逆立ち幽霊のお話を述べます。一名、池城親方のことですが。昔、首里に、たいそう綺麗な人がいました。その綺麗な人の夫は病気で、治る見込みはなく、死にそうであったが死にきれずにいた。もう見込みはないと思うほどであった。「どうして、死にきれないんだろうか。」と思っていたら、「私が死んだら、お前は、他の男の妻になるのかと思ったら、死んでも死にきれん。死ぬことができないんだよー、アンマー。」と言った。「そんなに、私を思っているのなら。」と言って、この女は、剃刀で鼻を切ってしまった。もう、鼻モーになって、たいへん不美人になってしまった。男は、それで、安心して元気になり働くようになった。夫は、妻が不美人になったから、別の女を捜した。そして、不美人の妻を粗末に扱い、女中のようにとてもこき使い、さんざん苦労をさせたそうだ。そうして後は、「これを生かしておいては、自分の思い通りにならない。」と言って、別の女と二人で妻を殺して、化けて出て来たら大変だからと縛って棺箱に入れた。殺して入れてあるにもかかわらず、化けて出てきたら大変だと言って、また五寸釘も打って墓に埋めたようだね。それで、この女は成仏できずに、「私を、だまし討ちにしたな。」と、残念に思っていた。夜になると、殺された女は、毎日、真嘉比道に逆立ち幽霊になって出たりした。そこから通る人たちは皆、奇病にかかったりしたので、恐がってこの真嘉比道から通る人はいなくなった。そうしていると、池城親方という英雄が通ったとき、「何だ、お前は、生きているのか、死人か。」と、幽霊に言った。幽霊は、「私は、死人ですが、こうこういう事情で殺されております。この者たちの命を取れば、私は成仏できますが、命を取らない限り、私は成仏できません。二人の命を取ろうと思いますが、この者たちの家の周囲に、護符が貼られて私は踏み込んで行くことができないのです。」と答えた。池城親方は、「ああそうか。このような悪人もいるのか。それなら、その護符は私が剥いでやるので、お前は、二人の命を取って後は、後生は成仏して、世間の人も騒がさないように、立派に道理を通す考えをしろよ。これからは、夜な夜なそこに出るんじゃないぞ。」と、おっしゃった。「そうして下さい、どうぞ助けてください。」と、幽霊はお願いした。池城親方が、この護符を剥いだら、すぐにこの夫婦は、その夜のうちに幽霊に命を取られて死んだ。その翌日から、真嘉比道に逆立ち幽霊は出なくなったって。そして、池城親方の前に幽霊が来て、「貴方様への恩義は、いつまでも、続くようにしますので、貴方様に、立派なお墓を差し上げます。万代までのお墓にしてください。」と、首里の山川の下の方に立派なお墓を捜してあげた。そして、今だに、池城御殿の立派な墓はあるようです。この墓の中には、池もあって、鯉なども養っていたらしい。池城親方のお墓はこの逆立ち幽霊から授かったといわれている。
| レコード番号 | 47O421048 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C033 |
| 決定題名 | 逆立ち幽霊(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 徳村政伸 |
| 話者名かな | とくむらせいしん |
| 生年月日 | 19100321 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 那覇市首里 |
| 記録日 | 19800805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T31 A12 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻上753頁 通観457頁 |
| キーワード | 逆立ち幽霊,池城親方,鼻モー,棺箱,不美人,死,五寸釘,札,鯉 |
| 梗概(こうがい) | 逆立ち幽霊のお話を述べます。一名、池城親方のことですが。昔、首里に、たいそう綺麗な人がいました。その綺麗な人の夫は病気で、治る見込みはなく、死にそうであったが死にきれずにいた。もう見込みはないと思うほどであった。「どうして、死にきれないんだろうか。」と思っていたら、「私が死んだら、お前は、他の男の妻になるのかと思ったら、死んでも死にきれん。死ぬことができないんだよー、アンマー。」と言った。「そんなに、私を思っているのなら。」と言って、この女は、剃刀で鼻を切ってしまった。もう、鼻モーになって、たいへん不美人になってしまった。男は、それで、安心して元気になり働くようになった。夫は、妻が不美人になったから、別の女を捜した。そして、不美人の妻を粗末に扱い、女中のようにとてもこき使い、さんざん苦労をさせたそうだ。そうして後は、「これを生かしておいては、自分の思い通りにならない。」と言って、別の女と二人で妻を殺して、化けて出て来たら大変だからと縛って棺箱に入れた。殺して入れてあるにもかかわらず、化けて出てきたら大変だと言って、また五寸釘も打って墓に埋めたようだね。それで、この女は成仏できずに、「私を、だまし討ちにしたな。」と、残念に思っていた。夜になると、殺された女は、毎日、真嘉比道に逆立ち幽霊になって出たりした。そこから通る人たちは皆、奇病にかかったりしたので、恐がってこの真嘉比道から通る人はいなくなった。そうしていると、池城親方という英雄が通ったとき、「何だ、お前は、生きているのか、死人か。」と、幽霊に言った。幽霊は、「私は、死人ですが、こうこういう事情で殺されております。この者たちの命を取れば、私は成仏できますが、命を取らない限り、私は成仏できません。二人の命を取ろうと思いますが、この者たちの家の周囲に、護符が貼られて私は踏み込んで行くことができないのです。」と答えた。池城親方は、「ああそうか。このような悪人もいるのか。それなら、その護符は私が剥いでやるので、お前は、二人の命を取って後は、後生は成仏して、世間の人も騒がさないように、立派に道理を通す考えをしろよ。これからは、夜な夜なそこに出るんじゃないぞ。」と、おっしゃった。「そうして下さい、どうぞ助けてください。」と、幽霊はお願いした。池城親方が、この護符を剥いだら、すぐにこの夫婦は、その夜のうちに幽霊に命を取られて死んだ。その翌日から、真嘉比道に逆立ち幽霊は出なくなったって。そして、池城親方の前に幽霊が来て、「貴方様への恩義は、いつまでも、続くようにしますので、貴方様に、立派なお墓を差し上げます。万代までのお墓にしてください。」と、首里の山川の下の方に立派なお墓を捜してあげた。そして、今だに、池城御殿の立派な墓はあるようです。この墓の中には、池もあって、鯉なども養っていたらしい。池城親方のお墓はこの逆立ち幽霊から授かったといわれている。 |
| 全体の記録時間数 | 4:20 |
| 物語の時間数 | 4:20 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |