〔方言原話〕 昔(んかし)、那覇(なーふぁ)んかい親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)ちちょーみせーる裕福者(うぇーきんちゅ)ぬめんせーたんでぃ。あんし、うぬ家庭(ちねー)や、男主人(たーりー)ん女主人(あやー)ん、手墨(てぃしみ)、学問(がくむん)、大変(じこー)優(すぐ)りみそーち、また、武芸(ぶじー)ん達者なみそーちちゃくとぅ、う供(とぅむ)ぬ人達(ちゅぬちゃー)んまんでぃ、うりから、女中達(じょーしちゃーたー)、下男達(じにんぬちゃー)んまんどーるばーやしが、うぬ女主人(あやー)んとぅくまんかいや、皆(んな)が食物(はんめー)煮(にー)る女中(じょーしちゃー)ん、また、あり、くりする女中(じょーしちゃー)ん居(う)い、女主人(あやー)ぬ側(すば)うてぃ、みーかんげーする召使(めーぢけー)ん置(う)ちょーてぃ、あり、くり、言(いー)付(ち)きてぃ、使(ちか)とーたんでぃ。あんしんまぬ、御供達(うとぅむぬちゃー)や、武芸(ぶじー)教(なら)たい、手墨(てぃしみ)学問(がくむん)から礼儀作法(りーじさふー)習(なら)いがちーなー使(ちか)っとーるばーやしが、ある時(とぅち)、んまんかい召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎ)や、女主人(あやー)側(すば)ぬ室(ぢゃー)んかい常時(ちゃー)居(う)とーてぃ、昼(ふぃる)やてぃん夜(ゆる)やてぃん、ぬーがな用事(ゆーじゅ)ぬ有(あ)ねー、ちゃー、女主人(あやー)とぅ一緒(まじゅん)でぃるばーやしが、うぬ女主人(あやー)ん、学問(がくむぬ)ん、知恵(ぢんぶぬ)ん、まんどーみせーる人(ちゅ)やてぃ、んまんかい使(ちか)っとーる一人(ちゅい)ぬ武士(さむれー)ぬ青年(にーせー)が、召使(めーぢけー)さっとー娘子(うぃなぐんぐゎ)、是非(じふぃ)妻(とぅぢ)しゆるやるんち、命(ぬち)身(みー)賭(か)てぃやてぃん、恥ん切(ち)り捨(し)てぃらわん、ぬーやらはんしむくとぅんち、さーなかい、そーしが、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん、なー、また、女主人(あやー)が何事(ぬんくぃ)教(ならー)ち仕込(しく)でーくとぅ、なー、んまんかい居(う)る人達(ちゅぬちゃー)や誰(たー)やてぃんぬじゅまんせー居(う)らんあたい、顔(ちら)かーぎん美(ちゅら)さい、知恵(ぢんぶぬ)ん有(あ)い、志情(しなさき)んまんどーくとぅ、誰(たー)からんかなさっとーくとぅ。」ちゃーがなしくぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)妻(とぅぢ)さわるやる、んちさーに、昼食(あさばん)しまち、うり片付(かたぢ)きてぃ、掃除んぬーんし、ぬーんくぃ終(う)わてぃ、女主人(あやー)室(ぢゃー)から出(んぢ)てぃ、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(い)ちゅんちしーねー、うぬ歩(あっ)ちゅる通路(とぅーいみちー)んかい、下半身(がまくらからしちゃ)まる開(あ)きーさーなかい、自分(どぅー)ぬ逸物(うぃきが)、糸(いーちゅ)し縛(くん)じゃーなかい、両方(どぅーほー)んかい引(ふぃ)っ張(ぱ)てぃ、仰向(まーはなちゃー)し、寝(に)てぃさくとぅ、うぬ召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎー)うり見(んー)ぢゃーなかい、物(むぬ)ん言(いー)ゆーさんなやなかい、うぬ糸(いーちゅー)解(はん)ち通(とー)てぃ、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(いん)ぢゃくとぅ、うぬ青年(にーせー)や追(うー)てぃ行(い)ちゃーなかい、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ恥(ふぃちぢ)うかなさくとぅ、うぬ女主人(あやー)や、「今(なま)出(んぢ)てぃ行(い)ちゅたるむん、あんしガサガサし、うす泣(な)ち声(ぐぃー)ん聞(ち)かりーしが、ちゃーさるばーがやー。」んち、考(かんげ)えとーいねー、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ女主人(あやー)ぬ室(ぢゃー)んかいシクシクさがなーちゃーに、「なー、私(わん)ねー、くまぬ召使(めーぢけー)止(や)めらちくぃみそーり。」んち、さくとぅ、「ぬーが。」んでぃち問(とー)たくとぅ、「じちぇーなーかんかんし、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(い)ちゅんでぃさびたくとぅ、くんぐとぅないびたん。私(わん)ねーなー恥(ふぃちぢ)うかさってぃ、くまねー居(う)らりびーらん。」ち、話いさくとぅ、女主人(あやー)や、「あぬ青年(にーせー)がうぬ様な事(くとぅ)すたんなー、あれー、私達(わったー)男主人(たーりー)が大変(じこー)褒(ふ)みとーる青年(にーせー)、後々(あとぅあとぅ)、ちゃんぐとーるいー人(ちゅ)がないらんち、肝(ちむ)入(いっ)てぃ、色々(いるいる)教(ならー)ちょーみせーしが、ありがうんぐとーる事(くとぅ)すんでちぇー考(かんげ)えーららん。あんやたら、とー呼(ゆ)でぃ来(くー)わ、私(わー)が話い有(あ)くとぅんち呼(ゆ)でぃ来(くー)わ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、うぬ召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎ)、泣く泣く行(い)ちゃーなかい、「女主人(あやー)が御呼(うゆ)びやくとぅ、来(ゆしりー)るぐとぅ。」んちさくとぅ、うりが後(あとぅ)追(うー)てぃ行(い)ちゃーなかい、「何事(ぬーぐとぅ)でーびるが。」んちさくとぅ、「今(なま)さちうりから話い聞(ち)ちゃしが、やーや、くんぐとぅ、くんぐとぅし恥(はじ)切(ち)りてぃ、うりが恥(ふぃちぢ)うかちゃんでぃなー。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「うー、間違(かわえー)ねーやびらん。」でぃち返答(ふぃんとー)さくとぅ、「ぬーがぬーんち、うぬ様な事(くとぅ)すが、話いしーるんせー、恥(はぜ)かかてぃんしむたるむんぬ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「私(わん)ねー、恥(はじ)ん、ぬーんいとぅいびらん、やしが、打ち首なてぃんしまびーくとぅ、私(わー)話い聞(ち)ちくぃみそーり、私達(わったー)や、元(むとー)、親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)んちちゃる家柄(やーがら)やしが、うぬ後(あとぅ)、むる、上(うぃー)かえー上がらん、ちゃっさはまてぃん上がらんやーなかい、後(あとー)くまうてぃ、色々(いるいる)習方(なれーかた)そーいびーしが、私(わん)ねー、くぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)、私(わー)が科(こー)当(あ)たてぃるむんやれー、くぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん科(こー)当(あ)たいるあたい、ちう、知恵(ぢんぶん)持(むっ)ちょーる娘子(うぃなぐんぐゎ)やいびーくとぅ、是非(じふぃ)妻(とぅぢ)しはるやるんち、むしか、あんにんねーんむんやれー、恥(はじ)ん切(ち)り捨(し)てぃてぃ、命(ぬち)ん捨(し)てぃーらわんしむくとぅんちるあんぐとぅさびたる。」んち話いうなきたくとぅ、女主人(あやー)や、「い覚悟(かくぐ)やん、私達(わったー)男主人(たーりー)が褒(ふ)みーしん、無理(むれー)ねーらん。とー、あんすらー、やーが科(こー)当(あ)たる間(うぇー)かや、私(わー)が召使(めーぢけー)そーる娘子(うぃなぐんぐゎ)や、私(わー)が預(あじ)かとーちゅくとぅ、うりが親達(うやぬちゃー)や今(なま)、親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)ちちょーみせーん、やーん科(こー)当(あ)たいるんせー、何時(いち)がなー、親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)ちちゅくとぅ、今(なまー)及(うゆ)ばらんでぃちる、あんしさる筈(はじ)やしが、後々(あとぅあとぅ)、やーが科(こー)当(あ)たゆーするむんやらー、私(わー)が仲人(なかだち)さーなかい、やー妻(とぅぢ)なすくとぅ、やーや、学問(がくむん)、武芸(ぶじー)、うみはまり。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「にふぇーでーびる。」んち、御辞儀(ぐりー)し、出(んぢ)てぃ行(いん)ぢゃくとぅ、今度(くんどー)うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)んかい、「とー、やーや、やー男(いきが)ぬ命(ぬち)身(みー)捨(し)てぃてぃまでぃんでぃち、思(うむ)とーしが、やーがむしか夫(うとぅ)せーやーんでぃ思(うむ)とーる男(いきが)ぬ居(う)るむんやれー、やーやありがぐとぅし恥(はじ)ん、命(ぬち)ん捨(し)てぃてぃやてぃん、うぬ男(いきが)んかい、自分(どぅー)ぬ思(うむ)い、遂(とぅ)じゆーすみ。」んでぃち問(とー)たくとぅ、うぬ召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎー)、「私(わー)がわっさいびーたん。」んでぃち、御辞儀(ぐりー)さくとぅ、「ありとー、約束(やくしく)せーくとぅ、やーや、くまうてぃ仕事(しぐとぅ)うみはまり。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「うー。」んち、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(いん)ぢ、仕事(しぐとぅ)うみはまてぃさくとぅ。うぬ青年(にーせー)ん、うーはまい、手墨(てぃしみ)、学問(がくむん)から、礼儀作法(りーじさふー)ん、武芸(ぶじー)ん習(なら)てぃさくとぅ、一番科(いちばんこー)、二番科(にばんこー)や当(あ)たゆーさんたしが、三番科(さんばんこー)当(あ)たてぃさくとぅ、うぬ女主人(あやー)やわかてぃるめんせーくとぅ、「とー、一番、二番(にば)のーならんてぃん、三番までー番(ばん)ぬ内(うち)やくとぅ、ゆーせーさ。」んち褒(ふ)みたくとぅ、男主人(たーりー)が、「上出来(したい)、上出来(したい)、上出来(したい)、女主人(あやー)あんし。」んち、男主人(たーりー)ん女主人(あやー)ん自分達(どぅーなーたー)が教(ならー)ちぇーる弟子(でぃし)ぬ出世(りっしん)し、三番までー番(ばん)ぬ内(うち)んち、番付(ばんぢき)しみそーやーなかいに、二人(たい)や夫婦(みいとぅんだ)なちゃんでぃ。後(あとぅ)から、親方部(うぇーかたび)やぬ位(くれー)ちちさくとぅ、うぬ話いや、女主人(あやー)から、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ父親(いきがぬうや)、母親(いなぐぬうや)んかい話いさくとぅ、「命(ぬち)身(みー)賭(か)きーんでぃせー、心(くくる)有(あ)るむんぬする事(くとぅ)やくとぅやー。」んち、婿(むーく)褒(ふ)みとーみせーたんでぃ。うぬ後(あとぅ)、夫婦(みいとぅんだ)なとーる二人(たい)、前(めー)ぬ、御主人達(ぐすじんぬちゃー)家(やー)んかいゆしりてぃさくとぅ、男主人(たーりー)ん、女主人(あやー)ん、年(とぅし)寄(ゆ)とーみせーしが、大変(じこー)うっさしみそーち、色々(いるいる)昔話(んかしばなし)いするうちに、女主人(あやー)が、「やーや、何故(ぬーんち)あぬ様な事(くとぅ)さが、命(ぬち)身(みー)賭(か)きとーんでぃせーわかいしが。」んち、話いさーに、「むしか、あぬ時(ばー)に、私(わー)が男主人(たーりー)ぬ前(めー)んかい話いし、公儀(くじ)んかい持(む)ち出(んぢゃ)しーねー、打ち首か島流しぬ罪(とぅが)やしが、うぬ時(ばー)ねー、申し開(わ)けーちゃーしすんでぃちやたが。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「なー、うぬ時(ばー)ねー、『人(ふぃとぅ)突(ち)ちゅる牛(うせー)、繋(ちみ)たしる罪(とぅが)い、解(はん)ちゃしる罪(とぅが)い。』んでぃ言(いゅ)る考(かんげ)えやいびーたん。」でぃち話いさくとぅ、だー、夫婦(みいとぅんだ)なてぃ、かーま後(あとぅ)からるやくとぅ、うぬ妻(とぅぜー)微笑(うすわれー)し、女主人(あやー)とぅ夫(うとぅ)ぬ顔(ちら)見(ん)ぢゃーに、「うー。」んち笑(わら)たくとぅ、三人(みっちゃい)うんにんぬ事(くとぅ)、思(う)び出(んぢゃ)ち、笑(わら)てぃさくとぅ、年(とぅし)寄(ゆ)とーみせーる女主人(あやー)や、「うっさ考(かんげ)えーいる頭(ちぶる)ぬ有(あ)てーくとぅる、親方(うぇーかた)んなてーっさみ。」んち笑(わら)とーみせーたんでぃ笑い話るやしが。男(いきが)ぬ命(ぬち)身(みー)振(ふ)捨(し)てぃてぃする、女(いなぐ)んかいぬ思(うむ)いや、親方(うぇーかた)なてぃから話いぬ出(んぢ)てぃ、「人(ふぃとぅ)突(ち)ちゅる牛(うせー)、繋(ちみ)たしる罪(とぅが)い、解(はん)ちゃしる罪(とぅが)い。」んち、だー、うれー、繋(くん)だっとーる牛(うし)んかい諺(たとぅい)ねー、なー、うれー、人(ちゅ)突(ち)ちゅくとぅ、解(はん)すしがるわっさる、んでぃるくとぅなとーしが、あねーあらん、うぬあたいやいびーんでぃる心(くくる)持(む)ちるやるんでぃる話い、笑(わら)いがちーなー話いさんでぃる話い。〔共通語訳〕 昔那覇(なは)の方に、親方部(うぇーかたび)の位に就いている、とても裕福な過程がありました。そして、その家庭は、男主人もおんな女主人も、学問や諸知識に優れた方でありながら、武芸の方も達者な方だったのですから、お供をする人達も多く、それから、女中達、下男達も大勢いるのですが、その女主人のところには、みんなの食べ物を煮たり炊いたりする下女や、これやあれやといろいろ準備する女中達もいれば、女主人の側で身のまわりの事をする召使もいて、これ、あれと言いつけて使っていたのです。そして、そのお供達は、武芸を教わったり、学問から、礼儀作法等を教わりながら使われているのですが、ある時、そこに召使されている娘子は、女主人の室の側の室に常時いて、昼でも夜でも何か女主人に用がある時には、いつも女主人と一緒に行くのですが、その女主人も、大変、学問や知恵人情も優れた方だったのです。そこに使われている一人の武士の青年が、召使に働いている娘をぜひ妻にしたいと考え、身命を賭けて、恥も切り捨て何がなんでもと思っているのですが、どうしようもありません。その娘さんはまた、女主人がいろいろな物事を教えていますので、教養も高く仕込まれているので、そこにいる人達は誰もが彼女を思慕していたのです。顔だちも綺麗で、心も優しく、人情も豊富なので、誰からも可愛がられていますので、何とかしてこの娘を妻にしようと思い、昼食が終わり、その片付けや掃除等もみな済ましてから、女主人の室から出てきて、自分の室に行こうとしますと、その通る通路に、下半身を全部広げて、自分の男性の象徴を糸で縛って両方に引っ張り、仰向けに寝ている男がいますので、その召使をしている娘子は、その有り様を見て驚嘆して、声も出なくなってしまい、その糸を解いて通り、自分の室に行きますと、その青年がかけて来て、その娘を無理に凌辱してしまったのです。すると、隣の女主人は、「今出ていったのだが、なんであんなにがさがさして、また、わずかな泣き声も聞こえるがどうしたのだろう。」と考えていると、その娘さんは、女主人の室にしくしく泣きながら入ってきて、「もう私を、ここの召使を止めさせてください。」ともうしますと、「どうして。」と問いますと、「実はこうこうして、自分の室に行きますと、このような事になりました。私はもう凌辱されましたので、ここにいるわけには参りません。」と話しますと、女主人は、「あの青年がそのようなことをするとは考えられない、彼は私の主人が大変褒めている青年で、後々は何様な人物になるかと心を込めていろいろ教えいらっしゃるが、彼がそのような事をするとは考えられない、そうだったらよろしい、呼んでおいで、私が話があると言って呼んでおいで。」と言われましたので、その召使されている娘さんは、泣く泣く彼のところに行って、「女主人がお呼びですから来ますように。」と言いますと、彼女の後を追って行って、「何事でございますか。」と申しますと、「今さっき、彼女から話を聞いたが、君はこうこうして恥も外分もなく、彼女を凌辱したそうだねー。」と言いますと、「間違いありません。」と返答致しますと、「なんで、何故、そのような事をするのだ、話をすれば恥はかかんでも済みよったのに。」と申しますと、「私はもう恥も何も構いませんですが、打ち首の罪になっても良いですから、私の話を聞いて下さい。私達の家柄は、え、親方部の位に就いた家柄ですが、その後落ちぶれて上にあがれず、幾ら頑張っても上位にあがることができないので、後はここでいろいろな事を習っているのですが、私は、この娘さんは、私がもし科に当たる事ができたら、この娘さんも科に当たるくらいの教養、知識を持った娘さんですから、ぜひ妻にしたいと思っています。もしそれができないという事になりますと、私は恥も捨て命を捨てても良いと思って、そのような事を致しました。」と、お話申し上げますと、女主人は、「なるほど、良い覚悟だ。私の主人が褒めるのも無理はない。よし、それでは、あなたが科に当たる間は、私が召使している娘は、私が預かっておく。彼女の両親は今親方部の位に就いておられる。あなたも科に当たれば、いつかは親方部の位に就く筈である。今は及びも着かないと思って、そのような事をした筈だから、後々あなたが科に当たるなら、私が仲人になってあなたの妻にさせるから、あなたは学問、その他に頑張りなさい。武芸等にも精を出しなさい。」と申しましたので、「有り難うございます。」と申し上げて室を出て行きました。すると今度は娘さんに、「よいか、あなたはね、男が身命を捨ててまでもと、恋い慕っているが、あなたがもし、夫にしたいと思う男がいたならば、このように恥も命も捨て、その男に自分の思いを届ける事ができるか。」と問いますと、その召使されている娘さんは、「私がわるうございました。」とお辞儀しますと、「彼とは約束してありますから、あなたはここで仕事を頑張りなさい。」と申されますと、「はい。」と言って、自分の室に行って仕事に精出したのです。その青年も一生懸命になって、学問から礼儀作法、武芸等精進して行きますと、一番科、二番科には当たりませんでしたが、三番科に当たりますと、女主人はもうわかっていますから、「おお、一番、二番には当たらなくても、三番までは番の内だ、よくやった。」と褒めますと、これを聞いた男主人は、「上出来、上出来、上出来だよ家内、その調子だ。」と、男主人も、女主人も、自分達が指導した弟子が出世したのを、三番までは番の内と番付なされて、その後、二人は夫婦にしたそうです。そしてその後に親方部(うぇーかたび)の位に着きますと、その話は女主人から娘の父親、母親に話しますと、「身命を賭すというのは、心あるもののすることだからねえ。」と、婿を褒めておられたとのこと。後、夫婦になった二人は、前の主人の家に行きますと、男主人も女主人も年を召されておりますが、大変喜ばれて、いろいろと昔話をするうちに、女主人が、「あなたは何故あのような仕様をしたのか、身命を賭しているのはわかるが。」と申しながら、「私がもしあの時主人に話して、主人が公儀にでも持ち出すと、打ち首か島流しの罪になるが、そうなったら何と申し開きするつもりだったのですか。」と言われますと、その夫は、「もうその時は、『人を突く牛は、繋いだ者が罪か、解いた者が罪か。』と言うつもりでした。」と申しますと、もうそれは、夫婦になってずうっと後の事ですから、その事は微笑して、女主人と夫の顔を見比べて、「はい。」と笑いますと、三人ともその時の事を思い出して笑っていました。すると、女主人が、「それだけ考える頭があったからこそ、親方になれたのだ。」と笑っておられました。男が命を振り捨てする女への思いは、親方になってから話が出て、「人を突く牛は、繋いだ者が罪か、解いた者が罪か。」それは繋いだ牛にたとえると、それはもう、人を突くのであるから、解く者が悪いという意味になっているが、実はそうではなくて、それくらいに思い詰めていましたという心持ちを表しているということ話し、笑いながら話しあっておられたという話。平成9年2月17日 高江洲亮翻字 T3A3
| レコード番号 | 47O170022 |
|---|---|
| CD番号 | 47O17C003 |
| 決定題名 | 繋いだ牛(方言) |
| 話者がつけた題名 | 繋いだ牛(ちみてぇーるうし) |
| 話者名 | 阿波根昌栄 |
| 話者名かな | あはごんしょうえい |
| 生年月日 | 19210309 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県中頭郡北谷町字上勢頭 |
| 記録日 | 19970217 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | T03A03-T03B01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 笑話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 『想い出の昔話』 |
| キーワード | 糸,科 |
| 梗概(こうがい) | 〔方言原話〕 昔(んかし)、那覇(なーふぁ)んかい親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)ちちょーみせーる裕福者(うぇーきんちゅ)ぬめんせーたんでぃ。あんし、うぬ家庭(ちねー)や、男主人(たーりー)ん女主人(あやー)ん、手墨(てぃしみ)、学問(がくむん)、大変(じこー)優(すぐ)りみそーち、また、武芸(ぶじー)ん達者なみそーちちゃくとぅ、う供(とぅむ)ぬ人達(ちゅぬちゃー)んまんでぃ、うりから、女中達(じょーしちゃーたー)、下男達(じにんぬちゃー)んまんどーるばーやしが、うぬ女主人(あやー)んとぅくまんかいや、皆(んな)が食物(はんめー)煮(にー)る女中(じょーしちゃー)ん、また、あり、くりする女中(じょーしちゃー)ん居(う)い、女主人(あやー)ぬ側(すば)うてぃ、みーかんげーする召使(めーぢけー)ん置(う)ちょーてぃ、あり、くり、言(いー)付(ち)きてぃ、使(ちか)とーたんでぃ。あんしんまぬ、御供達(うとぅむぬちゃー)や、武芸(ぶじー)教(なら)たい、手墨(てぃしみ)学問(がくむん)から礼儀作法(りーじさふー)習(なら)いがちーなー使(ちか)っとーるばーやしが、ある時(とぅち)、んまんかい召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎ)や、女主人(あやー)側(すば)ぬ室(ぢゃー)んかい常時(ちゃー)居(う)とーてぃ、昼(ふぃる)やてぃん夜(ゆる)やてぃん、ぬーがな用事(ゆーじゅ)ぬ有(あ)ねー、ちゃー、女主人(あやー)とぅ一緒(まじゅん)でぃるばーやしが、うぬ女主人(あやー)ん、学問(がくむぬ)ん、知恵(ぢんぶぬ)ん、まんどーみせーる人(ちゅ)やてぃ、んまんかい使(ちか)っとーる一人(ちゅい)ぬ武士(さむれー)ぬ青年(にーせー)が、召使(めーぢけー)さっとー娘子(うぃなぐんぐゎ)、是非(じふぃ)妻(とぅぢ)しゆるやるんち、命(ぬち)身(みー)賭(か)てぃやてぃん、恥ん切(ち)り捨(し)てぃらわん、ぬーやらはんしむくとぅんち、さーなかい、そーしが、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん、なー、また、女主人(あやー)が何事(ぬんくぃ)教(ならー)ち仕込(しく)でーくとぅ、なー、んまんかい居(う)る人達(ちゅぬちゃー)や誰(たー)やてぃんぬじゅまんせー居(う)らんあたい、顔(ちら)かーぎん美(ちゅら)さい、知恵(ぢんぶぬ)ん有(あ)い、志情(しなさき)んまんどーくとぅ、誰(たー)からんかなさっとーくとぅ。」ちゃーがなしくぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)妻(とぅぢ)さわるやる、んちさーに、昼食(あさばん)しまち、うり片付(かたぢ)きてぃ、掃除んぬーんし、ぬーんくぃ終(う)わてぃ、女主人(あやー)室(ぢゃー)から出(んぢ)てぃ、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(い)ちゅんちしーねー、うぬ歩(あっ)ちゅる通路(とぅーいみちー)んかい、下半身(がまくらからしちゃ)まる開(あ)きーさーなかい、自分(どぅー)ぬ逸物(うぃきが)、糸(いーちゅ)し縛(くん)じゃーなかい、両方(どぅーほー)んかい引(ふぃ)っ張(ぱ)てぃ、仰向(まーはなちゃー)し、寝(に)てぃさくとぅ、うぬ召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎー)うり見(んー)ぢゃーなかい、物(むぬ)ん言(いー)ゆーさんなやなかい、うぬ糸(いーちゅー)解(はん)ち通(とー)てぃ、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(いん)ぢゃくとぅ、うぬ青年(にーせー)や追(うー)てぃ行(い)ちゃーなかい、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ恥(ふぃちぢ)うかなさくとぅ、うぬ女主人(あやー)や、「今(なま)出(んぢ)てぃ行(い)ちゅたるむん、あんしガサガサし、うす泣(な)ち声(ぐぃー)ん聞(ち)かりーしが、ちゃーさるばーがやー。」んち、考(かんげ)えとーいねー、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ女主人(あやー)ぬ室(ぢゃー)んかいシクシクさがなーちゃーに、「なー、私(わん)ねー、くまぬ召使(めーぢけー)止(や)めらちくぃみそーり。」んち、さくとぅ、「ぬーが。」んでぃち問(とー)たくとぅ、「じちぇーなーかんかんし、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(い)ちゅんでぃさびたくとぅ、くんぐとぅないびたん。私(わん)ねーなー恥(ふぃちぢ)うかさってぃ、くまねー居(う)らりびーらん。」ち、話いさくとぅ、女主人(あやー)や、「あぬ青年(にーせー)がうぬ様な事(くとぅ)すたんなー、あれー、私達(わったー)男主人(たーりー)が大変(じこー)褒(ふ)みとーる青年(にーせー)、後々(あとぅあとぅ)、ちゃんぐとーるいー人(ちゅ)がないらんち、肝(ちむ)入(いっ)てぃ、色々(いるいる)教(ならー)ちょーみせーしが、ありがうんぐとーる事(くとぅ)すんでちぇー考(かんげ)えーららん。あんやたら、とー呼(ゆ)でぃ来(くー)わ、私(わー)が話い有(あ)くとぅんち呼(ゆ)でぃ来(くー)わ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、うぬ召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎ)、泣く泣く行(い)ちゃーなかい、「女主人(あやー)が御呼(うゆ)びやくとぅ、来(ゆしりー)るぐとぅ。」んちさくとぅ、うりが後(あとぅ)追(うー)てぃ行(い)ちゃーなかい、「何事(ぬーぐとぅ)でーびるが。」んちさくとぅ、「今(なま)さちうりから話い聞(ち)ちゃしが、やーや、くんぐとぅ、くんぐとぅし恥(はじ)切(ち)りてぃ、うりが恥(ふぃちぢ)うかちゃんでぃなー。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「うー、間違(かわえー)ねーやびらん。」でぃち返答(ふぃんとー)さくとぅ、「ぬーがぬーんち、うぬ様な事(くとぅ)すが、話いしーるんせー、恥(はぜ)かかてぃんしむたるむんぬ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「私(わん)ねー、恥(はじ)ん、ぬーんいとぅいびらん、やしが、打ち首なてぃんしまびーくとぅ、私(わー)話い聞(ち)ちくぃみそーり、私達(わったー)や、元(むとー)、親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)んちちゃる家柄(やーがら)やしが、うぬ後(あとぅ)、むる、上(うぃー)かえー上がらん、ちゃっさはまてぃん上がらんやーなかい、後(あとー)くまうてぃ、色々(いるいる)習方(なれーかた)そーいびーしが、私(わん)ねー、くぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)、私(わー)が科(こー)当(あ)たてぃるむんやれー、くぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん科(こー)当(あ)たいるあたい、ちう、知恵(ぢんぶん)持(むっ)ちょーる娘子(うぃなぐんぐゎ)やいびーくとぅ、是非(じふぃ)妻(とぅぢ)しはるやるんち、むしか、あんにんねーんむんやれー、恥(はじ)ん切(ち)り捨(し)てぃてぃ、命(ぬち)ん捨(し)てぃーらわんしむくとぅんちるあんぐとぅさびたる。」んち話いうなきたくとぅ、女主人(あやー)や、「い覚悟(かくぐ)やん、私達(わったー)男主人(たーりー)が褒(ふ)みーしん、無理(むれー)ねーらん。とー、あんすらー、やーが科(こー)当(あ)たる間(うぇー)かや、私(わー)が召使(めーぢけー)そーる娘子(うぃなぐんぐゎ)や、私(わー)が預(あじ)かとーちゅくとぅ、うりが親達(うやぬちゃー)や今(なま)、親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)ちちょーみせーん、やーん科(こー)当(あ)たいるんせー、何時(いち)がなー、親方部(うぇーかたび)ぬ位(くれー)ちちゅくとぅ、今(なまー)及(うゆ)ばらんでぃちる、あんしさる筈(はじ)やしが、後々(あとぅあとぅ)、やーが科(こー)当(あ)たゆーするむんやらー、私(わー)が仲人(なかだち)さーなかい、やー妻(とぅぢ)なすくとぅ、やーや、学問(がくむん)、武芸(ぶじー)、うみはまり。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「にふぇーでーびる。」んち、御辞儀(ぐりー)し、出(んぢ)てぃ行(いん)ぢゃくとぅ、今度(くんどー)うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)んかい、「とー、やーや、やー男(いきが)ぬ命(ぬち)身(みー)捨(し)てぃてぃまでぃんでぃち、思(うむ)とーしが、やーがむしか夫(うとぅ)せーやーんでぃ思(うむ)とーる男(いきが)ぬ居(う)るむんやれー、やーやありがぐとぅし恥(はじ)ん、命(ぬち)ん捨(し)てぃてぃやてぃん、うぬ男(いきが)んかい、自分(どぅー)ぬ思(うむ)い、遂(とぅ)じゆーすみ。」んでぃち問(とー)たくとぅ、うぬ召使(めーぢけー)さっとーる娘子(うぃなぐんぐゎー)、「私(わー)がわっさいびーたん。」んでぃち、御辞儀(ぐりー)さくとぅ、「ありとー、約束(やくしく)せーくとぅ、やーや、くまうてぃ仕事(しぐとぅ)うみはまり。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「うー。」んち、自分(どぅー)ぬ室(ぢゃー)んかい行(いん)ぢ、仕事(しぐとぅ)うみはまてぃさくとぅ。うぬ青年(にーせー)ん、うーはまい、手墨(てぃしみ)、学問(がくむん)から、礼儀作法(りーじさふー)ん、武芸(ぶじー)ん習(なら)てぃさくとぅ、一番科(いちばんこー)、二番科(にばんこー)や当(あ)たゆーさんたしが、三番科(さんばんこー)当(あ)たてぃさくとぅ、うぬ女主人(あやー)やわかてぃるめんせーくとぅ、「とー、一番、二番(にば)のーならんてぃん、三番までー番(ばん)ぬ内(うち)やくとぅ、ゆーせーさ。」んち褒(ふ)みたくとぅ、男主人(たーりー)が、「上出来(したい)、上出来(したい)、上出来(したい)、女主人(あやー)あんし。」んち、男主人(たーりー)ん女主人(あやー)ん自分達(どぅーなーたー)が教(ならー)ちぇーる弟子(でぃし)ぬ出世(りっしん)し、三番までー番(ばん)ぬ内(うち)んち、番付(ばんぢき)しみそーやーなかいに、二人(たい)や夫婦(みいとぅんだ)なちゃんでぃ。後(あとぅ)から、親方部(うぇーかたび)やぬ位(くれー)ちちさくとぅ、うぬ話いや、女主人(あやー)から、娘子(うぃなぐんぐゎ)ぬ父親(いきがぬうや)、母親(いなぐぬうや)んかい話いさくとぅ、「命(ぬち)身(みー)賭(か)きーんでぃせー、心(くくる)有(あ)るむんぬする事(くとぅ)やくとぅやー。」んち、婿(むーく)褒(ふ)みとーみせーたんでぃ。うぬ後(あとぅ)、夫婦(みいとぅんだ)なとーる二人(たい)、前(めー)ぬ、御主人達(ぐすじんぬちゃー)家(やー)んかいゆしりてぃさくとぅ、男主人(たーりー)ん、女主人(あやー)ん、年(とぅし)寄(ゆ)とーみせーしが、大変(じこー)うっさしみそーち、色々(いるいる)昔話(んかしばなし)いするうちに、女主人(あやー)が、「やーや、何故(ぬーんち)あぬ様な事(くとぅ)さが、命(ぬち)身(みー)賭(か)きとーんでぃせーわかいしが。」んち、話いさーに、「むしか、あぬ時(ばー)に、私(わー)が男主人(たーりー)ぬ前(めー)んかい話いし、公儀(くじ)んかい持(む)ち出(んぢゃ)しーねー、打ち首か島流しぬ罪(とぅが)やしが、うぬ時(ばー)ねー、申し開(わ)けーちゃーしすんでぃちやたが。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「なー、うぬ時(ばー)ねー、『人(ふぃとぅ)突(ち)ちゅる牛(うせー)、繋(ちみ)たしる罪(とぅが)い、解(はん)ちゃしる罪(とぅが)い。』んでぃ言(いゅ)る考(かんげ)えやいびーたん。」でぃち話いさくとぅ、だー、夫婦(みいとぅんだ)なてぃ、かーま後(あとぅ)からるやくとぅ、うぬ妻(とぅぜー)微笑(うすわれー)し、女主人(あやー)とぅ夫(うとぅ)ぬ顔(ちら)見(ん)ぢゃーに、「うー。」んち笑(わら)たくとぅ、三人(みっちゃい)うんにんぬ事(くとぅ)、思(う)び出(んぢゃ)ち、笑(わら)てぃさくとぅ、年(とぅし)寄(ゆ)とーみせーる女主人(あやー)や、「うっさ考(かんげ)えーいる頭(ちぶる)ぬ有(あ)てーくとぅる、親方(うぇーかた)んなてーっさみ。」んち笑(わら)とーみせーたんでぃ笑い話るやしが。男(いきが)ぬ命(ぬち)身(みー)振(ふ)捨(し)てぃてぃする、女(いなぐ)んかいぬ思(うむ)いや、親方(うぇーかた)なてぃから話いぬ出(んぢ)てぃ、「人(ふぃとぅ)突(ち)ちゅる牛(うせー)、繋(ちみ)たしる罪(とぅが)い、解(はん)ちゃしる罪(とぅが)い。」んち、だー、うれー、繋(くん)だっとーる牛(うし)んかい諺(たとぅい)ねー、なー、うれー、人(ちゅ)突(ち)ちゅくとぅ、解(はん)すしがるわっさる、んでぃるくとぅなとーしが、あねーあらん、うぬあたいやいびーんでぃる心(くくる)持(む)ちるやるんでぃる話い、笑(わら)いがちーなー話いさんでぃる話い。〔共通語訳〕 昔那覇(なは)の方に、親方部(うぇーかたび)の位に就いている、とても裕福な過程がありました。そして、その家庭は、男主人もおんな女主人も、学問や諸知識に優れた方でありながら、武芸の方も達者な方だったのですから、お供をする人達も多く、それから、女中達、下男達も大勢いるのですが、その女主人のところには、みんなの食べ物を煮たり炊いたりする下女や、これやあれやといろいろ準備する女中達もいれば、女主人の側で身のまわりの事をする召使もいて、これ、あれと言いつけて使っていたのです。そして、そのお供達は、武芸を教わったり、学問から、礼儀作法等を教わりながら使われているのですが、ある時、そこに召使されている娘子は、女主人の室の側の室に常時いて、昼でも夜でも何か女主人に用がある時には、いつも女主人と一緒に行くのですが、その女主人も、大変、学問や知恵人情も優れた方だったのです。そこに使われている一人の武士の青年が、召使に働いている娘をぜひ妻にしたいと考え、身命を賭けて、恥も切り捨て何がなんでもと思っているのですが、どうしようもありません。その娘さんはまた、女主人がいろいろな物事を教えていますので、教養も高く仕込まれているので、そこにいる人達は誰もが彼女を思慕していたのです。顔だちも綺麗で、心も優しく、人情も豊富なので、誰からも可愛がられていますので、何とかしてこの娘を妻にしようと思い、昼食が終わり、その片付けや掃除等もみな済ましてから、女主人の室から出てきて、自分の室に行こうとしますと、その通る通路に、下半身を全部広げて、自分の男性の象徴を糸で縛って両方に引っ張り、仰向けに寝ている男がいますので、その召使をしている娘子は、その有り様を見て驚嘆して、声も出なくなってしまい、その糸を解いて通り、自分の室に行きますと、その青年がかけて来て、その娘を無理に凌辱してしまったのです。すると、隣の女主人は、「今出ていったのだが、なんであんなにがさがさして、また、わずかな泣き声も聞こえるがどうしたのだろう。」と考えていると、その娘さんは、女主人の室にしくしく泣きながら入ってきて、「もう私を、ここの召使を止めさせてください。」ともうしますと、「どうして。」と問いますと、「実はこうこうして、自分の室に行きますと、このような事になりました。私はもう凌辱されましたので、ここにいるわけには参りません。」と話しますと、女主人は、「あの青年がそのようなことをするとは考えられない、彼は私の主人が大変褒めている青年で、後々は何様な人物になるかと心を込めていろいろ教えいらっしゃるが、彼がそのような事をするとは考えられない、そうだったらよろしい、呼んでおいで、私が話があると言って呼んでおいで。」と言われましたので、その召使されている娘さんは、泣く泣く彼のところに行って、「女主人がお呼びですから来ますように。」と言いますと、彼女の後を追って行って、「何事でございますか。」と申しますと、「今さっき、彼女から話を聞いたが、君はこうこうして恥も外分もなく、彼女を凌辱したそうだねー。」と言いますと、「間違いありません。」と返答致しますと、「なんで、何故、そのような事をするのだ、話をすれば恥はかかんでも済みよったのに。」と申しますと、「私はもう恥も何も構いませんですが、打ち首の罪になっても良いですから、私の話を聞いて下さい。私達の家柄は、え、親方部の位に就いた家柄ですが、その後落ちぶれて上にあがれず、幾ら頑張っても上位にあがることができないので、後はここでいろいろな事を習っているのですが、私は、この娘さんは、私がもし科に当たる事ができたら、この娘さんも科に当たるくらいの教養、知識を持った娘さんですから、ぜひ妻にしたいと思っています。もしそれができないという事になりますと、私は恥も捨て命を捨てても良いと思って、そのような事を致しました。」と、お話申し上げますと、女主人は、「なるほど、良い覚悟だ。私の主人が褒めるのも無理はない。よし、それでは、あなたが科に当たる間は、私が召使している娘は、私が預かっておく。彼女の両親は今親方部の位に就いておられる。あなたも科に当たれば、いつかは親方部の位に就く筈である。今は及びも着かないと思って、そのような事をした筈だから、後々あなたが科に当たるなら、私が仲人になってあなたの妻にさせるから、あなたは学問、その他に頑張りなさい。武芸等にも精を出しなさい。」と申しましたので、「有り難うございます。」と申し上げて室を出て行きました。すると今度は娘さんに、「よいか、あなたはね、男が身命を捨ててまでもと、恋い慕っているが、あなたがもし、夫にしたいと思う男がいたならば、このように恥も命も捨て、その男に自分の思いを届ける事ができるか。」と問いますと、その召使されている娘さんは、「私がわるうございました。」とお辞儀しますと、「彼とは約束してありますから、あなたはここで仕事を頑張りなさい。」と申されますと、「はい。」と言って、自分の室に行って仕事に精出したのです。その青年も一生懸命になって、学問から礼儀作法、武芸等精進して行きますと、一番科、二番科には当たりませんでしたが、三番科に当たりますと、女主人はもうわかっていますから、「おお、一番、二番には当たらなくても、三番までは番の内だ、よくやった。」と褒めますと、これを聞いた男主人は、「上出来、上出来、上出来だよ家内、その調子だ。」と、男主人も、女主人も、自分達が指導した弟子が出世したのを、三番までは番の内と番付なされて、その後、二人は夫婦にしたそうです。そしてその後に親方部(うぇーかたび)の位に着きますと、その話は女主人から娘の父親、母親に話しますと、「身命を賭すというのは、心あるもののすることだからねえ。」と、婿を褒めておられたとのこと。後、夫婦になった二人は、前の主人の家に行きますと、男主人も女主人も年を召されておりますが、大変喜ばれて、いろいろと昔話をするうちに、女主人が、「あなたは何故あのような仕様をしたのか、身命を賭しているのはわかるが。」と申しながら、「私がもしあの時主人に話して、主人が公儀にでも持ち出すと、打ち首か島流しの罪になるが、そうなったら何と申し開きするつもりだったのですか。」と言われますと、その夫は、「もうその時は、『人を突く牛は、繋いだ者が罪か、解いた者が罪か。』と言うつもりでした。」と申しますと、もうそれは、夫婦になってずうっと後の事ですから、その事は微笑して、女主人と夫の顔を見比べて、「はい。」と笑いますと、三人ともその時の事を思い出して笑っていました。すると、女主人が、「それだけ考える頭があったからこそ、親方になれたのだ。」と笑っておられました。男が命を振り捨てする女への思いは、親方になってから話が出て、「人を突く牛は、繋いだ者が罪か、解いた者が罪か。」それは繋いだ牛にたとえると、それはもう、人を突くのであるから、解く者が悪いという意味になっているが、実はそうではなくて、それくらいに思い詰めていましたという心持ちを表しているということ話し、笑いながら話しあっておられたという話。平成9年2月17日 高江洲亮翻字 T3A3 |
| 全体の記録時間数 | 10:07 |
| 物語の時間数 | 10:07 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |