御主加那志前が、「渡嘉敷よ、今日は、鴨でも射って来て食べようではないか。」と言ったらしいね。「はい。」と言って、御主加那志前と一緒に行ったようだね。鴨は二つ射ったらしいのだが、「さあ渡嘉敷、鴨はきみが担ぎなさい。今日の夕飯は鴨を煎じて食べよう。」と言って、渡嘉敷に鴨を担がせ、御主加那志の家に行ったらしい。そしたら、王様は台所にいる女中に、「今日は、渡嘉敷には大根を入れてあげて、鴨の肉は一きれたりとも食べさせるな。」と言ってあったらしい。夕飯ということになって、渡嘉敷のものには、大根だけが入り、みんなのものには、鴨が入っているわけ。それでも渡嘉敷は、「何と、今日の鴨の肉のおいしいことよ。こんなおいしいものは、これまで食べたことがありません。」と言った。御主加那志前は、「これのものには鴨の肉は入れるなと言ってあったのに、渡嘉敷のものにも入れて食べらさせるとは。」と思った。渡嘉敷は食べるたびに、「今日の鴨の肉のおいしいこと。」と言うわけ、大根を食べてそう言っているわけ。そうしたら、「今日は腹一杯鴨を食べたので、明日もまた行きましょう。こんなにおいしいものを、止めるわけにはいきません。明日も取りに行きましょう。」と言って立ちあがったらしいね。翌朝、早めに起きて家を出て、御主加那志前が起きない暗いうちに、「サリ、サリ。」と御主加那志前を起こした。「渡嘉敷、おまえはこんなに早く何をしに来たか。」と言ったから、「はい。昨日の鴨のおいしさは、何にも例えられない。鴨のことを思うと寝ようとしても寝られず、御主加那志が、一発撃つと一挙に十羽にも百羽にも当たりますよ。」と言ったわけ。「それほど多くの鴨が潜んでおります。」と。「それほどではないだろう渡嘉敷。そんなに、鴨は潜んでいないだろう。」「本当なんですよ。それではまず、一緒に行ってみましょう。」と申し上げると、「では行こうか。」と言われ、下男たちに、「おまえたちは渡嘉敷に鴨の肉を入れてやっただろう。」「そうではございません。大根だけを入れてあげたんですよ。」と言ったわけ。「不思議なことに、『昨日の鴨の味が、忘れようにも忘れられない』と、呼びに来ているので、どれ、今日も射って来ようか。」と、夜も明けないうちに、二人は揃って出かけて行った。そうして、「どこにいるか、渡嘉敷。」と言ったら、「あそこに潜んでおります。全部、御主加那志前のものですよ。」と言った。そこはどこかといったら、若狭町の大根畑を見せたわけ。「渡嘉敷、渡嘉敷、あれは大根畑だろうが。おまえという奴は。」とおっしゃったので、「えー、大根ですか。大根なのですかあれは。私がきのう食べた鴨の肉は、全部あれでありました。おいしいので、全部、射っていただきたいと、御主加那志前をご案内したしだいです。」「渡嘉敷、おまえという奴は。」と言ったって。
| レコード番号 | 47O421788 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C055 |
| 決定題名 | 渡嘉敷ペーク 鴨汁(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 渡嘉敷ペークの話 |
| 話者名 | 古謝振裕 |
| 話者名かな | こじゃしんゆう |
| 生年月日 | 19080605 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市西原 |
| 記録日 | 19800801 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T50 A2 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 笑話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 雨降りや祝の席などに聞いた |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下601頁 通観662頁 具志川市の民話ふるさとの昔ばなし191頁 |
| キーワード | 渡嘉敷ペーク,御主加那志,鴨,大根, |
| 梗概(こうがい) | 御主加那志前が、「渡嘉敷よ、今日は、鴨でも射って来て食べようではないか。」と言ったらしいね。「はい。」と言って、御主加那志前と一緒に行ったようだね。鴨は二つ射ったらしいのだが、「さあ渡嘉敷、鴨はきみが担ぎなさい。今日の夕飯は鴨を煎じて食べよう。」と言って、渡嘉敷に鴨を担がせ、御主加那志の家に行ったらしい。そしたら、王様は台所にいる女中に、「今日は、渡嘉敷には大根を入れてあげて、鴨の肉は一きれたりとも食べさせるな。」と言ってあったらしい。夕飯ということになって、渡嘉敷のものには、大根だけが入り、みんなのものには、鴨が入っているわけ。それでも渡嘉敷は、「何と、今日の鴨の肉のおいしいことよ。こんなおいしいものは、これまで食べたことがありません。」と言った。御主加那志前は、「これのものには鴨の肉は入れるなと言ってあったのに、渡嘉敷のものにも入れて食べらさせるとは。」と思った。渡嘉敷は食べるたびに、「今日の鴨の肉のおいしいこと。」と言うわけ、大根を食べてそう言っているわけ。そうしたら、「今日は腹一杯鴨を食べたので、明日もまた行きましょう。こんなにおいしいものを、止めるわけにはいきません。明日も取りに行きましょう。」と言って立ちあがったらしいね。翌朝、早めに起きて家を出て、御主加那志前が起きない暗いうちに、「サリ、サリ。」と御主加那志前を起こした。「渡嘉敷、おまえはこんなに早く何をしに来たか。」と言ったから、「はい。昨日の鴨のおいしさは、何にも例えられない。鴨のことを思うと寝ようとしても寝られず、御主加那志が、一発撃つと一挙に十羽にも百羽にも当たりますよ。」と言ったわけ。「それほど多くの鴨が潜んでおります。」と。「それほどではないだろう渡嘉敷。そんなに、鴨は潜んでいないだろう。」「本当なんですよ。それではまず、一緒に行ってみましょう。」と申し上げると、「では行こうか。」と言われ、下男たちに、「おまえたちは渡嘉敷に鴨の肉を入れてやっただろう。」「そうではございません。大根だけを入れてあげたんですよ。」と言ったわけ。「不思議なことに、『昨日の鴨の味が、忘れようにも忘れられない』と、呼びに来ているので、どれ、今日も射って来ようか。」と、夜も明けないうちに、二人は揃って出かけて行った。そうして、「どこにいるか、渡嘉敷。」と言ったら、「あそこに潜んでおります。全部、御主加那志前のものですよ。」と言った。そこはどこかといったら、若狭町の大根畑を見せたわけ。「渡嘉敷、渡嘉敷、あれは大根畑だろうが。おまえという奴は。」とおっしゃったので、「えー、大根ですか。大根なのですかあれは。私がきのう食べた鴨の肉は、全部あれでありました。おいしいので、全部、射っていただきたいと、御主加那志前をご案内したしだいです。」「渡嘉敷、おまえという奴は。」と言ったって。 |
| 全体の記録時間数 | 3:33 |
| 物語の時間数 | 3:33 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |