伊芸にも喰われ屋嘉にも喰われという話は二つある。一つ一つずつ私が話するからね。宜野座村に漢那というところがあるが、その漢那の村に非常にきれいな女で、漢那クーギーといわれるのがいた。その時代は那覇には、歩いて行ったらしい。乗り物はないから朝早く起きて、ようやく伊芸まで来たわけ。そうしたら、太陽が高く上がったので、汗が出て、「もう、こんなに暑くて大変だから、ターグムヤーで浴びてから出かけることにしよう。」と言って、ターグムヤーで浴びて出たらしい。出たら、その女のホークーギ(陰毛)からしずくが垂れて、ちょうど今のような旱魃だったはず、マークーという砂があるでしょう、これに水が垂れたあとがあるわけ。すると、このターグムヤーのそばには、苗床をもっている人がいて、前の晩、苗床の苗を全部ひっこ抜かれてしまっていた。そうしたら、その女のホークーギから垂れているしずくを、苗床に入り苗のしずくが垂れているもとを勘違いして、とうとう漢那クーギーは盗みのかどで引っ捕らえられてしまった。その女が盗んだのではないのだが、「おまえは、うちの新しい苗を盗んだね。」と言ったから、「いや、盗まなかった。」と言うと、「おまえ、嘘つくな。ここにちゃんと証拠があるのに、なんでこれを隠すか。」と言ったら、「私はなにも盗みはしていないのに。」と言った。「おまえ、苗を盗んだだろうが。」と。「どうして、苗を盗んだとわかるか。」と聞いたら、「ほら、ここに水が垂れているではないか。」と言ったわけさ。そうしたら、「私は、苗は取ってはない。」と言いはったので、「おまえは、それでも言いはるのであれば村に引っ張って行くしかない。」と言って、ふんばったわけ。村の大勢の人に見せるより、この人に見せた方がいいと言って、「私は、本当はクーギが多くてここで浴びたものだから、それで垂れているんだよ。」と言った。また、ポトンとそこにしずくが垂れたので、「ほら、垂れるでしょう。」と見せたら、そのときになって、「これは悪いことをした、私は確かめもしないで盗人を捕まえてしまった。私が悪かった。」と言って、それで疑いをはらして、そこ通ったわけさ。それで、伊芸から屋嘉まで歩いていく間に思い定めたわけ。「このクーギがあるから、私は盗人にまちがえられて、捕まえられたりするのだ。」と言って、思いあやまって、屋嘉で火をつけてクーギを燃やしてしまったわけ。そうしたら、毛の燃える臭いがしてたまらないさあねえ。すると、屋嘉では山羊が盗まれていたらしく、「山羊泥棒はここにいるよ。」と叫ばれ、捕まえられてしまった。「山羊はどこに置いたか。」と尋ねられ、「私は山羊は見てないよ。」と言うが、「今さっきここで煙の臭いがした、燃やしただろう、おまえ、どこに山羊を隠したか。」ということになったわけ。山羊は見ないよといって意地をはったので、また、女を村に引っ張って行くといっているわけ。村に引っ張られて行ったら、この人一人に見せただけではなにも恥さらしではない、村に引っ張られると、みんなに恥をさらさないといけなくなるので、「実は、私は伊芸でも今みたいに盗人とまちがえられたものだから、クーギーがあるとまた同じ目にあうからと思い、クーギを焼いてしまったのでこのようになったのだよ。山羊は見てないよ。」と言った。そう言われて見たら、見たらクーギは焼けてなくなっているので、毛の焼ける臭いがするのは当たり前で、山羊ではない。また、この女を捕まえた人も、 「ごめんなさい、私が悪かった。私がちゃんと確かめもしないで捕まえたのは悪かった、勘弁してくれ。」と言った。そうして、伊芸でも難をしのいで歩いて行った。石川の港小まで来ると、またも浴びてしまえと、わじわじーして(腹をたてて)、ホーカンバ(腹部)をぱんぱん打った。港小では鼓が盗まれていたらしい、石川では。それで、ぱんぱんと打ったら、鼓が鳴るようでしょう、太っているから。それでまた、「泥棒だあ。」と叫ばれたわけ。何を叫んでいるのかと聞いたら、その人は、鼓を盗まれているから、「おまえ、鼓はどこに置いてあるか。」と言われた。「私は鼓は盗まなかった。実は、わじわじーして自分のホーカンバを叩いたのであって、鼓は打ってはない、私の腹が鳴っているのだよ。」と言って、打って見せた。 「アギジャビヨー、鼓はこれがとったのではないや。」と言い、石川の人も、「ごめんね、ちゃんと確認もしないで捕まえたのは、私たちが悪い。」と言った。「もうこんな調子では、那覇まで行くのにどれほど難が振りかかるか分からないから、今日は行かないでおこう。」と言って、伊芸にも喰われ(伊芸でも災難にあい)、屋嘉にも喰われ(屋嘉でも災難にあい)、石川にもすっかり喰われて(石川でも災難にあってしまって)と言って、家に帰ってしまった。
| レコード番号 | 47O421793 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C055 |
| 決定題名 | 漢那クーギ(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 伊芸にも喰われ屋嘉にも喰われ |
| 話者名 | 古謝振裕 |
| 話者名かな | こじゃしんゆう |
| 生年月日 | 19080605 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市西原 |
| 記録日 | 19800801 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T50 A7 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 艶笑譚 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 雨降りや祝の席などに聞いた |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下767頁 通観766頁 |
| キーワード | 漢那クーギ,陰毛,那覇,ターグムヤー,旱魃,苗床,山羊,泥棒,伊芸,屋嘉,太鼓, |
| 梗概(こうがい) | 伊芸にも喰われ屋嘉にも喰われという話は二つある。一つ一つずつ私が話するからね。宜野座村に漢那というところがあるが、その漢那の村に非常にきれいな女で、漢那クーギーといわれるのがいた。その時代は那覇には、歩いて行ったらしい。乗り物はないから朝早く起きて、ようやく伊芸まで来たわけ。そうしたら、太陽が高く上がったので、汗が出て、「もう、こんなに暑くて大変だから、ターグムヤーで浴びてから出かけることにしよう。」と言って、ターグムヤーで浴びて出たらしい。出たら、その女のホークーギ(陰毛)からしずくが垂れて、ちょうど今のような旱魃だったはず、マークーという砂があるでしょう、これに水が垂れたあとがあるわけ。すると、このターグムヤーのそばには、苗床をもっている人がいて、前の晩、苗床の苗を全部ひっこ抜かれてしまっていた。そうしたら、その女のホークーギから垂れているしずくを、苗床に入り苗のしずくが垂れているもとを勘違いして、とうとう漢那クーギーは盗みのかどで引っ捕らえられてしまった。その女が盗んだのではないのだが、「おまえは、うちの新しい苗を盗んだね。」と言ったから、「いや、盗まなかった。」と言うと、「おまえ、嘘つくな。ここにちゃんと証拠があるのに、なんでこれを隠すか。」と言ったら、「私はなにも盗みはしていないのに。」と言った。「おまえ、苗を盗んだだろうが。」と。「どうして、苗を盗んだとわかるか。」と聞いたら、「ほら、ここに水が垂れているではないか。」と言ったわけさ。そうしたら、「私は、苗は取ってはない。」と言いはったので、「おまえは、それでも言いはるのであれば村に引っ張って行くしかない。」と言って、ふんばったわけ。村の大勢の人に見せるより、この人に見せた方がいいと言って、「私は、本当はクーギが多くてここで浴びたものだから、それで垂れているんだよ。」と言った。また、ポトンとそこにしずくが垂れたので、「ほら、垂れるでしょう。」と見せたら、そのときになって、「これは悪いことをした、私は確かめもしないで盗人を捕まえてしまった。私が悪かった。」と言って、それで疑いをはらして、そこ通ったわけさ。それで、伊芸から屋嘉まで歩いていく間に思い定めたわけ。「このクーギがあるから、私は盗人にまちがえられて、捕まえられたりするのだ。」と言って、思いあやまって、屋嘉で火をつけてクーギを燃やしてしまったわけ。そうしたら、毛の燃える臭いがしてたまらないさあねえ。すると、屋嘉では山羊が盗まれていたらしく、「山羊泥棒はここにいるよ。」と叫ばれ、捕まえられてしまった。「山羊はどこに置いたか。」と尋ねられ、「私は山羊は見てないよ。」と言うが、「今さっきここで煙の臭いがした、燃やしただろう、おまえ、どこに山羊を隠したか。」ということになったわけ。山羊は見ないよといって意地をはったので、また、女を村に引っ張って行くといっているわけ。村に引っ張られて行ったら、この人一人に見せただけではなにも恥さらしではない、村に引っ張られると、みんなに恥をさらさないといけなくなるので、「実は、私は伊芸でも今みたいに盗人とまちがえられたものだから、クーギーがあるとまた同じ目にあうからと思い、クーギを焼いてしまったのでこのようになったのだよ。山羊は見てないよ。」と言った。そう言われて見たら、見たらクーギは焼けてなくなっているので、毛の焼ける臭いがするのは当たり前で、山羊ではない。また、この女を捕まえた人も、 「ごめんなさい、私が悪かった。私がちゃんと確かめもしないで捕まえたのは悪かった、勘弁してくれ。」と言った。そうして、伊芸でも難をしのいで歩いて行った。石川の港小まで来ると、またも浴びてしまえと、わじわじーして(腹をたてて)、ホーカンバ(腹部)をぱんぱん打った。港小では鼓が盗まれていたらしい、石川では。それで、ぱんぱんと打ったら、鼓が鳴るようでしょう、太っているから。それでまた、「泥棒だあ。」と叫ばれたわけ。何を叫んでいるのかと聞いたら、その人は、鼓を盗まれているから、「おまえ、鼓はどこに置いてあるか。」と言われた。「私は鼓は盗まなかった。実は、わじわじーして自分のホーカンバを叩いたのであって、鼓は打ってはない、私の腹が鳴っているのだよ。」と言って、打って見せた。 「アギジャビヨー、鼓はこれがとったのではないや。」と言い、石川の人も、「ごめんね、ちゃんと確認もしないで捕まえたのは、私たちが悪い。」と言った。「もうこんな調子では、那覇まで行くのにどれほど難が振りかかるか分からないから、今日は行かないでおこう。」と言って、伊芸にも喰われ(伊芸でも災難にあい)、屋嘉にも喰われ(屋嘉でも災難にあい)、石川にもすっかり喰われて(石川でも災難にあってしまって)と言って、家に帰ってしまった。 |
| 全体の記録時間数 | 5:56 |
| 物語の時間数 | 5:56 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |