根人武士(共通語)

概要

沖縄では、まあ玉井新垣(たまいあらかち)かといったら、政府から死刑にされたんだけどね、力もある武士でね、昔の人だったらだれ、でも知っているんですよ。その玉井新垣(たまいあらかち)は、根人(にっちゅ)の武士(ぶさー)というのが、沖縄で一番の武士であるということを知っているもんだから、根人(にっちゅ)の武士(ぶさー)の所にきて、「試合してみようか。」という。根人(にっちゅ)の武士(ぶさー)の目方は、ちょっと四十キロぐらいなもんよ。玉井新垣(たまいあらかち)は百四十キロもあるんだよ。「じゃあ、やってもいい。田んぼに行って試合してみよう。」と根人の武士はいうてね。山の中にちょっとした田んぼがあり、そこで鰻を取ったりするかやぶきの家ぐゎーがあるんだよ。「わしは、家(やー)ぐゎーにいるからきなさい。」いゆうて。それで根人武士(にっちゅぶさー)の家には囲炉(いろり)があるんだ。玉井新垣(たまいあらかち)が行くと、そこに座ってね、お茶をわかしている。玉井新垣(たまいあらかち)が試合するつもりでやってくると、家の外に竹槍がある。根人(にっちゅ)の武土(ぶさー)は囲炉(いろり)の前に座ってやかんでお茶をわかしながら、「あんたね、その竹槍を持ってきてねえ、わしが死んでもかまわないから後ろから、わしに投げなさい。」いうて。玉井新垣(たまいあらかち)は、「そうかい。」というて、その竹槍を取って後ろから投げたらしいよ。投げたら、その囲炉(いろり)の前にうつむいて、見てもいないのに取ってしまってよ、すぐ反対にまた、こう投げ返したらしいです。すると、投げた竹槍は腕をかすめていったよ。その武士はびっくりしてよ、「はあ、あなたが的をめがけて投げていたら、俺は死んでいただろうなあ。急に投げられて逃げられなかったよ。」というと、「そうだよ。わざと当たらないように投げたんだよ。本当に当てようと思ったら、あんたは死んでしまっている。」「ああ、そうか。」いうてね、「ねえ、どうもないからもっとやろうか。今度はどうするか。」そこに田があるんです。両側に田があり、昔のあぜ道は一人ぐらいしか通れないくらいの狭いところなんだよ。そんなところでやったら、力の弱いのが負けるのは当然だろう。力のいっぱいあるあの玉井新垣(たまいあらかち)は、「じゃあ、田んぼに行こう。」というて、それで田んぼに行って、棒を立ててきてよ、二人はこっちに立ってね、「あんたは、こっちからまわって、わしはこっちからまわるから、こう分かれて走って行って、この棒を取ってきて棒で勝負しよう。」と先に棒を取った方が勝ちになる勝負の約束してなあ。それで田を、こうまわって行ったらよ、これは遠いんだよ。この田の中は走れるはずはないと思っていると、根人武士はどうして歩いたもんかわからんが、普通の人間では歩けんけど、水のある田の中をまっすぐ行って、その棒を取った。玉井新垣(たまいあらかち)はこうまわったもんだから、距離が長いのでまた負けてしまった。それで玉井新垣が、「おれは、もうどうしようもない。」っていうて、その時も降参しているけれど。今度はまた、山原から・那覇(なは)に材木を運ぶ山原船(やんばるせん)を持ってきておるんもだからよ、「もう陸ではあんたには勝つことができないから、今度は逃げるところがない船の中に行ってやってみよう。」「ああ、いいよ。」と、船の中に行ったよ。それで、二人がこう船の中でかまえてよ、二人かまえてやろうという時に、根人武士(にっちゅぶさー)はゆれるけれど山原船(やんばるせん)のこれぐらいしかない船べりを走って、「おーい、こっちこい。どうだこれんだろう。これんだろう。」いうと、玉井新垣(たまいあらかち)は大きな体でもあるし。こんな狭い船べりは渡れないもんだからよ、王井新垣(たまあらかち)は、 「こっちへこい。」と、また帰ってくるのを待っているんだよ。今度は、帰る時にはどうして帰るかといったらよ、船のこの横をつかまえてよ、まっすぐこう後ろに、ちょうど床体操みたいして、ずっとまっすぐ胴体を伸して渡ってきたもんだから、玉井新垣(たまいあらかち)は、また負けて降参したという話だよ。

再生時間:10:25

民話詳細DATA

レコード番号 47O412390
CD番号 47O41C093
決定題名 根人武士(共通語)
話者がつけた題名
話者名 伊波幸太郎
話者名かな いはこうたろう
生年月日 19040101
性別
出身地 石川市石川
記録日 19820613
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 石川市T09A04
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 伝説
発句(ほっく)
伝承事情 家の人から聞いた。
文字化資料 いしかわの民話伝説編P82
キーワード 玉井新垣,政府から死刑,武士,根人武士,鰻,竹槍,山原船
梗概(こうがい) 沖縄では、まあ玉井新垣(たまいあらかち)かといったら、政府から死刑にされたんだけどね、力もある武士でね、昔の人だったらだれ、でも知っているんですよ。その玉井新垣(たまいあらかち)は、根人(にっちゅ)の武士(ぶさー)というのが、沖縄で一番の武士であるということを知っているもんだから、根人(にっちゅ)の武士(ぶさー)の所にきて、「試合してみようか。」という。根人(にっちゅ)の武士(ぶさー)の目方は、ちょっと四十キロぐらいなもんよ。玉井新垣(たまいあらかち)は百四十キロもあるんだよ。「じゃあ、やってもいい。田んぼに行って試合してみよう。」と根人の武士はいうてね。山の中にちょっとした田んぼがあり、そこで鰻を取ったりするかやぶきの家ぐゎーがあるんだよ。「わしは、家(やー)ぐゎーにいるからきなさい。」いゆうて。それで根人武士(にっちゅぶさー)の家には囲炉(いろり)があるんだ。玉井新垣(たまいあらかち)が行くと、そこに座ってね、お茶をわかしている。玉井新垣(たまいあらかち)が試合するつもりでやってくると、家の外に竹槍がある。根人(にっちゅ)の武土(ぶさー)は囲炉(いろり)の前に座ってやかんでお茶をわかしながら、「あんたね、その竹槍を持ってきてねえ、わしが死んでもかまわないから後ろから、わしに投げなさい。」いうて。玉井新垣(たまいあらかち)は、「そうかい。」というて、その竹槍を取って後ろから投げたらしいよ。投げたら、その囲炉(いろり)の前にうつむいて、見てもいないのに取ってしまってよ、すぐ反対にまた、こう投げ返したらしいです。すると、投げた竹槍は腕をかすめていったよ。その武士はびっくりしてよ、「はあ、あなたが的をめがけて投げていたら、俺は死んでいただろうなあ。急に投げられて逃げられなかったよ。」というと、「そうだよ。わざと当たらないように投げたんだよ。本当に当てようと思ったら、あんたは死んでしまっている。」「ああ、そうか。」いうてね、「ねえ、どうもないからもっとやろうか。今度はどうするか。」そこに田があるんです。両側に田があり、昔のあぜ道は一人ぐらいしか通れないくらいの狭いところなんだよ。そんなところでやったら、力の弱いのが負けるのは当然だろう。力のいっぱいあるあの玉井新垣(たまいあらかち)は、「じゃあ、田んぼに行こう。」というて、それで田んぼに行って、棒を立ててきてよ、二人はこっちに立ってね、「あんたは、こっちからまわって、わしはこっちからまわるから、こう分かれて走って行って、この棒を取ってきて棒で勝負しよう。」と先に棒を取った方が勝ちになる勝負の約束してなあ。それで田を、こうまわって行ったらよ、これは遠いんだよ。この田の中は走れるはずはないと思っていると、根人武士はどうして歩いたもんかわからんが、普通の人間では歩けんけど、水のある田の中をまっすぐ行って、その棒を取った。玉井新垣(たまいあらかち)はこうまわったもんだから、距離が長いのでまた負けてしまった。それで玉井新垣が、「おれは、もうどうしようもない。」っていうて、その時も降参しているけれど。今度はまた、山原から・那覇(なは)に材木を運ぶ山原船(やんばるせん)を持ってきておるんもだからよ、「もう陸ではあんたには勝つことができないから、今度は逃げるところがない船の中に行ってやってみよう。」「ああ、いいよ。」と、船の中に行ったよ。それで、二人がこう船の中でかまえてよ、二人かまえてやろうという時に、根人武士(にっちゅぶさー)はゆれるけれど山原船(やんばるせん)のこれぐらいしかない船べりを走って、「おーい、こっちこい。どうだこれんだろう。これんだろう。」いうと、玉井新垣(たまいあらかち)は大きな体でもあるし。こんな狭い船べりは渡れないもんだからよ、王井新垣(たまあらかち)は、 「こっちへこい。」と、また帰ってくるのを待っているんだよ。今度は、帰る時にはどうして帰るかといったらよ、船のこの横をつかまえてよ、まっすぐこう後ろに、ちょうど床体操みたいして、ずっとまっすぐ胴体を伸して渡ってきたもんだから、玉井新垣(たまいあらかち)は、また負けて降参したという話だよ。
全体の記録時間数 10:41
物語の時間数 10:25
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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