手ぬ出じぃらー意地引き、ってね。これは、聞かされていますよ。その道理っていうのはね、結構今伝わっているの、全くその通りなんですよ。要するに物事はね、まず手をかける前に冷静に考えなさいと、いうことなんですよ。まあ、その辺のことを教えていると思うんだけど。昔こういうふうな、あったという話を持ってくると、やはり白銀堂の話になるんですよね。まず、今から、まあ、何百年前かの話か分からんけれども、薩摩が、恐らく南部辺りも支配した頃のことだと思うけどね。でぇ、糸満のある漁師ね、糸満人ですよね。そこの方が日本のね、いわゆる本土の方からお金を借りたとね。で、その借金をいつ返すからというふうに、約束の日にね、取り立てに来るわけね。しかし、準備が出来なくてね、何回も延期をお願いしたということでですね、もうとうとうこの金を貸した侍もね、もう我慢出来なくなったんでしょうね。まあそういうことでね、「殺してやる」というふうに言われてですね、こう殺してやろう、というふうにやったらね、自分の妻を、漁師の妻ね、「じゃあ、これを差し出すから」と、「自分の妻を、この証拠にもうあげるから」というふうに言ったと。そしたら、「何を言うか」と。「殺してやるぞ」というふうにね、こう刀を振り上げた時にね、この時に出た言葉が、「意地ぬ出じれぇ手引き〈意地が出たら、手を引きなさい〉、手ぬ出じれぇ意地引き〈手が出そうになったら、意地を引きなさい〉とね、沖縄にはその言葉がある。暫く待ってくれ」というふうに頼んだと。そしたら、この侍さんはね、この言葉に打たれて、まあその場は、「じゃあ、次に来る時には必ず返しなさいよ」ということでその場は引き上げてもらったと。でもその後、この侍さんはね、まあ帰って行ったら、自分の妻が、余所の男と添い寝しているところを見たと。帰って行ったら自分の可愛い妻が男の人と寝ていたと。そしたらこの者はね、「留守中に男入れてあるなあ」ということで、殺してやろうという感じでこう言った時に、この言葉を思い出してね、はては、と思って近づいて行ったら、この側に添い寝している侍姿の男性は、自分の母親だったと。これを誤ってやっていたら、結局もう人殺し。自分の親を殺すところだったというわけね。そういう教えが、いわゆる美談になっているわけね。そしてこの侍は、このお礼に来たわけですよ。それまでには準備して返すという約束だから、来た時にこちらの方も返す準備をしていたと。で、そっからこの侍もいらないとね、「この貸したお金はいりません」「いや、取いみそうり」「借りたの取ってくれ」「いやこれいらない」「意地ぬ出じらぁ手引き、手ぬ出じらぁ意地引き、というこの言葉のおかげで、自分の妻と親を殺さずに済んだ」ということで、で、そのお金は、じゃあどっちも取らないんであれば、一つこの白銀堂という、海人〈漁師〉の安全を祈願する白銀堂ってありますよね、そこのほうに、じゃあ祀ろうじゃないかと。向こうに捧げようじゃないかという形でね、そこのほうにお金をあげたという、そういうことがあるんでね。まあ、そういうことで、誠をやるということと、短気が先になってはいけないという、また、誠意が通じれば、こういう人助けにもなるという、一つのそういう教えですね。
| レコード番号 | 47O236000 |
|---|---|
| CD番号 | 47O23C318 |
| 決定題名 | 白銀堂由来(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 花城康勝 |
| 話者名かな | はなしろこうしょう |
| 生年月日 | 19380201 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 嘉手納町千原 |
| 記録日 | 19930829 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄国際大学口承研 |
| 元テープ番号 | 嘉手納T17B14 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | かでなの民話P219 |
| キーワード | 薩摩武士,糸満漁師,借金,諺 |
| 梗概(こうがい) | 手ぬ出じぃらー意地引き、ってね。これは、聞かされていますよ。その道理っていうのはね、結構今伝わっているの、全くその通りなんですよ。要するに物事はね、まず手をかける前に冷静に考えなさいと、いうことなんですよ。まあ、その辺のことを教えていると思うんだけど。昔こういうふうな、あったという話を持ってくると、やはり白銀堂の話になるんですよね。まず、今から、まあ、何百年前かの話か分からんけれども、薩摩が、恐らく南部辺りも支配した頃のことだと思うけどね。でぇ、糸満のある漁師ね、糸満人ですよね。そこの方が日本のね、いわゆる本土の方からお金を借りたとね。で、その借金をいつ返すからというふうに、約束の日にね、取り立てに来るわけね。しかし、準備が出来なくてね、何回も延期をお願いしたということでですね、もうとうとうこの金を貸した侍もね、もう我慢出来なくなったんでしょうね。まあそういうことでね、「殺してやる」というふうに言われてですね、こう殺してやろう、というふうにやったらね、自分の妻を、漁師の妻ね、「じゃあ、これを差し出すから」と、「自分の妻を、この証拠にもうあげるから」というふうに言ったと。そしたら、「何を言うか」と。「殺してやるぞ」というふうにね、こう刀を振り上げた時にね、この時に出た言葉が、「意地ぬ出じれぇ手引き〈意地が出たら、手を引きなさい〉、手ぬ出じれぇ意地引き〈手が出そうになったら、意地を引きなさい〉とね、沖縄にはその言葉がある。暫く待ってくれ」というふうに頼んだと。そしたら、この侍さんはね、この言葉に打たれて、まあその場は、「じゃあ、次に来る時には必ず返しなさいよ」ということでその場は引き上げてもらったと。でもその後、この侍さんはね、まあ帰って行ったら、自分の妻が、余所の男と添い寝しているところを見たと。帰って行ったら自分の可愛い妻が男の人と寝ていたと。そしたらこの者はね、「留守中に男入れてあるなあ」ということで、殺してやろうという感じでこう言った時に、この言葉を思い出してね、はては、と思って近づいて行ったら、この側に添い寝している侍姿の男性は、自分の母親だったと。これを誤ってやっていたら、結局もう人殺し。自分の親を殺すところだったというわけね。そういう教えが、いわゆる美談になっているわけね。そしてこの侍は、このお礼に来たわけですよ。それまでには準備して返すという約束だから、来た時にこちらの方も返す準備をしていたと。で、そっからこの侍もいらないとね、「この貸したお金はいりません」「いや、取いみそうり」「借りたの取ってくれ」「いやこれいらない」「意地ぬ出じらぁ手引き、手ぬ出じらぁ意地引き、というこの言葉のおかげで、自分の妻と親を殺さずに済んだ」ということで、で、そのお金は、じゃあどっちも取らないんであれば、一つこの白銀堂という、海人〈漁師〉の安全を祈願する白銀堂ってありますよね、そこのほうに、じゃあ祀ろうじゃないかと。向こうに捧げようじゃないかという形でね、そこのほうにお金をあげたという、そういうことがあるんでね。まあ、そういうことで、誠をやるということと、短気が先になってはいけないという、また、誠意が通じれば、こういう人助けにもなるという、一つのそういう教えですね。 |
| 全体の記録時間数 | 6:04 |
| 物語の時間数 | 5:40 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |