男達(いきがぬちゃー)や、うんぐとぅしーねー、しぐふぃんぎてぃ行(は)ち、うんにんからー物(むぬ)ん言(いゃ)んしが、貴方(うんじょー)なー、『ぬーがうんぐとぅそーる。』んち、一言葉(ちゅくとぅば)やてぃん、物(むぬ)言(い)ちくぃみせーくとぅ、居(う)とーてぃくぃみそーり。」んでぃち頼(たる)どーしが、うぬ男(いきが)ん、「とー、私(わー)がやてぃん、毎夜(めーゆる)くんぐとぅせー暮(く)らしゆーさんくとぅ、別(わか)りてぃ行(い)ちゅしが、父親(すー)んかい、一言葉(ちゅくとぅば)かん言(い)りよー、人(ちゅ)、物(むぬ)食(か)むしん一番やしが、心(くくる)ん第一(でーいち)、第一(でーいち)んでぃせー、じこー大切(てーしち)なむんどー、んでぃる意味(ちむえー)やしが、第一(でーいち)んでぃせー、一番(いちば)初(はじ)みんち、人(ちゅ)、人間(にんじん)ぬ一番初(はじ)めー心(くくる)やんどー、第一(でーいち)んでぃる言葉(くとぅばー)、大切(てーしち)なむんでぃしとぅ、初(はじ)まいんでぃる意味(ちむえー)とぅ、二(たー)ち有(あ)くとぅ、間違(まちげー)らんぐとぅ、心(くし)る第一(でーいち)んち、いったー父親(すー)んかい言(い)いよー。」んち、うぬ男(いきが)ん帰(けー)てぃ行(いん)ぢゃくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)泣(な)ちゃがちーなー、自分(どぅー)ぬ親(うや)んかい、「あぬ男(いきが)ぬあん言(いゅ)たん。あんし、家(やー)かい帰(けー)てぃ行(はい)たん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「えーあんやみ、んちゃ、屠殺業者(うゎーさー)や、家畜(いちむし)千匹(しんびち)殺(くる)せーから、人(ちゅ)、一人(ちゅい)殺(くる)ちぇーしとー同様(いーぬ)罪(ちみ)罰(ばち)んでぃてーるみん、私(わん)ねーなー、くぬ仕事(しぐとぅ)とー止(や)みりはるないる。」んち、止(や)みやーなかい、うぬ後(あとぅ)、あん言(いゅ)たる青年達(にーせーたー)家(やー)んかい尋(たじゅ)にてぃ行(い)ちゃーなかい、「じちぇーなくんぐとぅ、くんぐとぅし、私(わん)ね娘子(うぃなぐんぐゎ)から聞(ち)ちゃーなかい、今(なま)までぃぬ仕事(しぐとぅ)止(や)めたっさー、ゆー教(ならー)ちくぃてぃかふーし。」んち、御礼(りーじ)さくとぅ、「とー、うれーやーさい、人間(にんじん)ぬ位(くれー)や武士(さむれー)や上(うぃ)、百姓(ひゃくそー)や、野菜(おーふわ)、千草(ちくさ)る沖縄(うちなー)うてーやいびーしが、仕事(しぐとぅ)ぬ位(くれー)や、一、農作(むじゅくい)、二、学問(がくむん)、あんさーに、九、念佛者(にんぶち)、十、屠殺業者(うゎーさー)んち、うぬ仕事(しぐとぅ)ぬ位(くれー)や、屠殺業者(うゎーさー)や一番下(しちゃ)るやいびーる、人(ちゅ)、人間(にんじ)のー心(くくる)る第一(でーいち)、だーさい、心(くくる)ぬ有(あ)いんせー、はるさーんないー商売(そーべー)んないびーせー、人(ちゅ)、人間(にんじ)のー心(くくる)る第一(でーいち)やいびーる。第一(でーいち)んでぃせー、あたらしーむんでぃる意味(ちむえー)ん有(あ)いびーしが、一番どーやーんでぃる意味(ちむえー)ん有(あ)いびーん。やくとぅ、私(わん)ねー、第一(でーいち)んでぃる言葉(くとぅばー)じこーいー言葉(くとぅばー)んでぃ、思(うむ)とーいびーん、九、念佛者(にんぶち)、十、屠殺業者(うゎーさー)止(や)みそーち、とー、今(なま)から、畑(はる)しみせーんち、心掛(くくるが)きみせーねー、一、農作(むじゅくい)だーさい、一番ぬ仕事(しぐとぅ)んかい、ちちゃびーせー。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、うぬ父親(すー)や、「にふぇーどー、今(なま)からー、やーが教(ならー)ちぇーる通(とー)いすくとぅ、遊(あし)びーがん来(くー)よー、来(ちゅー)る時(ばー)ねー御礼(りーじ)すくとぅやー。」んち、帰(けー)てぃ行(いん)ぢさくとぅ。うりから、いぇーねーらんぐとぅ、うぬ青年(にーせー)が、遊(あし)びーが、行(いん)ぢさくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん、皆(んな)、うっさし、うぬ夜(ゆる)、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「私(わん)にんかいん、親達(うやぬちゃー)んかいん、いーむん教(ならー)しくぃみそーち、いっぺーにふぇーでーびる。」んち、言(いゃ)がなー、涙(なだー)ポロポロ落(う)とぅち泣(な)ちゃくとぅ、どぅくちむぐりさぬ、「うりんくりん、ぬーがなぬ引(ふぃ)ちゃ合(わ)しるやくとぅやー。」んでぃち、「今日(ちゅー)やなー、私(わん)が泊(とぅ)まてぃ行(い)ちゅさ。」んちさーなかい、泊(とぅ)まてぃさくとぅ、うぬ親達(うやぬちゃー)ん、娘子(うぃなぐんぐゎ)ん、じこーうっさし、にふぇーでーびるんでぃる心(くくる)とぅ、屠殺業者(うゎーさー)止(や)めたんでぃる事(くとぅ)さーなかい、位牌(いーふぇー)んかい、合掌(てぃーうさー)ちさーなかい、寝(に)んてぃさくとぅ、うぬ青年(にーせー)とぅ娘子(うぃなぐんぐゎー)、男(いきが)とぅ女(いなぐ)ぬいーくとぅしまち後(あとぅ)ん、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ、ぬんさんなたくとぅ、うぬ青年(にーせー)が、「今夜(ちゅーゆる)やしぐ寝(に)んだりみ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、娘子(うぃなぐんぐゎー)、「なー、肝(ちむ)ぬわさみちゃびらん。」でぃち、舌(しば)治(のー)てぃ、肝(ちむ)ん落(う)てぃ付(ち)ちさーに、当(あ)たい前(めー)ぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)なたくとぅ、親達(うやぬちゃー)とぅ、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「私達(わったー)助(たし)きてぃくぃみせーくとぅ、貴方(うんじゅ)が欲(ふ)さみせーし、ぬーやてぃんうさぎーびーくとぅ、娘子(うぃなぐんぐゎ)妻(とぅぢ)しくぃみそーり。」んち頼(たる)でぃ、夫婦(みいとぅんだ)なたんでぃ。〔共通語訳〕 昔、そのようなことがあったという話なんだが、屠殺業者とは、屠殺場で牛や馬、豚などを殺して、みんなに持たす仕事をする人達の事を屠殺業者というのだが、昔、親の代から屠殺業者をして、大変お金を儲けて、財産も多く、家も綺麗な家を造って暮らしている家庭があったそうだが、それでその家庭には娘が一人生まれて、後は生まれていないが、その娘は大変な美人だったそうだが、年頃になっても誰も貰い手が来ない。その娘は美人ではあっても、平常の様子を見ていると、綺麗な服装もせず、仕事の手伝いなども一生懸命頑張って、親孝行もよくやっている真面目な娘だとの評判も出ているが、一人も嫁にさせて下さい、嫁に来て下さいという人はいなかったのです。何故かともうしますと、昔から牛でも豚でも、あるいはその他の家畜を千匹殺すと、人間一人殺したのと同等の罪罰が当たると言われているが、その家庭、親の代からの屠殺業者だから、長らくその仕事をしてもう、幾ら家畜を殺したかわからないくらいだから、金持ちになり、財産も多いが、みんな家畜を千匹殺すと、人一人殺したのと同等の罪罰が当たるということを知っているので、なかなか娘を貰いに行く人はいませんので、その家の主人は、「この様ではどうにもできない。」と思い、「財産の全部か、あるいは半分でも分けてあげるから。また、娘の一生涯の食い扶持を持たせていかすから、妻にしても良いと思う青年がいたら、話しに来てくれ。」と、隣近所に話をすると、噂が広まって、隣村の人達はその話を聞いて、「そうかそうか、私達には食べ物も少なく、何にも無いから、そこの婿になり、財産の半分でも三分の一でも良いから分けて取らせるなら、婿になっても良い。」というので、その家に行き話し合って、親達とは別棟に娘と一緒に寝たのです。そして、夜中になりますと、その娘は男を可愛がり、夫婦の契りを終わって後、男が寝込んでしまいますと、その娘は舌を出して、男の体を舌で舐めたのです。だが、普通の人が舌で舐めると、もう、とても面白い筈ですが、彼女の舌は牛の舌のようにして長く、また、牛の舌のようにざらざらしていますので、後は鳥肌が立ち、そこから逃げて、もう彼女とは、寝ては暮らせないようになり、自分の家に帰って行ったのですが、家に帰ってからその男は、「ああ、もう、寝るのは寝たが、これはもう妻にするわけにはいかない、また私がもしこの話を出して世間に知らせたら大変だ、また、彼女が牛だとみんなに話したら一大事なことになる。」と思って黙って、「私などはそこの婿にはなれない。」と話しますと、その後、代わる代わる何人も婿になろうとして行くのですが、みんな戻ってくるので、ある一人の青年の親は、「私達は貧乏者だから、あそこの婿になると少しは苦労しても当たり前で、大金持ちの婿は難儀するのは当然だよ。」と話しましたが、「そうでなくて、あそこは、首里(しゅり)、那覇(なは)で、何事もこうだああだとやがましくて、到底あそこで暮らすことはできない。」と言いますので、「ああ、もう、それなら仕方がないさ。」という事で、また、他の人がその話を聞いて、「あの青年が戻って来て、あれもできそうにない。」という話が出ますと、また別の青年達が行くのですが、みんな戻ってきたのです。すると今度は、他の村の青年が行っているのですが、その娘は同様に夫婦の営みをした後、男が寝入りますと舌で舐めたのです。するとその男が、「どうしたの、あなたの舌は」と言いますと、「ええ、もう私はこのようになり、誰が来て泊まっても一緒になれないが、他の男達はそのようにしますとすぐ逃げて行って、その時から物も言いませんが、あなたは、『何故そのようになったのか。』と一言でも話して、私に物を言って下さいましたら、ずうっと居て下さい。」と頼みましたが、「そうか、だが私でも毎夜このような事をされては暮らしていけないから別れていくが、あなたの父親に一言斯く言いなさい。人間は食べ物を食べるのも一番だが、心も第一、第一というのは非常に大切なものだよ、という意味もあるが、第一というのは一番初めと言って、人間の一番初めは心だよ、第一という言葉には大切なものという意味と、初まりという意味の二つあるから、間違えないように心が第一とあなたの父親に言いなさいね。」と言って、その男も帰って行きましたので、その娘は泣きながら自分の父親に、「あの男がこのように話して、自分の家に帰って行きました。」と言いますと、「ええ、そうだったのか、なるほど、屠殺業者は家畜を千匹殺したら人一人殺したのと同等の罪罰が当たると言うから、私はもうこの仕事を止めなくてはいけない。」と言って、止めて後から、その話をした青年の家を尋ねて行って、「実はもう、このようにこのように娘が話して聞かせてくれたので、今までの仕事を止めましたよ、よく教えてくれて有り難う。」と、お礼を言いますと、「ああ、それはですね、人間の位においては、武士が上で、百姓(ひゃくそー)は野菜や千草と沖縄では言いますが、仕事の位は、一、農作、二、学問、そして、九、念佛者(にんぶちゃー)、十、屠殺業者と、その仕事の位は、屠殺業者はもう最低の一番下でございます。人、人間は心が第一、考えてみなさい、心があれば農業者や商売人にもなれます、人、人間、心が第一です。第一というのは大変大切なものという意味もありますが、一番だよという意味もあります、だから私は第一という言葉は大変良い言葉だと思っています。九、念佛者、十、屠殺業者を止められて、今後、あなたがもしも農業をなさると心掛けますと、即ち、一、農作、それで一番の仕事にも着けます。」と話しますと、その父親は、「大変有り難う、今後は貴方が教えてくれた通りにしようと思うから、時々は遊びにおいで、来る時にはお礼をするよ。」と話して帰っていきました。それからしばらくして、その青年が遊びに行きますと、その娘も、みんな喜んで、その夜、娘が、「私にも、また、親達にも良いことを教えて下さって、大変有り難うございました。」と、涙をポロポロ落としながら泣きますと、とても可哀相になり、「よし、それもこれも何かの引き合わせだろうから。」と言って、「今夜は私が泊まっていくよ。」と話して泊まることになりますと、その親達も娘も非常に喜んで、大変有り難うございますという気持ちと、屠殺業者を止めたという事で元祖の位牌に向かってみんなで合掌してから寝たのです。そして、青年も娘と一緒に寝たのです。そして二人、男と女の営みの後、その娘が何もしないので、青年が、「今夜は何もしないで寝れるか。」と言いますと、娘は、「何の胸騒ぎもいたしません。」と話して舌も治り、心も落ちついて普通の娘になりましたので、親達と娘が、「私達を救って下さったお礼に、あなたの欲しいもの、何でも差し上げますから、どうか娘を妻にして下さい。」と頼みましたので、青年も承知して夫婦になったそうです。平成9年2月17日 高江洲亮翻字 T3B1

再生時間:10:13

民話詳細DATA

レコード番号 47O170023
CD番号 47O17C003
決定題名 牛舌娘(方言)
話者がつけた題名 牛舌娘
話者名 阿波根昌栄
話者名かな あはごんしょうえい
生年月日 19210309
性別
出身地 沖縄県中頭郡北谷町字上勢頭
記録日 19970217
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 T03B02
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 『想い出の昔話』
キーワード 屠殺,娘の舌
梗概(こうがい) 〔方言原話〕 昔(んかし)有(あ)たんでぃる話いやしが、屠殺業者(うゎーさー)、屠殺場(とぅとぅんば)うてぃ、牛、馬(んま)、豚(うゎー)ぬしぬん殺(くる)ち、皆(んな)んい持(む)たする仕事(しぐとぅ)そうしんかえー、屠殺業者(うゎーさー)んでぃ言(いゅ)しが、昔(んかし)、親(うや)ぬ代(ゆー)から屠殺業者(うゎーさー)し、大変(じこー)儲(もー)きてぃ、財産(ぜーさぬ)んまんでぃ、家(やー)ん美屋(ちゅらやー)造(ちゅく)てぃ暮(く)らちょーる家庭(ちねー)ぬ有(あ)たんでぃ。あんしんま、娘子(うぃなぐんぐゎ)一人(ちゅい)生(ん)まりてぃ、後(あとー)生(ん)まりらんたんでぃしが、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)大変(じこー)ぬ美人(ちゅらかーぎー)やたんでぃしが、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ年頃(とぅしぐる)なてぃん、くーやーが来(くー)ん、うぬ、娘子(うぃなぐんぐゎー)美人(ちゅらかーぎー)んやしが、平生(ふぃーじー)ぬ様子(よーてー)見(んー)じーねー、美服装(ちゅらすがい)さん、仕事(しぐとぅ)ぬ手伝(てぃがねー)ん、大変(じこー)うーはまいし、親(うや)ぬ孝(こー)ゆーそーる、真面目(まくとぅー)娘子(うぃなぐんぐゎ)やんでぃる話いん出(んぢ)てぃそーしが、一人(ちゅい)ん嫁(ゆみ)しみてぃくぃみそーり、嫁(ゆみ)なてぃとぅらさんなーんでぃる人(ちょー)居(う)らん。ぬーがんでー、昔(んかし)から、牛やてぃん、豚(うゎー)やてぃん、家畜(いちむし)千匹(しびち)殺(くる)しーねー、人(ちゅ)、一人(ちゅい)殺(くる)ちーしとー同等(いーぬ)罪(ちみ)罰(ばち)当(あ)たいんでぃ言(いゃっ)とーしが、うぬ家庭(ちねー)や、親(うや)ぬ代(ゆー)からぬ屠殺業者(うゎーさー)やくとぅ、なげーうぬ業(わざ)し、ちゃっさが家畜(いちむし)殺(くる)ちゃらわからんあたいやくとぅ、富豪(うぇーき)し、財産(ぜーさぬ)んまんどーしが、んな、家畜(いちむし)千匹(しんびち)殺(くる)しーねー、人(ちゅ)、一人(ちゅい)殺(くる)ちぇーくとぅ、同等(いーぬ)罪(ちみ)罰(ばち)当(あ)たいんでぃせー、わかてぃるうくとぅ、なかなかいーが行(い)ちゅる人(ちゅー)居(う)らんなてぃさくとぅ、んまぬ主人(ぬーせー)、「くんぐとぅそーてーならんむん。」でぃ思(うむ)やーに、「財産(ぜーさん)、全部(むる)いーらさはん、半分いーらさはんすくとぅ、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ一生涯(いちみとぅとぅま)ぬくぇーちゅー持(む)たちやらすくとぅ、妻(とぅぢ)しんしむんでぃ思(うむ)いる青年(にーせー)が居(う)らー、話いしーが来(くー)。」んち、隣(ちゅけー)、近所(とぅねー)んかい、話い出(んぢゃ)ちさくとぅ、隣(とぅな)ぬ村ぬ人達(ちゅぬちゃー)や、うぬ話い聞(ち)ちゃーに、「とーとー、なーあんせー、私達(わったー)や、食(か)むしんいきらさぬ、ぬーんねーらんむん、んまぬ婿(むーく)やーなかい、財産(ぜーさん)ぬ半分やてぃん、さんいちやらわんしむくとぅ、分(わ)きてぃ取(とぅ)らするむんやれー、婿(むーく)なてぃんしむん。」でぃち、話いなやーに、うぬ家(やー)んかい行(いん)ぢ、親達(うやぬちゃー)とー座敷(ざしち)分(わ)かち、娘子(うぃなぐんぐゎ)とぅ一緒(ましゆー)ん寝(に)んてぃさくとぅ、夜中(ゆなか)なてぃさくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)男(いきが)かなささーに、夫婦(みいとぅんだ)ぬ契(ちぢ)り終(う)わてぃ後(あとぅ)、男(いきが)ぬ寝(に)んじ込(く)みーねー、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)舌(しば)しうぬ男(いきが)ぬ体(どぅー)舐(な)みてぃとぅらすんでぃ。やしが、当(あ)たい前(めー)ぬ人(ちゅ)ぬ、舌(しば)し、舐(な)みーねーなー面白(うぃるき)さるある筈(はじ)やしが、うりが舌(しばー)、牛ぬ舌(しちゃ)ぬぐとぅし長(なが)さぬ、また、牛ぬ舌(しちゃ)ぬぐとぅざらざらし、なー、後(あとー)、きーぶりだーちゃーし、んまからふぃんぎてぃ、なー、うりとー寝(に)んちぇー暮(く)らしゆーさんなやーなかい、自分(どぅー)ぬ家(やー)んかい帰(けー)てぃそーしが、うぬ男(いきがー)、「とーなー、寝(に)んじゅせー寝(に)んたしが、くれーなー、妻(とぅぢ)するわまねーいかん、また、私(わー)がんでー、うぬ話い、世間(しき)ぬんかいしーねーでーじんち、また、うれー、牛るんやんどーし、皆(んな)んかい話いしーねーいちでーじんかいないん。」でぃ思(うむ)やーに黙(だま)てぃ、「私(わー)がんまぬ婿(むーこーなゆーさん。」でぃち話いさくとぅ、うぬ後(あとぅ)、一人(ちゅい)代(か)わい代(が)わい婿(むーく)ないがんち、行(い)ちゅしが、皆(んな)、戻(むどぅ)てぃちさくとぅ、一人(ちゅい)ぬ親(うやー)、「私達(わったー)や、貧乏者(ふぃんすーむん)どぅやくとぅ、あまぬ婿(むーく)ないるんせー、いふぇー難儀(なんじ)やたんてーん、難儀(なんじ)ん苦労(くんじ)ん当(あ)たい前(めー)るやる、富豪者(うぇーきんちゅ)ぬ婿(むーこー)難儀(なんじ)やせー当(あ)たい前(めー)やさ。」んちそーしが、「あねーあらん、あまー、首里(すい)、那覇(なーふぁ)、むる、ちゃーぬ、かーぬしならん、私(わー)があまうてーぬ暮(く)らせーしーゆーさん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「なーあんせーならん、あれー、仕方ならんさ。」んちそーしが、また、他(ふか)ぬ人(ちゅ)ぬうぬ話い聞(ち)ちゃーなかい、「あれー、戻(むどぅ)てぃちゅーんどー、ありがーならんぎさーやん。」でぃちさくとぅ、また他(ふか)ぬ青年達(にーせーたー)がん皆(んな)戻(むどぅ)てぃちさくとぅ。こんどー外(ふか)ぬ村ぬ青年(にーせー)が行(い)ちゃーなかいそーしが、娘子(うぃなぐんぐゎ)、同様(いーぬぐとぅ)夫婦(みいとぅんだ)ぬいーくとぅし後(あとぅ)、男(いきが)ぬ寝(に)んてぃ、寝(に)んじいーねー、舌(しば)し舐(な)みてぃさくとぅ、うぬ男(いきが)ぬ、「ぬーがやー舌(しばー)。」んちさくとぅ、「うーなー、私(わん)ねーくんぐとぅなてぃ、誰(たー)が泊(とぅ)まてぃん一緒(まじゅー)のならんしが、他(ふか)ぬ男達(いきがぬちゃー)や、うんぐとぅしーねー、しぐふぃんぎてぃ行(は)ち、うんにんからー物(むぬ)ん言(いゃ)んしが、貴方(うんじょー)なー、『ぬーがうんぐとぅそーる。』んち、一言葉(ちゅくとぅば)やてぃん、物(むぬ)言(い)ちくぃみせーくとぅ、居(う)とーてぃくぃみそーり。」んでぃち頼(たる)どーしが、うぬ男(いきが)ん、「とー、私(わー)がやてぃん、毎夜(めーゆる)くんぐとぅせー暮(く)らしゆーさんくとぅ、別(わか)りてぃ行(い)ちゅしが、父親(すー)んかい、一言葉(ちゅくとぅば)かん言(い)りよー、人(ちゅ)、物(むぬ)食(か)むしん一番やしが、心(くくる)ん第一(でーいち)、第一(でーいち)んでぃせー、じこー大切(てーしち)なむんどー、んでぃる意味(ちむえー)やしが、第一(でーいち)んでぃせー、一番(いちば)初(はじ)みんち、人(ちゅ)、人間(にんじん)ぬ一番初(はじ)めー心(くくる)やんどー、第一(でーいち)んでぃる言葉(くとぅばー)、大切(てーしち)なむんでぃしとぅ、初(はじ)まいんでぃる意味(ちむえー)とぅ、二(たー)ち有(あ)くとぅ、間違(まちげー)らんぐとぅ、心(くし)る第一(でーいち)んち、いったー父親(すー)んかい言(い)いよー。」んち、うぬ男(いきが)ん帰(けー)てぃ行(いん)ぢゃくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)泣(な)ちゃがちーなー、自分(どぅー)ぬ親(うや)んかい、「あぬ男(いきが)ぬあん言(いゅ)たん。あんし、家(やー)かい帰(けー)てぃ行(はい)たん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「えーあんやみ、んちゃ、屠殺業者(うゎーさー)や、家畜(いちむし)千匹(しんびち)殺(くる)せーから、人(ちゅ)、一人(ちゅい)殺(くる)ちぇーしとー同様(いーぬ)罪(ちみ)罰(ばち)んでぃてーるみん、私(わん)ねーなー、くぬ仕事(しぐとぅ)とー止(や)みりはるないる。」んち、止(や)みやーなかい、うぬ後(あとぅ)、あん言(いゅ)たる青年達(にーせーたー)家(やー)んかい尋(たじゅ)にてぃ行(い)ちゃーなかい、「じちぇーなくんぐとぅ、くんぐとぅし、私(わん)ね娘子(うぃなぐんぐゎ)から聞(ち)ちゃーなかい、今(なま)までぃぬ仕事(しぐとぅ)止(や)めたっさー、ゆー教(ならー)ちくぃてぃかふーし。」んち、御礼(りーじ)さくとぅ、「とー、うれーやーさい、人間(にんじん)ぬ位(くれー)や武士(さむれー)や上(うぃ)、百姓(ひゃくそー)や、野菜(おーふわ)、千草(ちくさ)る沖縄(うちなー)うてーやいびーしが、仕事(しぐとぅ)ぬ位(くれー)や、一、農作(むじゅくい)、二、学問(がくむん)、あんさーに、九、念佛者(にんぶち)、十、屠殺業者(うゎーさー)んち、うぬ仕事(しぐとぅ)ぬ位(くれー)や、屠殺業者(うゎーさー)や一番下(しちゃ)るやいびーる、人(ちゅ)、人間(にんじ)のー心(くくる)る第一(でーいち)、だーさい、心(くくる)ぬ有(あ)いんせー、はるさーんないー商売(そーべー)んないびーせー、人(ちゅ)、人間(にんじ)のー心(くくる)る第一(でーいち)やいびーる。第一(でーいち)んでぃせー、あたらしーむんでぃる意味(ちむえー)ん有(あ)いびーしが、一番どーやーんでぃる意味(ちむえー)ん有(あ)いびーん。やくとぅ、私(わん)ねー、第一(でーいち)んでぃる言葉(くとぅばー)じこーいー言葉(くとぅばー)んでぃ、思(うむ)とーいびーん、九、念佛者(にんぶち)、十、屠殺業者(うゎーさー)止(や)みそーち、とー、今(なま)から、畑(はる)しみせーんち、心掛(くくるが)きみせーねー、一、農作(むじゅくい)だーさい、一番ぬ仕事(しぐとぅ)んかい、ちちゃびーせー。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、うぬ父親(すー)や、「にふぇーどー、今(なま)からー、やーが教(ならー)ちぇーる通(とー)いすくとぅ、遊(あし)びーがん来(くー)よー、来(ちゅー)る時(ばー)ねー御礼(りーじ)すくとぅやー。」んち、帰(けー)てぃ行(いん)ぢさくとぅ。うりから、いぇーねーらんぐとぅ、うぬ青年(にーせー)が、遊(あし)びーが、行(いん)ぢさくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん、皆(んな)、うっさし、うぬ夜(ゆる)、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「私(わん)にんかいん、親達(うやぬちゃー)んかいん、いーむん教(ならー)しくぃみそーち、いっぺーにふぇーでーびる。」んち、言(いゃ)がなー、涙(なだー)ポロポロ落(う)とぅち泣(な)ちゃくとぅ、どぅくちむぐりさぬ、「うりんくりん、ぬーがなぬ引(ふぃ)ちゃ合(わ)しるやくとぅやー。」んでぃち、「今日(ちゅー)やなー、私(わん)が泊(とぅ)まてぃ行(い)ちゅさ。」んちさーなかい、泊(とぅ)まてぃさくとぅ、うぬ親達(うやぬちゃー)ん、娘子(うぃなぐんぐゎ)ん、じこーうっさし、にふぇーでーびるんでぃる心(くくる)とぅ、屠殺業者(うゎーさー)止(や)めたんでぃる事(くとぅ)さーなかい、位牌(いーふぇー)んかい、合掌(てぃーうさー)ちさーなかい、寝(に)んてぃさくとぅ、うぬ青年(にーせー)とぅ娘子(うぃなぐんぐゎー)、男(いきが)とぅ女(いなぐ)ぬいーくとぅしまち後(あとぅ)ん、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ、ぬんさんなたくとぅ、うぬ青年(にーせー)が、「今夜(ちゅーゆる)やしぐ寝(に)んだりみ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、娘子(うぃなぐんぐゎー)、「なー、肝(ちむ)ぬわさみちゃびらん。」でぃち、舌(しば)治(のー)てぃ、肝(ちむ)ん落(う)てぃ付(ち)ちさーに、当(あ)たい前(めー)ぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)なたくとぅ、親達(うやぬちゃー)とぅ、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「私達(わったー)助(たし)きてぃくぃみせーくとぅ、貴方(うんじゅ)が欲(ふ)さみせーし、ぬーやてぃんうさぎーびーくとぅ、娘子(うぃなぐんぐゎ)妻(とぅぢ)しくぃみそーり。」んち頼(たる)でぃ、夫婦(みいとぅんだ)なたんでぃ。〔共通語訳〕 昔、そのようなことがあったという話なんだが、屠殺業者とは、屠殺場で牛や馬、豚などを殺して、みんなに持たす仕事をする人達の事を屠殺業者というのだが、昔、親の代から屠殺業者をして、大変お金を儲けて、財産も多く、家も綺麗な家を造って暮らしている家庭があったそうだが、それでその家庭には娘が一人生まれて、後は生まれていないが、その娘は大変な美人だったそうだが、年頃になっても誰も貰い手が来ない。その娘は美人ではあっても、平常の様子を見ていると、綺麗な服装もせず、仕事の手伝いなども一生懸命頑張って、親孝行もよくやっている真面目な娘だとの評判も出ているが、一人も嫁にさせて下さい、嫁に来て下さいという人はいなかったのです。何故かともうしますと、昔から牛でも豚でも、あるいはその他の家畜を千匹殺すと、人間一人殺したのと同等の罪罰が当たると言われているが、その家庭、親の代からの屠殺業者だから、長らくその仕事をしてもう、幾ら家畜を殺したかわからないくらいだから、金持ちになり、財産も多いが、みんな家畜を千匹殺すと、人一人殺したのと同等の罪罰が当たるということを知っているので、なかなか娘を貰いに行く人はいませんので、その家の主人は、「この様ではどうにもできない。」と思い、「財産の全部か、あるいは半分でも分けてあげるから。また、娘の一生涯の食い扶持を持たせていかすから、妻にしても良いと思う青年がいたら、話しに来てくれ。」と、隣近所に話をすると、噂が広まって、隣村の人達はその話を聞いて、「そうかそうか、私達には食べ物も少なく、何にも無いから、そこの婿になり、財産の半分でも三分の一でも良いから分けて取らせるなら、婿になっても良い。」というので、その家に行き話し合って、親達とは別棟に娘と一緒に寝たのです。そして、夜中になりますと、その娘は男を可愛がり、夫婦の契りを終わって後、男が寝込んでしまいますと、その娘は舌を出して、男の体を舌で舐めたのです。だが、普通の人が舌で舐めると、もう、とても面白い筈ですが、彼女の舌は牛の舌のようにして長く、また、牛の舌のようにざらざらしていますので、後は鳥肌が立ち、そこから逃げて、もう彼女とは、寝ては暮らせないようになり、自分の家に帰って行ったのですが、家に帰ってからその男は、「ああ、もう、寝るのは寝たが、これはもう妻にするわけにはいかない、また私がもしこの話を出して世間に知らせたら大変だ、また、彼女が牛だとみんなに話したら一大事なことになる。」と思って黙って、「私などはそこの婿にはなれない。」と話しますと、その後、代わる代わる何人も婿になろうとして行くのですが、みんな戻ってくるので、ある一人の青年の親は、「私達は貧乏者だから、あそこの婿になると少しは苦労しても当たり前で、大金持ちの婿は難儀するのは当然だよ。」と話しましたが、「そうでなくて、あそこは、首里(しゅり)、那覇(なは)で、何事もこうだああだとやがましくて、到底あそこで暮らすことはできない。」と言いますので、「ああ、もう、それなら仕方がないさ。」という事で、また、他の人がその話を聞いて、「あの青年が戻って来て、あれもできそうにない。」という話が出ますと、また別の青年達が行くのですが、みんな戻ってきたのです。すると今度は、他の村の青年が行っているのですが、その娘は同様に夫婦の営みをした後、男が寝入りますと舌で舐めたのです。するとその男が、「どうしたの、あなたの舌は」と言いますと、「ええ、もう私はこのようになり、誰が来て泊まっても一緒になれないが、他の男達はそのようにしますとすぐ逃げて行って、その時から物も言いませんが、あなたは、『何故そのようになったのか。』と一言でも話して、私に物を言って下さいましたら、ずうっと居て下さい。」と頼みましたが、「そうか、だが私でも毎夜このような事をされては暮らしていけないから別れていくが、あなたの父親に一言斯く言いなさい。人間は食べ物を食べるのも一番だが、心も第一、第一というのは非常に大切なものだよ、という意味もあるが、第一というのは一番初めと言って、人間の一番初めは心だよ、第一という言葉には大切なものという意味と、初まりという意味の二つあるから、間違えないように心が第一とあなたの父親に言いなさいね。」と言って、その男も帰って行きましたので、その娘は泣きながら自分の父親に、「あの男がこのように話して、自分の家に帰って行きました。」と言いますと、「ええ、そうだったのか、なるほど、屠殺業者は家畜を千匹殺したら人一人殺したのと同等の罪罰が当たると言うから、私はもうこの仕事を止めなくてはいけない。」と言って、止めて後から、その話をした青年の家を尋ねて行って、「実はもう、このようにこのように娘が話して聞かせてくれたので、今までの仕事を止めましたよ、よく教えてくれて有り難う。」と、お礼を言いますと、「ああ、それはですね、人間の位においては、武士が上で、百姓(ひゃくそー)は野菜や千草と沖縄では言いますが、仕事の位は、一、農作、二、学問、そして、九、念佛者(にんぶちゃー)、十、屠殺業者と、その仕事の位は、屠殺業者はもう最低の一番下でございます。人、人間は心が第一、考えてみなさい、心があれば農業者や商売人にもなれます、人、人間、心が第一です。第一というのは大変大切なものという意味もありますが、一番だよという意味もあります、だから私は第一という言葉は大変良い言葉だと思っています。九、念佛者、十、屠殺業者を止められて、今後、あなたがもしも農業をなさると心掛けますと、即ち、一、農作、それで一番の仕事にも着けます。」と話しますと、その父親は、「大変有り難う、今後は貴方が教えてくれた通りにしようと思うから、時々は遊びにおいで、来る時にはお礼をするよ。」と話して帰っていきました。それからしばらくして、その青年が遊びに行きますと、その娘も、みんな喜んで、その夜、娘が、「私にも、また、親達にも良いことを教えて下さって、大変有り難うございました。」と、涙をポロポロ落としながら泣きますと、とても可哀相になり、「よし、それもこれも何かの引き合わせだろうから。」と言って、「今夜は私が泊まっていくよ。」と話して泊まることになりますと、その親達も娘も非常に喜んで、大変有り難うございますという気持ちと、屠殺業者を止めたという事で元祖の位牌に向かってみんなで合掌してから寝たのです。そして、青年も娘と一緒に寝たのです。そして二人、男と女の営みの後、その娘が何もしないので、青年が、「今夜は何もしないで寝れるか。」と言いますと、娘は、「何の胸騒ぎもいたしません。」と話して舌も治り、心も落ちついて普通の娘になりましたので、親達と娘が、「私達を救って下さったお礼に、あなたの欲しいもの、何でも差し上げますから、どうか娘を妻にして下さい。」と頼みましたので、青年も承知して夫婦になったそうです。平成9年2月17日 高江洲亮翻字 T3B1
全体の記録時間数 10:13
物語の時間数 10:13
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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