源為朝はね、弓の名人であったって。あんまり弓が上手だから、みんなに嫌われていてねえ、殺すことにしたわけ。みんながねえ、「あんたが、暴風のときに蒸気船の柱を射ることができたら、あんたの命は奪わないで許す。」と命令が下ったわけ。「そうか。」とその人は桟橋に行って、弓矢を引いて射ったそうだよ。暴風のときには、船は大変揺れてこう動くでしょう。それでも、柱の真ん中を射ったそうだね。それで、「あんたは殺さないで、島流しをやる。あんたの命は見逃す。」と言われ、その源為朝という人は島流しにされたわけ。「運は天にあり。」と言って、運天港に流れて来たわけよ。運天港に入り込んで来て、運天に村があるでしょう。その村に行って、田んぼを借りて、田んぼを耕したわけさ。稲を作ったわけ。そしたら、雨が降らなくてねえ。でも、その人の田んぼには下から水が入ったわけ、自然にね。それで字の人は、 「為朝は、夜、起きて人の田んぼから、自分の田んぼに水を運んで入れているから、こいつを殺そう。」と言って、鍛冶屋に行って、太刀をこしらえさせた。また、為朝も鍛冶屋に行ったら、その鍛冶屋が、「あんたを殺すから、道具をこしらえてくれと頼まれているから、あんた、こっちから逃げないと命はないよ。」と教えたわけ。そうして、運天から逃げてねえ、伊波という村に行ったわけ。そこで炭焼やっている人がいたそうだよ。そこに行って、為朝は、「私を泊めてくれんか。」と頼んだ。「こんな汚い炭窯に泊まることはなかろう、きれいな家に行って泊まりなさい。」と、炭焼きの人は言ったが、「いや、ここでいいから泊めてくれ。私も一緒に炭焼きをさせてくれないか。」と頼んだわけさあ、源為朝がねえ。そう言ったら、 「あんたが希望だったら一緒にやりましょう。」と言って、一緒にやったわけ。夜になったら、二人で外に出て眠ったわけよ。露が落ちているのに、為朝の一間の周囲は濡れないわけ。炭焼のおじいは、露に濡れてびしょびしょになって眠っておるわけさあ。朝起きたらね、「ヒルマシームン(珍しいこと)この人はきっと偉い人だねえ。」と、その炭焼のおじいは思ったわけ。沖縄の王が死んで、王が代わる年になったら、為朝が、「沖縄の王になる。」と言ったわけ。この炭焼のおじいがそれを認めたわけ。王の調べのときに公事に行ってね、そこで、人より先にしゃべったら、首とられよった(罪にされた)そうだよ。で、自分は炭焼人だから、身分は低いから、あっち(城)に行ったらね、人の後ろに立ってねえ、首ぇながねぇーい(首を長く)してこうして見ていたわけよ。「後にいるおじいは、こっちに来て話をしなさい。」と呼ばれたわけ。ガタガタ震えて行ったそうだね。そして、その炭焼のおじいが、「私と一緒に炭焼きをやっておる若者が、次の王はなると私は思っています。」と言った。「どうして、あんたはそんなことが分かるのか。」と聞かれたから、「私は、露に濡れてびしょびしょになって眠ったが、この若者は露には濡れない。若者の一間の周囲には、露が落ちない。それで私はわかる。」と。そうしてね、「そうか。」と。そして、為朝が王となって伊波王加那志と名前をつけられたわけよ、伊波王加那志と。源為朝の子孫が沖縄にいるってよ。
| レコード番号 | 47O421475 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C046 |
| 決定題名 | 源為朝(共通語) |
| 話者がつけた題名 | イウオウの話 |
| 話者名 | 稲福蒲太 |
| 話者名かな | いなふくかまた |
| 生年月日 | 18971010 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市兼箇段 |
| 記録日 | 19800809 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川T42 B4 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻上561頁 |
| キーワード | 源為朝,弓名人,蒸気船,暴風,島流し,運天港 |
| 梗概(こうがい) | 源為朝はね、弓の名人であったって。あんまり弓が上手だから、みんなに嫌われていてねえ、殺すことにしたわけ。みんながねえ、「あんたが、暴風のときに蒸気船の柱を射ることができたら、あんたの命は奪わないで許す。」と命令が下ったわけ。「そうか。」とその人は桟橋に行って、弓矢を引いて射ったそうだよ。暴風のときには、船は大変揺れてこう動くでしょう。それでも、柱の真ん中を射ったそうだね。それで、「あんたは殺さないで、島流しをやる。あんたの命は見逃す。」と言われ、その源為朝という人は島流しにされたわけ。「運は天にあり。」と言って、運天港に流れて来たわけよ。運天港に入り込んで来て、運天に村があるでしょう。その村に行って、田んぼを借りて、田んぼを耕したわけさ。稲を作ったわけ。そしたら、雨が降らなくてねえ。でも、その人の田んぼには下から水が入ったわけ、自然にね。それで字の人は、 「為朝は、夜、起きて人の田んぼから、自分の田んぼに水を運んで入れているから、こいつを殺そう。」と言って、鍛冶屋に行って、太刀をこしらえさせた。また、為朝も鍛冶屋に行ったら、その鍛冶屋が、「あんたを殺すから、道具をこしらえてくれと頼まれているから、あんた、こっちから逃げないと命はないよ。」と教えたわけ。そうして、運天から逃げてねえ、伊波という村に行ったわけ。そこで炭焼やっている人がいたそうだよ。そこに行って、為朝は、「私を泊めてくれんか。」と頼んだ。「こんな汚い炭窯に泊まることはなかろう、きれいな家に行って泊まりなさい。」と、炭焼きの人は言ったが、「いや、ここでいいから泊めてくれ。私も一緒に炭焼きをさせてくれないか。」と頼んだわけさあ、源為朝がねえ。そう言ったら、 「あんたが希望だったら一緒にやりましょう。」と言って、一緒にやったわけ。夜になったら、二人で外に出て眠ったわけよ。露が落ちているのに、為朝の一間の周囲は濡れないわけ。炭焼のおじいは、露に濡れてびしょびしょになって眠っておるわけさあ。朝起きたらね、「ヒルマシームン(珍しいこと)この人はきっと偉い人だねえ。」と、その炭焼のおじいは思ったわけ。沖縄の王が死んで、王が代わる年になったら、為朝が、「沖縄の王になる。」と言ったわけ。この炭焼のおじいがそれを認めたわけ。王の調べのときに公事に行ってね、そこで、人より先にしゃべったら、首とられよった(罪にされた)そうだよ。で、自分は炭焼人だから、身分は低いから、あっち(城)に行ったらね、人の後ろに立ってねえ、首ぇながねぇーい(首を長く)してこうして見ていたわけよ。「後にいるおじいは、こっちに来て話をしなさい。」と呼ばれたわけ。ガタガタ震えて行ったそうだね。そして、その炭焼のおじいが、「私と一緒に炭焼きをやっておる若者が、次の王はなると私は思っています。」と言った。「どうして、あんたはそんなことが分かるのか。」と聞かれたから、「私は、露に濡れてびしょびしょになって眠ったが、この若者は露には濡れない。若者の一間の周囲には、露が落ちない。それで私はわかる。」と。そうしてね、「そうか。」と。そして、為朝が王となって伊波王加那志と名前をつけられたわけよ、伊波王加那志と。源為朝の子孫が沖縄にいるってよ。 |
| 全体の記録時間数 | 5:02 |
| 物語の時間数 | 5:02 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |