昆布のタンガンザク原に久場のンメーという方が居られました。ある夕暮れ、このンメーが、何者かにさ
らわれて、部落は騒動になったわけです。久場のンメーが、ムンニムタレテと言うんですね。今の言葉でい
うと、亡霊に誘われたという意味じゃないですかね。方言では、ムンニムタットーンというようなことです
が。ムンニムタレテ、部落中、騒動になって、それで鐘や太鼓叩いて総動員して、天願、昆布周囲を、一週
間に及んでンメーを捜したのですが、一週間たっても、このンメーの姿はどこにも見当たらない。一週間が
過ぎて、同じ、このタンガンザク原に小渡というお家がありましたが、その家に、夜な夜なこの家族が寝よ
うとする頃から、炊事場のところで、かすかな声が聞こえる。「水をください。」とか、「食べ物を分けて
ください。」とかいうような調子で、声が聞こえた。それで、その小渡ぬンメーも、少し戸を開けて、水ぐ
ゎーをあげた。そして、こわごわ外を覗いたら、このンメーは頭にチンヌクガーサーを被って、手にはチン
ヌクガーサー持って、それに水をもらったり芋をもらったりして、行きよったということで。明くる日も、
同じ時間なったら、炊事場のところに来て、生きた人間の声でないような声で、「水をください、食べ物を
分けてください。」というような、声が聞こえてきた。それで、その晩も少し戸を開けてあげたという。三
日目になって、これはどうにも不思議だということで、今度はいつもより戸を開けて、じいっと声のすると
ころを見たら、何かしら久場のンメーの面影がしてならなかった。ひょっとしたら、久場のンメーでないか
と、親戚とか家族、あるいは部落の人に話をしたら、「水もらいに毎晩こっちに来るので、久場のンメーが
いる場所は遠くではない。近くの古いお墓であるか、洞穴にちがいない。」ということになった。それで、
その明くる日は、字中全部集まって、タンガンザクの小渡の後ろの洞穴の一帯をくまなく捜したわけです。
捜し当てたのが、ちょっとした穴の前にサトウキビの枯葉とか、チンヌクの葉とかが落ちていたということ
で、みんながこの穴に間違いないということになった。しかし、人の両手が入るぐらいで、人間が出入りし
たと思われないほどの小さい穴であったので、半分あきらめて、「そこは人間が入れるところではない。」
ということで、引き返したそうですが、それでも、「そこにキビのガラとチンヌクガーサーがあるから間違
いない。入るところはどこか知らんけど、とにかくまずは開けてみよう。」ということで、その小さい穴を
こじ開けたら、中におばあがうずくまって座っていたという。みんなは非常にびっくりして、「おばあでな
いか。」ということで、持ってきた塩を、そのお婆さんにぶっかけたから、お婆さんは、涙しくしくしてで
すね、もう声も出せなかった。それで、一番不思議に思ったのは、どこにも入った穴はなくて、その小さな
穴から出入りしたということでありますが。だから、それムンニムタッタンというのは、やはり事実あった
ということです。ムンニムタれた久場のンメーの話は、その現場は今もありますし、小渡の屋敷もあります
。これは実際に、今から七十年前に昆布にあった実話であります。
・チンヌクガーサ‥‥芋の一種、やつがしらの葉。
| レコード番号 | 47O421087 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C034 |
| 決定題名 | 亡霊に襲われた老婆(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 久場のンメーの話 |
| 話者名 | 座間味宗松 |
| 話者名かな | ざまみむねまつ |
| 生年月日 | 19171010 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市昆布 |
| 記録日 | 19800802 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T32 B3 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説、 世間話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻上164頁 |
| キーワード | タンガンザク原,亡霊,ンメー |
| 梗概(こうがい) | 昆布のタンガンザク原に久場のンメーという方が居られました。ある夕暮れ、このンメーが、何者かにさ らわれて、部落は騒動になったわけです。久場のンメーが、ムンニムタレテと言うんですね。今の言葉でい うと、亡霊に誘われたという意味じゃないですかね。方言では、ムンニムタットーンというようなことです が。ムンニムタレテ、部落中、騒動になって、それで鐘や太鼓叩いて総動員して、天願、昆布周囲を、一週 間に及んでンメーを捜したのですが、一週間たっても、このンメーの姿はどこにも見当たらない。一週間が 過ぎて、同じ、このタンガンザク原に小渡というお家がありましたが、その家に、夜な夜なこの家族が寝よ うとする頃から、炊事場のところで、かすかな声が聞こえる。「水をください。」とか、「食べ物を分けて ください。」とかいうような調子で、声が聞こえた。それで、その小渡ぬンメーも、少し戸を開けて、水ぐ ゎーをあげた。そして、こわごわ外を覗いたら、このンメーは頭にチンヌクガーサーを被って、手にはチン ヌクガーサー持って、それに水をもらったり芋をもらったりして、行きよったということで。明くる日も、 同じ時間なったら、炊事場のところに来て、生きた人間の声でないような声で、「水をください、食べ物を 分けてください。」というような、声が聞こえてきた。それで、その晩も少し戸を開けてあげたという。三 日目になって、これはどうにも不思議だということで、今度はいつもより戸を開けて、じいっと声のすると ころを見たら、何かしら久場のンメーの面影がしてならなかった。ひょっとしたら、久場のンメーでないか と、親戚とか家族、あるいは部落の人に話をしたら、「水もらいに毎晩こっちに来るので、久場のンメーが いる場所は遠くではない。近くの古いお墓であるか、洞穴にちがいない。」ということになった。それで、 その明くる日は、字中全部集まって、タンガンザクの小渡の後ろの洞穴の一帯をくまなく捜したわけです。 捜し当てたのが、ちょっとした穴の前にサトウキビの枯葉とか、チンヌクの葉とかが落ちていたということ で、みんながこの穴に間違いないということになった。しかし、人の両手が入るぐらいで、人間が出入りし たと思われないほどの小さい穴であったので、半分あきらめて、「そこは人間が入れるところではない。」 ということで、引き返したそうですが、それでも、「そこにキビのガラとチンヌクガーサーがあるから間違 いない。入るところはどこか知らんけど、とにかくまずは開けてみよう。」ということで、その小さい穴を こじ開けたら、中におばあがうずくまって座っていたという。みんなは非常にびっくりして、「おばあでな いか。」ということで、持ってきた塩を、そのお婆さんにぶっかけたから、お婆さんは、涙しくしくしてで すね、もう声も出せなかった。それで、一番不思議に思ったのは、どこにも入った穴はなくて、その小さな 穴から出入りしたということでありますが。だから、それムンニムタッタンというのは、やはり事実あった ということです。ムンニムタれた久場のンメーの話は、その現場は今もありますし、小渡の屋敷もあります 。これは実際に、今から七十年前に昆布にあった実話であります。 ・チンヌクガーサ‥‥芋の一種、やつがしらの葉。 |
| 全体の記録時間数 | 8:23 |
| 物語の時間数 | 8:23 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |