灰坊三良(方言)

概要

〔方言原話〕 くれー、灰坊三良(ふぃーばさんだー)ぬ話い。昔(んかし)あるとくぅまぬ富豪(うぇーき)やしが、、子(くゎー)産(な)さんなてぃさくとぅ、易者(いち)、判断者(はんじ)ぬ家(やー)歩(あっ)ちゃい、御嶽(うたき)ぬーん拝(うが)だんてーん、一向(てぃちん)思(うむ)いるぐとーならん、子宝(くだから)授(さじ)からんなてぃそーる時(ばー)に、一人(ちゅい)ぬ、女友達(いなぐどぅし)ぬ、「えー、いったーや、見(み)し卵(くーが)入(いっ)とーけー、あんせー産(な)すさ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「うぬ見(み)し卵(くーが)んでぃせーぬーやが。」んでぃ言(い)ちゃれー、「鶏(とぅい)んでーぬ、山産(な)しー、あまにん、くまにん、卵(くーが)産(な)さーなかい、巣(くー)や作(ちゅく)らんぐとぅ、産(な)ち歩(あっ)ちゅせー。むる纏(まとぅ)まらんくとぅ、、ふる籠(ふるばーき)んかい、枯葉(ふぃーがら)入(い)りやーなかい、巣(くー)作(ちゅく)てぃ、うぬ中(なーか)んかい、卵(くーが)一(てぃ)ちぇー入(い)りやーなかい、外(ふか)かた見(みー)ゆるぐとぅそーちーねー、鶏(とぅい)ぬうり見(んー)ち、「あーい、くまんかい卵(くーが)ぬ有(あ)しが、くまる卵(くーが)産(な)するとぅくまやがやー。」んでぃ思(うむ)やーなかい、んまんかい入(い)やーなかい、卵(くーが)産(な)するぐとぅないん、うぬ始(はじ)み入(い)りーせー見(み)し卵(くーが)んでぃち言(い)ち、空(がら)やらわんしむくとぅ、んまんかい卵(くーが)入(いっ)とーてぃ産(な)しみーるばー、うりが見(みー)し卵(くーが)やしが、君達(いったー)親戚(うぇーか)ぬ子供(わらばー)そーてぃちゃーなかい、自分(どぅー)ぬ子(くゎ)とぅ同様(いーぬぐとぅ)し、二人(たい)が間(たばさ)んかい寝(に)しとーてぃ育(すだ)てぃれー、あんし夫婦(みいとぅんだ)交(びれー)しーねー、男(いきが)、女(いなぐ)んでぃん言(いゅ)んぐとぅ、玉黄金産子(たまくがになしぐゎー)ぬ、授(さじ)かみせーるぐとぅんち、寝(に)んぢゃがなー、祈願(にんぐゎん)し、しーるんせー、必(かんな)じ、生(ん)まりーさ。」んち、教(ならー)ちさくとぅ、親戚(うぇーか)から、男童子(いきがわらばー)養子さーなかい、二人(たい)が間(たばさ)んかい、寝(に)んしてぃ、育(すだ)てぃてぃ、、教(ならー)さったるぐとぅしさくとぅ、友達(どぅし)ぬ言(いゅ)たせー当(あ)たてぃ、うぬ女(いなぐ)ぬ胴(どぅー)ぬ変(か)わてぃ、子(くゎ)孕(むっ)ち、あんし生(ん)まりとーしが、男子(いきがぐゎ)なてぃさくとぅ、今度(くんどー)うぬ見(み)し卵(くーが)せーせー、私達(わったー)が黄金産子(くがになしぐゎー)授(さじ)かとーせー、くりが御陰(うかじ)るやる、私達(わったー)が養子とぅし、いちまでぃん、私達(わったー)子(くゎ)とぅ同様(いーぬぐとぅ)育(すだ)てぃてぃいきはるやる、んち、育(すだ)てぃとーるばーやしが、うぬ子供(わらばー)や大変(じこー)ぬふんでーむんなやーに、うぬ妻(とぅぜー)、大変(じこー)苦労(しんどー)しるうぬ見(み)し卵(くーが)なとーる子供(わらばー)や育(すだ)てぃたんでぃしが、うぬ甲斐有(あ)てぃ、子宝(くだから)ん授(さじ)かてぃそーくとぅ、大変(じこー)かなさし育(すだ)てぃとーるばーやしが、後(あとぅ)からー、見(み)し卵(くーが)せーる子供(わらばー)や兄(しじゃ)やるしじゃくとぅ、後(あとぅ)から産(な)ちぇーせー弟(うっとぅ)やるしじやくとぅ、さーに、同様(いーぬぐとぅ)育(すだ)てぃとーくとぅ、だーうぬ、ふんでーそーたる兄(しーじゃ)ん、今度(くんどー)、知恵(ぢんぶん)出(んぢ)やーなかい、とーなー、私(わん)ねー見(み)し卵(くーが)るやい養親(やしねーうや)るやくとぅ、くまんかい居(う)いねー、後(あとぅ)追(うぃ)出(んぢゃ)さりーくとぅ、ちゃーがなし、くぬ、本当(ふんとー)しぬ子供(わらばー)追(うぃ)出(んぢゃ)さわるやる、んち、うりから、自分(どぅー)ぬわっさる事(くとー)さーなかい、むる弟(うっとぅ)んかい覆(うーし)てぃ弟(うっとぅ)ぬるせーるんでぃ、言(いゃー)なかいそーしが、後(あとー)親達(うやぬちゃー)、くれーあねーあらんしがやー、んでぃ思(うむ)いがちーん、ふんでーする子供(わらばー)、泣虫子供(なちぶさーわらばー)る育(すだ)てーくとぅ、自分(どぅー)ぬ子(くゎ)と、同様(いーぬぐとぅ)かなさるあくとぅ、「あんやみ、いーあんやみ。」んでぃ言(いゃ)がなー、成人(ふどぅふどぅ)なてぃさくとぅ、今度(くんどー)、乱暴者(ぼーちりーむん)なてぃ、うぬ弟(うっとぅ)、追(うぃ)出(んぢゃ)ちねーらん。さくとぅ、なー行(い)ちゅるとぅくるぬねーらんくとぅ、うぬ弟(うっとー)、仕方(しか)ならん、寺(てぃら)んかい行(い)ちゃーに坊主(ぼーじ)んかい、「一夜(ちゅよろー)泊(とぅ)まらちくぃみそーり。」んち、頼(たる)だくとぅ、「ぬーが。」んち坊主(ぼーじ)ぬ問(とー)たくとぅ、「かんかんぬ次第(しでー)し、追(うぃ)出(んぢゃ)さっとーいびん。」でぃち返答(ふぃんとー)さくとぅ、うぬ坊主(ぼーじ)ぬ、「とー、あんせーやー、くまんかい馬(んま)ぬ居(う)くとぅ、うり乗(ぬ)てぃ行(いん)ぢゃーなかい、うぬ馬(んま)ぬ止(とぅ)まいっとぅくまー、富豪(うぇーき)ぬ家(やー)ぬ門(じょー)やる筈(はじ)やくとぅ、んまんぢ頼(たる)まーに、下男(じにん)なてぃ暮らしよー、あんしーるんせー、後(あとー)いー事(くとぅ)ぬあさ。くぬ馬(んまー)、一夜(ちゅゆる)に百里ん走(はい)くとぅ、一日(ふぃっちー)ねー千里(しんり)ん走(はい)るあたいぬ、大変(じこー)いー馬(んま)やくとぅ、やーが思(うむ)とーるとぅくまうてぃ仕事(しぐとぅ)しーねー、馬(んま)やー側(すば)んかい居(う)る筈(はじ)やくとぅ、やーや、うぬ馬(んま)乗(ぬ)てぃ行けー。」んち、そーてぃやらちゃくとぅ、あんさくとぅ、だー、うれーなー、家(やー)んねーらんどぅ、あるむんぬんでぃ言(いゃー)なかい、しぐ、いっさんばーえーさくとぅ、富豪(うぇーき)ぬ家(やー)ぬ前(めー)んぢ止(とぅ)てぃさくとぅ、馬(んまー)家(やー)ぬ後(くし)んぢ隠(くゎっくゎ)さーなかい、「下男(じにん)しくぃみそーり。」んち頼(たる)だくとぅ、「やーやなー、使(ちか)いるむんやれー、じょーしちゃー達(たー)手伝(てぃがねー)んうあたいるしみらりーんどーや、あんししむみ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「うー、しまびーん。」でぃち、仕事(しぐとぅ)しみたくとぅ、うーはまい、じょーしちゃー達(たー)ぬ手伝(てぃがねー)から、奉公人達(しんかぬちゃー)ぬ手伝(てぃねー)んゆーすくとぅ、うり見(んー)ち、主人(ぬーせー)、「うーん、くれー、働者(はたらちゃー)子供(わらばー)がちょーん。」でぃち、うっさそーしが、だー、うれー、じょーしちゃー達(たー)ぬ手伝(てぃがねー)るやくとぅ、窯ぬ灰(ふぇー)掻(か)ちゃーんぬーんしーるさくとぅ、あんさーに、寝(に)んるとぅくろーねーらん、窯ぬ前(めー)うてぃ寝(に)んてぃ、ちゃー灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃ、頭(ちぶる)んぱさぱさしそーしが、今度(くんどー)、うんぐとぅそーるうちに二月(にんぐゎち)なてぃ、二月(にんぐゎち)ぬ二日(ふちか)ねー、畑山勝負(はるやますーぶ)ぬ有(あ)くとぅ、うぬ時(ばー)ねー、競馬(んまはらし)んぬーんあ有(あ)しが、だー、うれー、青年(にーせー)なてぃん、「りっちゃーんまんかい行か、やーやゆー働(はたら)ちょーくとぅ、今日(ちゅー)や、ゆくれー。」んでぃ、言(い)ちん、「私(わん)ねー仕事(しぐとぅ)ぬ有(あ)いびーくとぅ、とー、皆(んなー)行(いん)ぢめんそーり、家(やー)や、私(わー)が見(んー)ちょーちゃびーん。」でぃち行かん、平生(ふぃーじー)から、んまぬ家(やー)ぬ一人娘(ちゅいいなぐんぐゎー)の、「くぬ青年(にーせー)や変(か)わい者(むん)、皆(んな)がゆくいぶさーしーにんゆくらん、ぬーがな有(あ)いるすがやー。」んち、ちゃー目(みー)付(ち)きとーるばーやしが、あんさくとぅ、夜(ゆる)にっかなてぃから、くーてんぐゎーコンコンすくとぅ、ぬーやがやーんち、見(ん)ちゃくとぅ、だー、うれー、平生(ふぃーじー)やふぃんがーし、灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃる居(う)くとぅ、あんそーしが、夜(ゆる)ないねー、重箱(じゅうばく)ぬやんだー持(む)ち出(んぢ)やーなかい、うりんかい、砂(しな)とぅ、灰(ふぇー)、混(ま)んきてぃ入(い)りやーなかい、うりんかい、字(じー)書(か)ち習(なれー)さぎーん、あんし字(じー)ぬ、重箱(じゅうばく)ぬ満杯(みっちゃき)なてぃ、書(か)からんなてぃしーねー、コンコンみかち、箱(はく)打(う)ちーねー、書(か)ちょーる字(じー)や全部(むる)ちゃーりーん。あんさーに、また、書(か)ち満杯(みっちゃき)ないねー、また、外側(ふかばた)打(う)ちちゃーちさくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)うりみーちきてぃ、くれー、ただぬ人(ちょー)あらん、でぃちさーなかい、うりが寝(に)んじゅるとぅくま、よんなーよんなー開(あ)てぃ見(んー)ちゃくとぅ、割り碗(まかい)んかい菜種油(まーあんだ)入(いっ)てぃ、うりんかい、てぃーさーじぬちり入(い)りやーなかい、うり燈芯(とぅーじん)立(た)てぃ、火(ふぃー)ぐゎー付(ち)きやーなかい、夜中(ゆなか)皆(んな)が寝(に)んてぃから、勉強(むんなれー)さぎーん。「とー、くれー、ただぬ人(ちょー)あらん。」でぃち思(うむ)とーるうちに、一年(ちゅとぅ)すぎてぃ、また、今度(くんどぅ)ん、畑山勝負(はるやますーぶ)なてぃ、なー、んまんかい、大変(じこー)ぬ富豪(うぇーきんちゅ)ぬちゃー、皆(んな)めんせーくとぅ、「りっちゃー、灰坊三良(ふぇーばさんだー)ん行かな。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「う、う、う、私(わん)ねーいちゅなさいびーくとぅしまびーん。」でぃち、行かんしが、皆(んな)が出(んぢ)てぃ行(いん)ぢさくとぅ、今度(くんどー)、自分(どぅー)んちゅらすがいさーなかい、だー、うぬ馬(んま)ぬ背(ながに)んかえー、ちゃーうりが衣装(いそー)やくんち引(ふぃ)っ付(ち)きてぃるうくとぅ、美(ちゅら)着物(ぢん)着(ち)やーなかい出(んぢ)てぃさくとぅ、なー、稀(まり)な美青年(ちゅらにーせー)なてぃさくとぅ、今度(くんどぅ)ぬ競馬(んますーぼー)ちゃーなたがんでー、うぬ美青年(ちゅらにーせー)が一番なてぃ勝(まか)ちさくとぅ、終(う)わいしとぅまじゅんうれー、馬(んま)乗(ぬ)てぃふぃんぎーんねーし、はちさくとぅ、まーぬ誰(たー)がやらんわからんなてぃ、うぬ灰坊三良(ふぇーばさんだー)や、家(やー)かい帰(けー)てぃ、着物(ちぬ)ん着替(ちーけー)やーなかい、また、灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃさくとぅ、うぬ後(あとぅ)、皆(んな)家(やー)かい帰(けー)てぃちゃーなかい、んまぬ主人(ぬーし)ぬ、「今日(ちゅー)がなー二月(にんぐゎちゃー)やい、私達(わったー)ん年(とぅし)寄(ゆ)りとーくとぅ、私達(わった)婿(むーく)ないし、誰(たー)がましやらんち皆(んな)さーなかい、協議(ぢんみ)し、くぬ家(や)ぬ後(あとぅ)ちじゅし、今(なま)から決(き)みーんちやしが、ちゃーせーましがやー。」んちさくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)ぬ、「武士(さむれー)ん誰(たー)ん欲(ふ)さーねーらんしが、私達(わったー)下男達(じにんぬちゃー)から、私達(わったー)家庭(ちねー)ぬ事(くとぅ)ゆー知(しっ)ちょーる下男達(じにんぬちゃー)から婿(むーこー)選(いら)ぶん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、主人(ぬーせー)、「えー、あぬい、しむんどー、家庭(ちねー)ぬ内容(うちゅー)んゆー知(しっ)ちるうくとぅ、ゆー知(しっ)ちょーる人(ちゅ)とぅ夫婦(みいとぅんだ)ないるんせー、くぬ家庭(ちねー)や、たったまけーてぃ行(い)ちゅる筈(はじ)やくとぅや、いー考(かんげ)えやさ必(かんな)じくれーびけーせー、人(ちゅ)ぬ暮らし方(がた)んでぃせーならんくとぅ、よーてーん、ゆー知(しっ)ちょーせーましやさ。」んち、さくとぅ、「とー、あんせー、ちゃーし選(いら)ぶが。」んでぃる事(くとぅ)んかいなたくとぅ、娘(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「私(わー)が今(なま)までぃ平生(ふぃーじー)使(ちか)とー手鞠(まーい)や、土手(あぶし)んかい有(あ)る水苔(まーいぶーくー)る取(とぅっ)てぃち作(ちゅく)てーしが、飾(かざ)い手鞠(まーい)んち、蘇鉄(すーてぃちゃー)ぬ中子(なかぐー)んかい引(ふぃ)っ付(ち)かとーる綿毛(まーいぶーく)さーい作(ちゅく)てーる手鞠(まーい)ぬ有(あ)くとぅ、私(わー)がんまぬ台(でー)んかい立(たっ)ちょーてぃ、うぬ前(めー)から、一人(ちゅい)なー、一人(ちゅい)なー、歩(あっ)かち、うぬ手鞠(まーい)ぬ落(う)てぃやーなかい、当(あ)たたる人(ちょー)、私(わー)夫(うとぅ)ないる人(ちゅ)。」んち、さくとぅ、主人(ぬーせー)、「うーん、ゆたさん。」りち、親達(うやぬちゃー)うりから、使(ちか)とーる下男達(じにんぬちゃー)、武士(さむれー)ぬ達(ちゃー)、皆(んな)合点(がってぃん)しみそーちゃくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)、ちゅらすがいし、飾(かざ)い手鞠(まい)持(む)っち、台(でー)ぬ上(うぃ)んかい立(たっ)ち、うぬ前(めー)から、一人(ちゅい)なー、一人(ちゅい)なー、歩(あっ)ち終(う)わるか、うぬ手鞠(まーえー)落(う)とぅさんなたくとぅ、「あぜー、男達(いきがぬちゃー)や、うっさるうしが。」んち、母親(いなぐぬうや)や言(い)みそーちゃくとぅ、娘(うぃなぐんぐゎー)、「なーひん居(う)いびーん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「なー残(ぬく)とーせー灰坊三良(ふぇーばさんだー)一人(ちゅい)るやんどーやー。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「うー。」んちさーなかい、そーてぃちゃくとぅ、今日(ちゅー)ん、平生(ふぃーじー)そーんねーし、灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃ、汚(ゆぐ)り切(ち)り、垢(ふぃんぐー)だらかーし、台(でー)ぬ前(めー)通(とー)たくとぅ、うりが頭(ちぶる)んかい、うぬ手鞠(まーい)や落(う)てぃさくとぅ、親達(うやぬちゃー)や、くさみち、「やーや、なー、親(うや)ぬ考(かんげ)えん、やー考(かんげ)えん、話いし、当(あ)たとーんちる、下男達(じにんぬちゃー)から選(いら)でぃんしむんでぃ言(い)ちゃる、灰坊三良(ふぇーばさんだー)んかい当(あ)てぃーるむんやれー、なー、くぬ家(やー)んかえー置(う)からんくとぅ、出(んぢ)てぃ行(い)き、追(うぃ)出(んぢゃ)すん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「うー。」んでぃ言(いゃー)なかい、側(すば)んかい、灰坊三良(ふぇーばさんだー)や正座(ふぃさまんちゅー)しいちょーるばーやくとぅ、うりが側(すば)んぢ、娘(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「三良(さんだー)よー、着物(ちん)着替(ちーけー)てぃ来(くー)わ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「娘(うぃなぐんぐゎ)ぬわかとーみせーるむんやれーなー、私(わん)ねー、仕方(しかたー)ないびらん。」りち、行(い)ちゃーなかい、今度(くんどー)、先刻(きっさ)ぬ二月(にんぐゎちゃー)ぬ、あぬ衣装(すがい)し、競馬(んまはらし)ぬ時(ばー)ぬ着物(ちん)着(ち)やーなかい、頭(ちぶる)ん立派(りっぱん)さばち、馬(んま)んすがらち乗(ぬ)やーなかい、門(じょー)から入(いっ)ちちゃくとぅ、一人(ちゅい)ん残(ぬく)さん、たましぬぎてぃ、今度(くんどー)一番なとーる馬(んまー)、くぬ馬(んま)、人(ちょー)、くぬ人(ちゅ)、んちさくとぅ、三良(さんだー)や、馬(んま)から降(う)りてぃ、御主人達(ぐすじんぬちゃー)二人(たい)んかい向(ん)かてぃ、「じちぇーな私(わん)ねー、まーまー後(あとぅ)継(ち)じゅる王子(をーじ)るやしが、世(ゆ)ぬ中わからんあれー、下々(しむじむ)ぬ事(くとぅ)わからんあれー、ちゃっさ位(くれー)や高(たか)さてぃん、ぬーんならん、沖縄(うちなー)うてー身分ぬ位(くれー)や、王(をー)ん、按司ん皆(んな)あしが、仕事(しぐとぅ)ぬ位(くれー)や、一、農作(むじゅくい)、二、学問(がくむん)でぃちあぬー農作(むじゅくい)、作(ちゅく)いらがる、一番やる、やくとぅ、私(わん)ねー、一番ぬ業(わざ)すっとぅくまうてぃ、ちゃんぐとぅーしすがやー、んち、うり習(なれ)えがるちゃる。とー、娘子(うぃなぐんぐゎー)親(うや)ぬ言(いゅ)る事(くとぅ)ん聞(ち)かのーあてぃん、私(わん)にん貴方(うんじゅなー)二方(たとぅくる)んかいゆくしぬみーし、騙(だま)かちるそーいびーくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)私(わん)にんかい、くぃてぃくぃみそーり。」んちさくとぅ、だー、うれー、王子(をーじ)ぬあん言(い)みせーくとぅ、親達(うやぬちゃー)や、「ゆたさいびん。」でぃち、返答(ふぃんとー)うなきたくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)とぅ王子(をーじ)とぅ夫婦(みいとぅんだ)なてぃ、うぬ後(あとぅ)、下々(しむじむ)ぬ人達(ちゅぬちゃ)事(くとぅ)ゆー考(かんげ)えいる按司なたんでぃる話い。くりが灰坊三良(ふぇーばさんだー)ぬ話い。〔共通語訳〕 これは、灰坊三良(ふぇーばさんだー)の話。昔あるところに富豪がおりましたが、その富豪には子供がいないので、そこ、ここの易判断者に行って聞いても思うようにいかず、御嶽(うたき)など巡って拝んでも子供は授かりません。そんな時、一人の女友達が、「おい、君達は、見せ卵を入れておけば子供を産めるよ。」と言いますので、「その見せ卵とは何か。」と言いますので、「鶏などが、山産みと言って、あそこ、ここに卵を産み、巣を作らないで卵を産んでいく事で、何にもまとまらないから、古い籠に枯れ葉などを入れて巣を作り、その中に卵を一つ入れて鶏が見えるようにしておくと、鶏はそれを見て、『あら、ここに卵がある、ここが卵を産む所かな。』と思って、そこに入って卵を産むようになる。その始めに入れるのが見せ卵。」と言って、空でもいいからそこに卵を入れておいて、産ませるのである。それが見せ卵だが、「君達には親戚の子供を連れてきて、自分の子供同様にして、二人の間に寝かして育てなさい。そうして、夫婦の交じりをする時には、男でも良い、女でも良い、玉のような子供をお授け下さいますように寝ながら祈願して交じりをすると、必ず生まれるよ。」と教えますと、早速、親戚から男の子供を養子にして、夫婦の間に寝かして育て、教えられたようにしてやりますと、友人の言っていたのが当たり、その女の身体が変わり、子を孕み、そうして産まれたのが男の子でした。すると今度は、その見せ卵にした子供は、私達に子宝が授かったのはこの子のお蔭だから、私達の子供同様、いつまでも養子として育てようという事になって、養育しているのですが、その子供は大変な甘えん坊で、妻は大変苦労して、その見せ卵の役目をした子供を育てたのですが、その甲斐あって子宝も授かったのですから、大変可愛がって育てているのですが、その後、見せ卵にした子供は兄になるわけで、後から自分達が産んだ子は弟になるわけだから、そして同じように育てているのです。したもんだから、甘えん坊の兄はその後知恵が出てきて、「ああ、そうだ、私は見せ卵であって養い親なんだから、ここにいてもどうせ後は追い出されるに違いない、何とかしてこの本当の子供を追い出してやろう。」と考え、それから悪い事を自分がやって、それなどをみな弟の仕業というようになり、悪いのは弟と言っているのですが、後は親達も、これはそうではないと思いながらも、甘えん坊の泣き虫の子供を育て上げたので、自分の子供と同様に可愛いのだから、「ああそうか、よしよし、そうだったか。」と聞き流していたのですが、成人になりますと今度は乱暴者になり、その弟を追い出してしまったのです。すると弟は行く所がないので、仕方なく歩いてまわって、後はお寺に行って坊さんに、「一晩泊めて下さい。」と頼みますと、その坊さんは、「どうしたのか。」と問いますので、「実はこのような次第で家を追い出されました。」と返答しますと、その坊さんは、「そうか、それではここに馬がいるから、この馬に乗っていけばこの馬の止まる所は大富豪の家の門の前である筈だから、そこの主人に頼んでその家の下男になって暮らしなさい。そうすると、後は必ず善い事があります。なお、この馬は一夜に百里を走り、一日走れば千里も走る大変な俊馬だから、あなたが思う事で仕事をしている間は側にいる筈だから、あなたはその馬を連れて行きなさい。」と言って、馬を連れて行かせました。そうしたら、どうせもう行く家も当てもないもんだからどうにでもなれと、一目散に馬を走らせますと、ある富豪の家の前にその馬が止まりましたので、馬を屋敷の後ろに隠して、その家に行き、「下男にして下さい。」と頼みますと、主人は、「君を使うとすると、女中や下女達の手伝いぐらいしかさせられないが、それで良いか。」と言いますので、「はい、よろしいです。」という事で仕事をさせますと、一生懸命働き、女中、下女の手伝いから、奉公人の手伝いまで良くやりますので、これを見た主人は、「ううん、これは働き者の子供が来た。」と大変喜んでいますが、それは女中、下女達の手伝いですから、竈の灰掻きなどもしなくてはなりません。寝るところもなく、竈の前に寝ていつも灰を被り、顔はぱさぱさしていますが、こんどはそのようにしているうちに、二月になり、二月二日は畑山勝負があり、その時には競馬などもありますが、彼は青年になって、「皆一緒に連れ立って行こう、君は良く働いたから今日は休め。」と言っても、「私には仕事がありますから、皆さん行っていらっしゃい、家の方は私が見ておきますから。」と言って行きません。その家の一人娘は、「この青年は変わり者、皆は休みたがっているのに休みもしない、何事かあるのでは。」と思い常に目を付けているのですが、そうすると、夜遅くなってから、小さくコンコンと音がするので、何事かと思ってよく見ると、いつもは垢に汚れて灰を被って汚い服装をしてますが、夜になると外に出て、月夜の晩などになりますと、重箱の壊れた物を持ち出して、その中に砂と灰と混ぜ合わせたものを入れて、それに字を書く練習をしています。それで字が重箱一杯になり書けなくなると、今度は外側をコンコンと打つと、書いた字はみな消えてしまうのです。すると、また練習して一杯になると、また外側を叩いて消していますので、その娘はそれを見つめていて、この人はただ者ではないと思い、そうして彼が寝る所を、ゆっくりゆっくり開けてみますと、片方の少し割れたお碗に菜種油を入れて、それに手拭いの切れっ端を入れて、それを立て燈芯にして火を着けて、小さな灯で、夜中みんなが寝てから勉強しているのです。それを見て、「この人はただの人ではない。」と思っているうちに、一年が過ぎて、また今度も二月の畑山勝負になりますと、もうそこには大変な富豪など、皆参りますので、「皆で連れ立って、灰坊三良も行こう。」と言いますと、「いいえ、私は忙しいですから宜しいです。」と言って行きませんが、皆が出ていってしまいますと、三良(さんだー)は、自分も着飾って、それはあの馬の背中に常時彼の衣装が縛りつけてありますので、美しい衣装を着けて出て来ますと、稀に見るような美青年になっています。そして、今年の競馬はどうなったかと申しますと、その美青年が一番です。勝って終わりますと同時に、彼は馬に乗ったまま逃げるようにして立ち去ってしまったので、どこの誰だかもわかりません。その灰坊三良は家に帰って、着物を着替え、また灰を被っていますと、その後皆が家に帰ってきてから、そこの主人が、「今日はもう二月でもあるし、私達も年寄りになっているから、私達の婿になる人は誰がよいか皆で協議して、この家の後継をする物を決めようと思っているがどうしたら良いか。」と申しますと、その娘が、「私は、武士も誰も欲しくはないが、私達の下男達から、私達の家庭の事を熟知している下男達から婿を選ぶ。」と言いますと、主人は、「ええ、そうか、いいよ、家庭の内容を良く知っているから、良く知った人と夫婦になれば、この家庭はますます栄えていく筈だから、それは良い考えだ。必ず階級だけでは人間は暮らしていけないから、様態もよく知った人が良いよ。」と言いまして、それではどうして選ぶかという事になりますと、娘が、「私が今まで普通に使っている手鞠は、土手にある水草を取ってきて作ってあるのだが、今一つ土手の上にある蘇鉄の葉の中心の部分の綿毛を集めて作った飾り手鞠があるが、私がその手鞠を持ってそこの台の上に立っているから、その台の前を一人一人歩かして、その毬を落として当たった人が私の夫になる人。」と申しますと、主人も、「ううん、それで良かろう。」という事で、親達の目の前で、下男達や武士達が皆合点いたしましたので、その娘は綺麗な服装で着飾り、飾り手鞠を持って台の上に立ち、その前を一人一人歩かせ、もう皆歩き終わっても娘は手鞠を落としませんので、「あれえ、男達はそれだけしかいないよ。」と母親は申しますと、その娘は、「もっとおります。」と娘が言いますと、「もう残ってるのは灰坊三良の一人だよ。」母親が言いますと、「はい。」と答えますので、連れて来ますと、いつもと同じ様相で灰を被っていて、汚れも垢も付いたまま台の前を通りますと、彼の頭の上に手鞠は落ちましたので、親達は大いに怒り、「君はもう親の考えも君の考えも意見が合ったので下男達から選んでも良いと言ったのだが、灰坊三良に当たるのならば、もうこれは私の家に置く事はできないから出て行け、追い出す。」と言いますと、「はい。」と申して、側に灰坊三良は正座して座っていますのでその側に行き、娘が、「三良よ、着物を着替えてきなさい。」と申しますと、三良は、「娘さんがおわかりになっておられましたら、もう私は仕方ありません。」と言って、今度は先刻の二月の衣装で競馬の時の着物を着けて、頭も立派に櫛を通し、馬も磨いて乗り、門の方から入ってくると、一人残らずびっくり仰天。今度の二月に一番になった馬はこの馬、人はこの人です。すると、三良は馬から降りてご主人達両人に向かい、「実は私はある大名の後継になる嫡子だが、世の中の事がわからなければ、下々の事がわからなければ、何ほど、位は高くても何にもならん。沖縄においては身分の位は、王も大名もみなあるが、仕事の位は、一、農作、二、学問という事になっている。それで農作を作るのが一番だから、私は一番の仕事をしている所で、どのようにするのかそれを習いに来たのである。それで、娘は親の言う事を聞かないが、私もあなた達二人に嘘をついて騙しているのだから、その娘を私の妻にさせて下さい。」と言いますと、もうそれは、大名の後継をする方ですから、親達は、「よろしいです。」と返答申し上げますと、その娘さんは王子と夫婦になり、その後は、下々の人達の事を良く考えていく大名になったそうです。これが灰坊三良の話。平成9年2月17日 高江洲亮翻字 T3A2

再生時間:14:35

民話詳細DATA

レコード番号 47O170021
CD番号 47O17C003
決定題名 灰坊三良(方言)
話者がつけた題名 灰坊三良(ふぇーぶーさんだー)
話者名 阿波根昌栄
話者名かな あはごんしょうえい
生年月日 19210309
性別
出身地 沖縄県中頭郡北谷町字上勢頭
記録日 19970217
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 T03A02
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 『想い出の昔話』
キーワード 灰坊,養子,馬,下男,灰,夜勉強,手毬
梗概(こうがい) 〔方言原話〕 くれー、灰坊三良(ふぃーばさんだー)ぬ話い。昔(んかし)あるとくぅまぬ富豪(うぇーき)やしが、、子(くゎー)産(な)さんなてぃさくとぅ、易者(いち)、判断者(はんじ)ぬ家(やー)歩(あっ)ちゃい、御嶽(うたき)ぬーん拝(うが)だんてーん、一向(てぃちん)思(うむ)いるぐとーならん、子宝(くだから)授(さじ)からんなてぃそーる時(ばー)に、一人(ちゅい)ぬ、女友達(いなぐどぅし)ぬ、「えー、いったーや、見(み)し卵(くーが)入(いっ)とーけー、あんせー産(な)すさ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「うぬ見(み)し卵(くーが)んでぃせーぬーやが。」んでぃ言(い)ちゃれー、「鶏(とぅい)んでーぬ、山産(な)しー、あまにん、くまにん、卵(くーが)産(な)さーなかい、巣(くー)や作(ちゅく)らんぐとぅ、産(な)ち歩(あっ)ちゅせー。むる纏(まとぅ)まらんくとぅ、、ふる籠(ふるばーき)んかい、枯葉(ふぃーがら)入(い)りやーなかい、巣(くー)作(ちゅく)てぃ、うぬ中(なーか)んかい、卵(くーが)一(てぃ)ちぇー入(い)りやーなかい、外(ふか)かた見(みー)ゆるぐとぅそーちーねー、鶏(とぅい)ぬうり見(んー)ち、「あーい、くまんかい卵(くーが)ぬ有(あ)しが、くまる卵(くーが)産(な)するとぅくまやがやー。」んでぃ思(うむ)やーなかい、んまんかい入(い)やーなかい、卵(くーが)産(な)するぐとぅないん、うぬ始(はじ)み入(い)りーせー見(み)し卵(くーが)んでぃち言(い)ち、空(がら)やらわんしむくとぅ、んまんかい卵(くーが)入(いっ)とーてぃ産(な)しみーるばー、うりが見(みー)し卵(くーが)やしが、君達(いったー)親戚(うぇーか)ぬ子供(わらばー)そーてぃちゃーなかい、自分(どぅー)ぬ子(くゎ)とぅ同様(いーぬぐとぅ)し、二人(たい)が間(たばさ)んかい寝(に)しとーてぃ育(すだ)てぃれー、あんし夫婦(みいとぅんだ)交(びれー)しーねー、男(いきが)、女(いなぐ)んでぃん言(いゅ)んぐとぅ、玉黄金産子(たまくがになしぐゎー)ぬ、授(さじ)かみせーるぐとぅんち、寝(に)んぢゃがなー、祈願(にんぐゎん)し、しーるんせー、必(かんな)じ、生(ん)まりーさ。」んち、教(ならー)ちさくとぅ、親戚(うぇーか)から、男童子(いきがわらばー)養子さーなかい、二人(たい)が間(たばさ)んかい、寝(に)んしてぃ、育(すだ)てぃてぃ、、教(ならー)さったるぐとぅしさくとぅ、友達(どぅし)ぬ言(いゅ)たせー当(あ)たてぃ、うぬ女(いなぐ)ぬ胴(どぅー)ぬ変(か)わてぃ、子(くゎ)孕(むっ)ち、あんし生(ん)まりとーしが、男子(いきがぐゎ)なてぃさくとぅ、今度(くんどー)うぬ見(み)し卵(くーが)せーせー、私達(わったー)が黄金産子(くがになしぐゎー)授(さじ)かとーせー、くりが御陰(うかじ)るやる、私達(わったー)が養子とぅし、いちまでぃん、私達(わったー)子(くゎ)とぅ同様(いーぬぐとぅ)育(すだ)てぃてぃいきはるやる、んち、育(すだ)てぃとーるばーやしが、うぬ子供(わらばー)や大変(じこー)ぬふんでーむんなやーに、うぬ妻(とぅぜー)、大変(じこー)苦労(しんどー)しるうぬ見(み)し卵(くーが)なとーる子供(わらばー)や育(すだ)てぃたんでぃしが、うぬ甲斐有(あ)てぃ、子宝(くだから)ん授(さじ)かてぃそーくとぅ、大変(じこー)かなさし育(すだ)てぃとーるばーやしが、後(あとぅ)からー、見(み)し卵(くーが)せーる子供(わらばー)や兄(しじゃ)やるしじゃくとぅ、後(あとぅ)から産(な)ちぇーせー弟(うっとぅ)やるしじやくとぅ、さーに、同様(いーぬぐとぅ)育(すだ)てぃとーくとぅ、だーうぬ、ふんでーそーたる兄(しーじゃ)ん、今度(くんどー)、知恵(ぢんぶん)出(んぢ)やーなかい、とーなー、私(わん)ねー見(み)し卵(くーが)るやい養親(やしねーうや)るやくとぅ、くまんかい居(う)いねー、後(あとぅ)追(うぃ)出(んぢゃ)さりーくとぅ、ちゃーがなし、くぬ、本当(ふんとー)しぬ子供(わらばー)追(うぃ)出(んぢゃ)さわるやる、んち、うりから、自分(どぅー)ぬわっさる事(くとー)さーなかい、むる弟(うっとぅ)んかい覆(うーし)てぃ弟(うっとぅ)ぬるせーるんでぃ、言(いゃー)なかいそーしが、後(あとー)親達(うやぬちゃー)、くれーあねーあらんしがやー、んでぃ思(うむ)いがちーん、ふんでーする子供(わらばー)、泣虫子供(なちぶさーわらばー)る育(すだ)てーくとぅ、自分(どぅー)ぬ子(くゎ)と、同様(いーぬぐとぅ)かなさるあくとぅ、「あんやみ、いーあんやみ。」んでぃ言(いゃ)がなー、成人(ふどぅふどぅ)なてぃさくとぅ、今度(くんどー)、乱暴者(ぼーちりーむん)なてぃ、うぬ弟(うっとぅ)、追(うぃ)出(んぢゃ)ちねーらん。さくとぅ、なー行(い)ちゅるとぅくるぬねーらんくとぅ、うぬ弟(うっとー)、仕方(しか)ならん、寺(てぃら)んかい行(い)ちゃーに坊主(ぼーじ)んかい、「一夜(ちゅよろー)泊(とぅ)まらちくぃみそーり。」んち、頼(たる)だくとぅ、「ぬーが。」んち坊主(ぼーじ)ぬ問(とー)たくとぅ、「かんかんぬ次第(しでー)し、追(うぃ)出(んぢゃ)さっとーいびん。」でぃち返答(ふぃんとー)さくとぅ、うぬ坊主(ぼーじ)ぬ、「とー、あんせーやー、くまんかい馬(んま)ぬ居(う)くとぅ、うり乗(ぬ)てぃ行(いん)ぢゃーなかい、うぬ馬(んま)ぬ止(とぅ)まいっとぅくまー、富豪(うぇーき)ぬ家(やー)ぬ門(じょー)やる筈(はじ)やくとぅ、んまんぢ頼(たる)まーに、下男(じにん)なてぃ暮らしよー、あんしーるんせー、後(あとー)いー事(くとぅ)ぬあさ。くぬ馬(んまー)、一夜(ちゅゆる)に百里ん走(はい)くとぅ、一日(ふぃっちー)ねー千里(しんり)ん走(はい)るあたいぬ、大変(じこー)いー馬(んま)やくとぅ、やーが思(うむ)とーるとぅくまうてぃ仕事(しぐとぅ)しーねー、馬(んま)やー側(すば)んかい居(う)る筈(はじ)やくとぅ、やーや、うぬ馬(んま)乗(ぬ)てぃ行けー。」んち、そーてぃやらちゃくとぅ、あんさくとぅ、だー、うれーなー、家(やー)んねーらんどぅ、あるむんぬんでぃ言(いゃー)なかい、しぐ、いっさんばーえーさくとぅ、富豪(うぇーき)ぬ家(やー)ぬ前(めー)んぢ止(とぅ)てぃさくとぅ、馬(んまー)家(やー)ぬ後(くし)んぢ隠(くゎっくゎ)さーなかい、「下男(じにん)しくぃみそーり。」んち頼(たる)だくとぅ、「やーやなー、使(ちか)いるむんやれー、じょーしちゃー達(たー)手伝(てぃがねー)んうあたいるしみらりーんどーや、あんししむみ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「うー、しまびーん。」でぃち、仕事(しぐとぅ)しみたくとぅ、うーはまい、じょーしちゃー達(たー)ぬ手伝(てぃがねー)から、奉公人達(しんかぬちゃー)ぬ手伝(てぃねー)んゆーすくとぅ、うり見(んー)ち、主人(ぬーせー)、「うーん、くれー、働者(はたらちゃー)子供(わらばー)がちょーん。」でぃち、うっさそーしが、だー、うれー、じょーしちゃー達(たー)ぬ手伝(てぃがねー)るやくとぅ、窯ぬ灰(ふぇー)掻(か)ちゃーんぬーんしーるさくとぅ、あんさーに、寝(に)んるとぅくろーねーらん、窯ぬ前(めー)うてぃ寝(に)んてぃ、ちゃー灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃ、頭(ちぶる)んぱさぱさしそーしが、今度(くんどー)、うんぐとぅそーるうちに二月(にんぐゎち)なてぃ、二月(にんぐゎち)ぬ二日(ふちか)ねー、畑山勝負(はるやますーぶ)ぬ有(あ)くとぅ、うぬ時(ばー)ねー、競馬(んまはらし)んぬーんあ有(あ)しが、だー、うれー、青年(にーせー)なてぃん、「りっちゃーんまんかい行か、やーやゆー働(はたら)ちょーくとぅ、今日(ちゅー)や、ゆくれー。」んでぃ、言(い)ちん、「私(わん)ねー仕事(しぐとぅ)ぬ有(あ)いびーくとぅ、とー、皆(んなー)行(いん)ぢめんそーり、家(やー)や、私(わー)が見(んー)ちょーちゃびーん。」でぃち行かん、平生(ふぃーじー)から、んまぬ家(やー)ぬ一人娘(ちゅいいなぐんぐゎー)の、「くぬ青年(にーせー)や変(か)わい者(むん)、皆(んな)がゆくいぶさーしーにんゆくらん、ぬーがな有(あ)いるすがやー。」んち、ちゃー目(みー)付(ち)きとーるばーやしが、あんさくとぅ、夜(ゆる)にっかなてぃから、くーてんぐゎーコンコンすくとぅ、ぬーやがやーんち、見(ん)ちゃくとぅ、だー、うれー、平生(ふぃーじー)やふぃんがーし、灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃる居(う)くとぅ、あんそーしが、夜(ゆる)ないねー、重箱(じゅうばく)ぬやんだー持(む)ち出(んぢ)やーなかい、うりんかい、砂(しな)とぅ、灰(ふぇー)、混(ま)んきてぃ入(い)りやーなかい、うりんかい、字(じー)書(か)ち習(なれー)さぎーん、あんし字(じー)ぬ、重箱(じゅうばく)ぬ満杯(みっちゃき)なてぃ、書(か)からんなてぃしーねー、コンコンみかち、箱(はく)打(う)ちーねー、書(か)ちょーる字(じー)や全部(むる)ちゃーりーん。あんさーに、また、書(か)ち満杯(みっちゃき)ないねー、また、外側(ふかばた)打(う)ちちゃーちさくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)うりみーちきてぃ、くれー、ただぬ人(ちょー)あらん、でぃちさーなかい、うりが寝(に)んじゅるとぅくま、よんなーよんなー開(あ)てぃ見(んー)ちゃくとぅ、割り碗(まかい)んかい菜種油(まーあんだ)入(いっ)てぃ、うりんかい、てぃーさーじぬちり入(い)りやーなかい、うり燈芯(とぅーじん)立(た)てぃ、火(ふぃー)ぐゎー付(ち)きやーなかい、夜中(ゆなか)皆(んな)が寝(に)んてぃから、勉強(むんなれー)さぎーん。「とー、くれー、ただぬ人(ちょー)あらん。」でぃち思(うむ)とーるうちに、一年(ちゅとぅ)すぎてぃ、また、今度(くんどぅ)ん、畑山勝負(はるやますーぶ)なてぃ、なー、んまんかい、大変(じこー)ぬ富豪(うぇーきんちゅ)ぬちゃー、皆(んな)めんせーくとぅ、「りっちゃー、灰坊三良(ふぇーばさんだー)ん行かな。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「う、う、う、私(わん)ねーいちゅなさいびーくとぅしまびーん。」でぃち、行かんしが、皆(んな)が出(んぢ)てぃ行(いん)ぢさくとぅ、今度(くんどー)、自分(どぅー)んちゅらすがいさーなかい、だー、うぬ馬(んま)ぬ背(ながに)んかえー、ちゃーうりが衣装(いそー)やくんち引(ふぃ)っ付(ち)きてぃるうくとぅ、美(ちゅら)着物(ぢん)着(ち)やーなかい出(んぢ)てぃさくとぅ、なー、稀(まり)な美青年(ちゅらにーせー)なてぃさくとぅ、今度(くんどぅ)ぬ競馬(んますーぼー)ちゃーなたがんでー、うぬ美青年(ちゅらにーせー)が一番なてぃ勝(まか)ちさくとぅ、終(う)わいしとぅまじゅんうれー、馬(んま)乗(ぬ)てぃふぃんぎーんねーし、はちさくとぅ、まーぬ誰(たー)がやらんわからんなてぃ、うぬ灰坊三良(ふぇーばさんだー)や、家(やー)かい帰(けー)てぃ、着物(ちぬ)ん着替(ちーけー)やーなかい、また、灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃさくとぅ、うぬ後(あとぅ)、皆(んな)家(やー)かい帰(けー)てぃちゃーなかい、んまぬ主人(ぬーし)ぬ、「今日(ちゅー)がなー二月(にんぐゎちゃー)やい、私達(わったー)ん年(とぅし)寄(ゆ)りとーくとぅ、私達(わった)婿(むーく)ないし、誰(たー)がましやらんち皆(んな)さーなかい、協議(ぢんみ)し、くぬ家(や)ぬ後(あとぅ)ちじゅし、今(なま)から決(き)みーんちやしが、ちゃーせーましがやー。」んちさくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)ぬ、「武士(さむれー)ん誰(たー)ん欲(ふ)さーねーらんしが、私達(わったー)下男達(じにんぬちゃー)から、私達(わったー)家庭(ちねー)ぬ事(くとぅ)ゆー知(しっ)ちょーる下男達(じにんぬちゃー)から婿(むーこー)選(いら)ぶん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、主人(ぬーせー)、「えー、あぬい、しむんどー、家庭(ちねー)ぬ内容(うちゅー)んゆー知(しっ)ちるうくとぅ、ゆー知(しっ)ちょーる人(ちゅ)とぅ夫婦(みいとぅんだ)ないるんせー、くぬ家庭(ちねー)や、たったまけーてぃ行(い)ちゅる筈(はじ)やくとぅや、いー考(かんげ)えやさ必(かんな)じくれーびけーせー、人(ちゅ)ぬ暮らし方(がた)んでぃせーならんくとぅ、よーてーん、ゆー知(しっ)ちょーせーましやさ。」んち、さくとぅ、「とー、あんせー、ちゃーし選(いら)ぶが。」んでぃる事(くとぅ)んかいなたくとぅ、娘(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「私(わー)が今(なま)までぃ平生(ふぃーじー)使(ちか)とー手鞠(まーい)や、土手(あぶし)んかい有(あ)る水苔(まーいぶーくー)る取(とぅっ)てぃち作(ちゅく)てーしが、飾(かざ)い手鞠(まーい)んち、蘇鉄(すーてぃちゃー)ぬ中子(なかぐー)んかい引(ふぃ)っ付(ち)かとーる綿毛(まーいぶーく)さーい作(ちゅく)てーる手鞠(まーい)ぬ有(あ)くとぅ、私(わー)がんまぬ台(でー)んかい立(たっ)ちょーてぃ、うぬ前(めー)から、一人(ちゅい)なー、一人(ちゅい)なー、歩(あっ)かち、うぬ手鞠(まーい)ぬ落(う)てぃやーなかい、当(あ)たたる人(ちょー)、私(わー)夫(うとぅ)ないる人(ちゅ)。」んち、さくとぅ、主人(ぬーせー)、「うーん、ゆたさん。」りち、親達(うやぬちゃー)うりから、使(ちか)とーる下男達(じにんぬちゃー)、武士(さむれー)ぬ達(ちゃー)、皆(んな)合点(がってぃん)しみそーちゃくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)、ちゅらすがいし、飾(かざ)い手鞠(まい)持(む)っち、台(でー)ぬ上(うぃ)んかい立(たっ)ち、うぬ前(めー)から、一人(ちゅい)なー、一人(ちゅい)なー、歩(あっ)ち終(う)わるか、うぬ手鞠(まーえー)落(う)とぅさんなたくとぅ、「あぜー、男達(いきがぬちゃー)や、うっさるうしが。」んち、母親(いなぐぬうや)や言(い)みそーちゃくとぅ、娘(うぃなぐんぐゎー)、「なーひん居(う)いびーん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「なー残(ぬく)とーせー灰坊三良(ふぇーばさんだー)一人(ちゅい)るやんどーやー。」んでぃ言(い)みそーちゃくとぅ、「うー。」んちさーなかい、そーてぃちゃくとぅ、今日(ちゅー)ん、平生(ふぃーじー)そーんねーし、灰(ふぇー)掻(か)ちかんてぃ、汚(ゆぐ)り切(ち)り、垢(ふぃんぐー)だらかーし、台(でー)ぬ前(めー)通(とー)たくとぅ、うりが頭(ちぶる)んかい、うぬ手鞠(まーい)や落(う)てぃさくとぅ、親達(うやぬちゃー)や、くさみち、「やーや、なー、親(うや)ぬ考(かんげ)えん、やー考(かんげ)えん、話いし、当(あ)たとーんちる、下男達(じにんぬちゃー)から選(いら)でぃんしむんでぃ言(い)ちゃる、灰坊三良(ふぇーばさんだー)んかい当(あ)てぃーるむんやれー、なー、くぬ家(やー)んかえー置(う)からんくとぅ、出(んぢ)てぃ行(い)き、追(うぃ)出(んぢゃ)すん。」でぃ言(い)ちゃくとぅ、「うー。」んでぃ言(いゃー)なかい、側(すば)んかい、灰坊三良(ふぇーばさんだー)や正座(ふぃさまんちゅー)しいちょーるばーやくとぅ、うりが側(すば)んぢ、娘(うぃなぐんぐゎ)ぬ、「三良(さんだー)よー、着物(ちん)着替(ちーけー)てぃ来(くー)わ。」んでぃ言(い)ちゃくとぅ、「娘(うぃなぐんぐゎ)ぬわかとーみせーるむんやれーなー、私(わん)ねー、仕方(しかたー)ないびらん。」りち、行(い)ちゃーなかい、今度(くんどー)、先刻(きっさ)ぬ二月(にんぐゎちゃー)ぬ、あぬ衣装(すがい)し、競馬(んまはらし)ぬ時(ばー)ぬ着物(ちん)着(ち)やーなかい、頭(ちぶる)ん立派(りっぱん)さばち、馬(んま)んすがらち乗(ぬ)やーなかい、門(じょー)から入(いっ)ちちゃくとぅ、一人(ちゅい)ん残(ぬく)さん、たましぬぎてぃ、今度(くんどー)一番なとーる馬(んまー)、くぬ馬(んま)、人(ちょー)、くぬ人(ちゅ)、んちさくとぅ、三良(さんだー)や、馬(んま)から降(う)りてぃ、御主人達(ぐすじんぬちゃー)二人(たい)んかい向(ん)かてぃ、「じちぇーな私(わん)ねー、まーまー後(あとぅ)継(ち)じゅる王子(をーじ)るやしが、世(ゆ)ぬ中わからんあれー、下々(しむじむ)ぬ事(くとぅ)わからんあれー、ちゃっさ位(くれー)や高(たか)さてぃん、ぬーんならん、沖縄(うちなー)うてー身分ぬ位(くれー)や、王(をー)ん、按司ん皆(んな)あしが、仕事(しぐとぅ)ぬ位(くれー)や、一、農作(むじゅくい)、二、学問(がくむん)でぃちあぬー農作(むじゅくい)、作(ちゅく)いらがる、一番やる、やくとぅ、私(わん)ねー、一番ぬ業(わざ)すっとぅくまうてぃ、ちゃんぐとぅーしすがやー、んち、うり習(なれ)えがるちゃる。とー、娘子(うぃなぐんぐゎー)親(うや)ぬ言(いゅ)る事(くとぅ)ん聞(ち)かのーあてぃん、私(わん)にん貴方(うんじゅなー)二方(たとぅくる)んかいゆくしぬみーし、騙(だま)かちるそーいびーくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)私(わん)にんかい、くぃてぃくぃみそーり。」んちさくとぅ、だー、うれー、王子(をーじ)ぬあん言(い)みせーくとぅ、親達(うやぬちゃー)や、「ゆたさいびん。」でぃち、返答(ふぃんとー)うなきたくとぅ、うぬ娘(うぃなぐんぐゎー)とぅ王子(をーじ)とぅ夫婦(みいとぅんだ)なてぃ、うぬ後(あとぅ)、下々(しむじむ)ぬ人達(ちゅぬちゃ)事(くとぅ)ゆー考(かんげ)えいる按司なたんでぃる話い。くりが灰坊三良(ふぇーばさんだー)ぬ話い。〔共通語訳〕 これは、灰坊三良(ふぇーばさんだー)の話。昔あるところに富豪がおりましたが、その富豪には子供がいないので、そこ、ここの易判断者に行って聞いても思うようにいかず、御嶽(うたき)など巡って拝んでも子供は授かりません。そんな時、一人の女友達が、「おい、君達は、見せ卵を入れておけば子供を産めるよ。」と言いますので、「その見せ卵とは何か。」と言いますので、「鶏などが、山産みと言って、あそこ、ここに卵を産み、巣を作らないで卵を産んでいく事で、何にもまとまらないから、古い籠に枯れ葉などを入れて巣を作り、その中に卵を一つ入れて鶏が見えるようにしておくと、鶏はそれを見て、『あら、ここに卵がある、ここが卵を産む所かな。』と思って、そこに入って卵を産むようになる。その始めに入れるのが見せ卵。」と言って、空でもいいからそこに卵を入れておいて、産ませるのである。それが見せ卵だが、「君達には親戚の子供を連れてきて、自分の子供同様にして、二人の間に寝かして育てなさい。そうして、夫婦の交じりをする時には、男でも良い、女でも良い、玉のような子供をお授け下さいますように寝ながら祈願して交じりをすると、必ず生まれるよ。」と教えますと、早速、親戚から男の子供を養子にして、夫婦の間に寝かして育て、教えられたようにしてやりますと、友人の言っていたのが当たり、その女の身体が変わり、子を孕み、そうして産まれたのが男の子でした。すると今度は、その見せ卵にした子供は、私達に子宝が授かったのはこの子のお蔭だから、私達の子供同様、いつまでも養子として育てようという事になって、養育しているのですが、その子供は大変な甘えん坊で、妻は大変苦労して、その見せ卵の役目をした子供を育てたのですが、その甲斐あって子宝も授かったのですから、大変可愛がって育てているのですが、その後、見せ卵にした子供は兄になるわけで、後から自分達が産んだ子は弟になるわけだから、そして同じように育てているのです。したもんだから、甘えん坊の兄はその後知恵が出てきて、「ああ、そうだ、私は見せ卵であって養い親なんだから、ここにいてもどうせ後は追い出されるに違いない、何とかしてこの本当の子供を追い出してやろう。」と考え、それから悪い事を自分がやって、それなどをみな弟の仕業というようになり、悪いのは弟と言っているのですが、後は親達も、これはそうではないと思いながらも、甘えん坊の泣き虫の子供を育て上げたので、自分の子供と同様に可愛いのだから、「ああそうか、よしよし、そうだったか。」と聞き流していたのですが、成人になりますと今度は乱暴者になり、その弟を追い出してしまったのです。すると弟は行く所がないので、仕方なく歩いてまわって、後はお寺に行って坊さんに、「一晩泊めて下さい。」と頼みますと、その坊さんは、「どうしたのか。」と問いますので、「実はこのような次第で家を追い出されました。」と返答しますと、その坊さんは、「そうか、それではここに馬がいるから、この馬に乗っていけばこの馬の止まる所は大富豪の家の門の前である筈だから、そこの主人に頼んでその家の下男になって暮らしなさい。そうすると、後は必ず善い事があります。なお、この馬は一夜に百里を走り、一日走れば千里も走る大変な俊馬だから、あなたが思う事で仕事をしている間は側にいる筈だから、あなたはその馬を連れて行きなさい。」と言って、馬を連れて行かせました。そうしたら、どうせもう行く家も当てもないもんだからどうにでもなれと、一目散に馬を走らせますと、ある富豪の家の前にその馬が止まりましたので、馬を屋敷の後ろに隠して、その家に行き、「下男にして下さい。」と頼みますと、主人は、「君を使うとすると、女中や下女達の手伝いぐらいしかさせられないが、それで良いか。」と言いますので、「はい、よろしいです。」という事で仕事をさせますと、一生懸命働き、女中、下女の手伝いから、奉公人の手伝いまで良くやりますので、これを見た主人は、「ううん、これは働き者の子供が来た。」と大変喜んでいますが、それは女中、下女達の手伝いですから、竈の灰掻きなどもしなくてはなりません。寝るところもなく、竈の前に寝ていつも灰を被り、顔はぱさぱさしていますが、こんどはそのようにしているうちに、二月になり、二月二日は畑山勝負があり、その時には競馬などもありますが、彼は青年になって、「皆一緒に連れ立って行こう、君は良く働いたから今日は休め。」と言っても、「私には仕事がありますから、皆さん行っていらっしゃい、家の方は私が見ておきますから。」と言って行きません。その家の一人娘は、「この青年は変わり者、皆は休みたがっているのに休みもしない、何事かあるのでは。」と思い常に目を付けているのですが、そうすると、夜遅くなってから、小さくコンコンと音がするので、何事かと思ってよく見ると、いつもは垢に汚れて灰を被って汚い服装をしてますが、夜になると外に出て、月夜の晩などになりますと、重箱の壊れた物を持ち出して、その中に砂と灰と混ぜ合わせたものを入れて、それに字を書く練習をしています。それで字が重箱一杯になり書けなくなると、今度は外側をコンコンと打つと、書いた字はみな消えてしまうのです。すると、また練習して一杯になると、また外側を叩いて消していますので、その娘はそれを見つめていて、この人はただ者ではないと思い、そうして彼が寝る所を、ゆっくりゆっくり開けてみますと、片方の少し割れたお碗に菜種油を入れて、それに手拭いの切れっ端を入れて、それを立て燈芯にして火を着けて、小さな灯で、夜中みんなが寝てから勉強しているのです。それを見て、「この人はただの人ではない。」と思っているうちに、一年が過ぎて、また今度も二月の畑山勝負になりますと、もうそこには大変な富豪など、皆参りますので、「皆で連れ立って、灰坊三良も行こう。」と言いますと、「いいえ、私は忙しいですから宜しいです。」と言って行きませんが、皆が出ていってしまいますと、三良(さんだー)は、自分も着飾って、それはあの馬の背中に常時彼の衣装が縛りつけてありますので、美しい衣装を着けて出て来ますと、稀に見るような美青年になっています。そして、今年の競馬はどうなったかと申しますと、その美青年が一番です。勝って終わりますと同時に、彼は馬に乗ったまま逃げるようにして立ち去ってしまったので、どこの誰だかもわかりません。その灰坊三良は家に帰って、着物を着替え、また灰を被っていますと、その後皆が家に帰ってきてから、そこの主人が、「今日はもう二月でもあるし、私達も年寄りになっているから、私達の婿になる人は誰がよいか皆で協議して、この家の後継をする物を決めようと思っているがどうしたら良いか。」と申しますと、その娘が、「私は、武士も誰も欲しくはないが、私達の下男達から、私達の家庭の事を熟知している下男達から婿を選ぶ。」と言いますと、主人は、「ええ、そうか、いいよ、家庭の内容を良く知っているから、良く知った人と夫婦になれば、この家庭はますます栄えていく筈だから、それは良い考えだ。必ず階級だけでは人間は暮らしていけないから、様態もよく知った人が良いよ。」と言いまして、それではどうして選ぶかという事になりますと、娘が、「私が今まで普通に使っている手鞠は、土手にある水草を取ってきて作ってあるのだが、今一つ土手の上にある蘇鉄の葉の中心の部分の綿毛を集めて作った飾り手鞠があるが、私がその手鞠を持ってそこの台の上に立っているから、その台の前を一人一人歩かして、その毬を落として当たった人が私の夫になる人。」と申しますと、主人も、「ううん、それで良かろう。」という事で、親達の目の前で、下男達や武士達が皆合点いたしましたので、その娘は綺麗な服装で着飾り、飾り手鞠を持って台の上に立ち、その前を一人一人歩かせ、もう皆歩き終わっても娘は手鞠を落としませんので、「あれえ、男達はそれだけしかいないよ。」と母親は申しますと、その娘は、「もっとおります。」と娘が言いますと、「もう残ってるのは灰坊三良の一人だよ。」母親が言いますと、「はい。」と答えますので、連れて来ますと、いつもと同じ様相で灰を被っていて、汚れも垢も付いたまま台の前を通りますと、彼の頭の上に手鞠は落ちましたので、親達は大いに怒り、「君はもう親の考えも君の考えも意見が合ったので下男達から選んでも良いと言ったのだが、灰坊三良に当たるのならば、もうこれは私の家に置く事はできないから出て行け、追い出す。」と言いますと、「はい。」と申して、側に灰坊三良は正座して座っていますのでその側に行き、娘が、「三良よ、着物を着替えてきなさい。」と申しますと、三良は、「娘さんがおわかりになっておられましたら、もう私は仕方ありません。」と言って、今度は先刻の二月の衣装で競馬の時の着物を着けて、頭も立派に櫛を通し、馬も磨いて乗り、門の方から入ってくると、一人残らずびっくり仰天。今度の二月に一番になった馬はこの馬、人はこの人です。すると、三良は馬から降りてご主人達両人に向かい、「実は私はある大名の後継になる嫡子だが、世の中の事がわからなければ、下々の事がわからなければ、何ほど、位は高くても何にもならん。沖縄においては身分の位は、王も大名もみなあるが、仕事の位は、一、農作、二、学問という事になっている。それで農作を作るのが一番だから、私は一番の仕事をしている所で、どのようにするのかそれを習いに来たのである。それで、娘は親の言う事を聞かないが、私もあなた達二人に嘘をついて騙しているのだから、その娘を私の妻にさせて下さい。」と言いますと、もうそれは、大名の後継をする方ですから、親達は、「よろしいです。」と返答申し上げますと、その娘さんは王子と夫婦になり、その後は、下々の人達の事を良く考えていく大名になったそうです。これが灰坊三良の話。平成9年2月17日 高江洲亮翻字 T3A2
全体の記録時間数 14:35
物語の時間数 14:35
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