昔、裁判、判事している人に娘が一人いたわけ。アヤー(お母さん)もいるが体が弱かった。そして、犬のアカーを飼っていた。ターリー(お父さん)が、「おいアカー、アヤーが良くなる薬を捜してくれないか。」と語りかけると、「グーグー。」したって。アカーは、娘にいつもまとわりついて欲しがっているわけでしょう。グーグーしながら、山に脇目もふらずに出かけたって。何かをくわえて来て、台所の鍋の前で動作をしたので、「ああ、これを煎じて飲ますと良くなるわけだね。」と言って、ターリーが、「煎じて飲ませようね、アヤー。きっと良くなるから。」と言って。山から取って来た草木を洗って、鍋に入れて煎じて飲ませると、「しだいに良くなるようだよ、ターリー。」と言った。「良くなるみたいか。」と。「おいアカーよ、良くなるようだから明日も捜して来いよ。」と言った。翌日も草を取りに行って、捜してくわえて来たので、煎じて飲ませると、「私は良くなるようだよ、ターリー。」と言って、「そうか、いいことだ。」と。「さあ、アカーよ、おまえも難儀だろうし、アヤーも良くなっていることだし、取って来なくていいよ。」と言い、また、「アヤーが良くなるのであれば、おまえが好きなものを何でもあげるから。」との約束であったから、アヤーは良くなったので、アカーが欲しがっているのは娘だから、牛肉を買って来て与えても顔をそむけて喰わない。何を与えても喰わない。すると、「いったい、何が食べたいかアカー。」とターリーが言うと、アカーは顔をそむけるばかりで、娘の股ぐらからすり抜けたり、股ぐらをこすったりした。ターリーは、「これは、やっかいなことになった。」と思った。夜、寝るときになると、蚊帳をもちあげてアカーは娘の寝床に入って来るって。顔をパーンと叩くと、グーグーグーして飛び出したりしてね。「ターリー、アカーはいつも私が寝ていると、蚊帳を頭でもちあげて入って来るよ。私の首を抱くんだよ。」と娘が言うと、「困ったことになったもんだ、こいつは。」とターリーは心配した。また、翌日になると、 「どうするか、アカーがするままにさせてみろ。」とターリーはおっしゃった。翌日もアカーは娘の寝床に入って来たらしいんだ。人間のように娘の首を抱き、犬の白い足を娘の太股に絡ませて寝たようだった。 「もう、これがやるままさせてみなさいよ。これの言うことを聞かなければ、おまえは喰い殺されるかもしれないから。」と言われていたので、あとは自由にさせた。犬と交わるということは笑えないよ。なすがままにさせところ、とうとう一緒になった。しばらくしたら、「ターリーよー、私は身ごもっているよ。」と娘が言うと、「そうか、それはいたしかたないことだ。これからどうしたらよいものか。おまえをここに置いておくと、私も迷惑する。私が舟を出すからその舟が着くまで、どこなりと行くといい。」と言った。 「そうしてください。私たちはもう沖縄にいることはできません。」と言い、舟を出して、ターリーが、食物も積み込んで持たせて、海に流したところ宮古に着いた。そうして、宮古の白浜に着いたので、「さあ、陸に着いたよ。」と、犬は娘を下ろした。娘は、「ここは、宮古に着いたようだね。」と言って。娘とアカーは、そこの浜口で暮らしていた。そして、そこで女の子が生まれた。子どもがが背丈ほども大きくなってから、アカーは、言葉も言うようになって、「一週間は、私を捜さないでくれよ。」と言って、「捜さなければ、私は良いことがあるから。」と言ったが、それでも、女はアカーがいなくなったので、「どうしたんだろう。」と言って、浜口を捜してみた。すると、アカーは、顔をのぞかせて体は全部砂に埋まっていた。「何ということだ、おまえは私が言うこともきかないで。一週間は私を捜すなよと言ってあるのに。もう少しで人間になれるところだったのに。」と言ったので、「いいよ、それぐらいは。」と言った。それからあと、宮古は犬の子孫といわれるようになったそうだよ。
| レコード番号 | 47O421853 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C057 |
| 決定題名 | 犬婿入(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 喜久山文盛 |
| 話者名かな | きくやまぶんせい |
| 生年月日 | 18941010 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市豊原 |
| 記録日 | 19800807 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T52 B9 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下83頁 通観284頁 |
| キーワード | 裁判官,妻,娘,犬,アカー,薬,薬草,夫婦,宮古, |
| 梗概(こうがい) | 昔、裁判、判事している人に娘が一人いたわけ。アヤー(お母さん)もいるが体が弱かった。そして、犬のアカーを飼っていた。ターリー(お父さん)が、「おいアカー、アヤーが良くなる薬を捜してくれないか。」と語りかけると、「グーグー。」したって。アカーは、娘にいつもまとわりついて欲しがっているわけでしょう。グーグーしながら、山に脇目もふらずに出かけたって。何かをくわえて来て、台所の鍋の前で動作をしたので、「ああ、これを煎じて飲ますと良くなるわけだね。」と言って、ターリーが、「煎じて飲ませようね、アヤー。きっと良くなるから。」と言って。山から取って来た草木を洗って、鍋に入れて煎じて飲ませると、「しだいに良くなるようだよ、ターリー。」と言った。「良くなるみたいか。」と。「おいアカーよ、良くなるようだから明日も捜して来いよ。」と言った。翌日も草を取りに行って、捜してくわえて来たので、煎じて飲ませると、「私は良くなるようだよ、ターリー。」と言って、「そうか、いいことだ。」と。「さあ、アカーよ、おまえも難儀だろうし、アヤーも良くなっていることだし、取って来なくていいよ。」と言い、また、「アヤーが良くなるのであれば、おまえが好きなものを何でもあげるから。」との約束であったから、アヤーは良くなったので、アカーが欲しがっているのは娘だから、牛肉を買って来て与えても顔をそむけて喰わない。何を与えても喰わない。すると、「いったい、何が食べたいかアカー。」とターリーが言うと、アカーは顔をそむけるばかりで、娘の股ぐらからすり抜けたり、股ぐらをこすったりした。ターリーは、「これは、やっかいなことになった。」と思った。夜、寝るときになると、蚊帳をもちあげてアカーは娘の寝床に入って来るって。顔をパーンと叩くと、グーグーグーして飛び出したりしてね。「ターリー、アカーはいつも私が寝ていると、蚊帳を頭でもちあげて入って来るよ。私の首を抱くんだよ。」と娘が言うと、「困ったことになったもんだ、こいつは。」とターリーは心配した。また、翌日になると、 「どうするか、アカーがするままにさせてみろ。」とターリーはおっしゃった。翌日もアカーは娘の寝床に入って来たらしいんだ。人間のように娘の首を抱き、犬の白い足を娘の太股に絡ませて寝たようだった。 「もう、これがやるままさせてみなさいよ。これの言うことを聞かなければ、おまえは喰い殺されるかもしれないから。」と言われていたので、あとは自由にさせた。犬と交わるということは笑えないよ。なすがままにさせところ、とうとう一緒になった。しばらくしたら、「ターリーよー、私は身ごもっているよ。」と娘が言うと、「そうか、それはいたしかたないことだ。これからどうしたらよいものか。おまえをここに置いておくと、私も迷惑する。私が舟を出すからその舟が着くまで、どこなりと行くといい。」と言った。 「そうしてください。私たちはもう沖縄にいることはできません。」と言い、舟を出して、ターリーが、食物も積み込んで持たせて、海に流したところ宮古に着いた。そうして、宮古の白浜に着いたので、「さあ、陸に着いたよ。」と、犬は娘を下ろした。娘は、「ここは、宮古に着いたようだね。」と言って。娘とアカーは、そこの浜口で暮らしていた。そして、そこで女の子が生まれた。子どもがが背丈ほども大きくなってから、アカーは、言葉も言うようになって、「一週間は、私を捜さないでくれよ。」と言って、「捜さなければ、私は良いことがあるから。」と言ったが、それでも、女はアカーがいなくなったので、「どうしたんだろう。」と言って、浜口を捜してみた。すると、アカーは、顔をのぞかせて体は全部砂に埋まっていた。「何ということだ、おまえは私が言うこともきかないで。一週間は私を捜すなよと言ってあるのに。もう少しで人間になれるところだったのに。」と言ったので、「いいよ、それぐらいは。」と言った。それからあと、宮古は犬の子孫といわれるようになったそうだよ。 |
| 全体の記録時間数 | 5:26 |
| 物語の時間数 | 5:26 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |