昔、首里界隈にとても貧しい家庭があって、いくらがんばって働いても、毎日の生活は苦しく、そのため、気持ちもすさんでしまい、家族は、いつもくさくさしていたようだね。そして、姑は、毎日のように、隣近所に行っては、「うちの嫁はおいしものがあれば、自分一人で食べて私にはなにもくれない、ひもじくさせてなにも分からない怠け者だよ。」とか、嫁の悪口を言って、嫁を叱って歩いていたようだね。それで、隣近所の人も、姑がそう言って歩くものだから、自然とその嫁に対する態度があまりよくない。隣近所に出掛けても嫁は引け目を感じて、これじゃおもしろくないとしている折に、また、嫁は嫁で姑を叱るなど、仲違いをしているようでした。この嫁は、このままでいけないと医者の家に行って、「うちの姑は、犯していない罪を私にかぶせて、私の陰口を言っているから、一生のお願いだから、どうにかして、この年寄りの命を縮める方法はないかね。」と言って、医者に相談したら、「おまえは、なんてことを言うのだ、人間たるもの家畜とおなじように、簡単に殺すことができると思うのか。それはできない。」と言って、医者は断ったが、それでも、「どうにか考えて欲しい。」と言って、再三お願いしたら、「おまえがそれほどいうのであれば、協力しよう。」と言って、「だがその前に話がある。この薬は大いに喜び、また、とてもおいしい食べ物にまぜないと、絶対利きめはない。」と言っているわけ。「毎日、食べ物をあげるたびに、小さじの一杯ずつ混ぜて、知らんふりして、どうぞ、お召し上がりくださいと心をこめて差し上げないと、利き目がない薬だから、それを守れるなら加勢するよ。」と言われ、「そうですか。」と言って、一包みの薬を貰ってきた。これはおいしいものにしか効果がない、普通のにーじゃむん(おいしくないもの)には利き目がないから、毎日、肉を買ってきたり、魚を買ってきたりして、知らんふりして混ぜて差し上げていた。そして、「お召し上がりください、味はいかがですか。」と聞いたら、姑の気持ちも直って、「どうして、うちの嫁は近ごろ、やさしいかね。」と思い、「うちの嫁は、やさしくなって、いっときの間にいい嫁になった。私は陰口を言ってしまい、私の落ち度だった。とてもいい嫁だよ。」と言って、隣近所の人に話した。人は感情に流されるものであるといい、また、それが伝わって、嫁も隣近所からいい目で見られるようになったので、嫁も同じ気持ちになって、「お姑さんも、あっという間にお姑さんになった。私は親を殺そうとしたのはまちがっていた。こんなに混ぜて食べさせてしまったから、あと何日しかお姑さんの命はない。早く毒を返す薬を習ってこないといけない。」と言って、医者の家に行ったようだ。そうしたら、「私の姑は、まえは悪者のようであったけど、私の方がいたらなかった。今まで毒を差し上げてしまったが、どうにかしてその毒返しをして、元のようにできないかと思っているが、考えてくださいませんか。」と、医者に言ったら、「絶対できない。おまえの勝手か、今は殺せ今は生かせろと、そういった仕事はできん。」と言って、始めは断ったものの、もう泣きわめいて頼んだので、「おまえが、本当に真心から思っているなら、どうにかしてあげよう。」と、医者が言った。「実は、おまえが頼むからと人を殺す薬を、人間として、医者として渡すわけにはいかない。おまえに渡した薬は、いわば、味の素だったから大丈夫だよ。人間というのは心の持ちようだから、これからは親子仲良くしなさいよ。」と言って、さとされたという話。
| レコード番号 | 47O420985 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C030 |
| 決定題名 | 嫁の毒薬(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 伊良波朝正 |
| 話者名かな | いらはちょうせい |
| 生年月日 | 19231215 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 東村有銘 |
| 記録日 | 19800801 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T29 A7 |
| 元テープ管理者 | 伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 父親から |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下423頁 ふるさとの昔ばなし142頁 |
| キーワード | 首里,嫁,姑,医者,薬,肉, |
| 梗概(こうがい) | 昔、首里界隈にとても貧しい家庭があって、いくらがんばって働いても、毎日の生活は苦しく、そのため、気持ちもすさんでしまい、家族は、いつもくさくさしていたようだね。そして、姑は、毎日のように、隣近所に行っては、「うちの嫁はおいしものがあれば、自分一人で食べて私にはなにもくれない、ひもじくさせてなにも分からない怠け者だよ。」とか、嫁の悪口を言って、嫁を叱って歩いていたようだね。それで、隣近所の人も、姑がそう言って歩くものだから、自然とその嫁に対する態度があまりよくない。隣近所に出掛けても嫁は引け目を感じて、これじゃおもしろくないとしている折に、また、嫁は嫁で姑を叱るなど、仲違いをしているようでした。この嫁は、このままでいけないと医者の家に行って、「うちの姑は、犯していない罪を私にかぶせて、私の陰口を言っているから、一生のお願いだから、どうにかして、この年寄りの命を縮める方法はないかね。」と言って、医者に相談したら、「おまえは、なんてことを言うのだ、人間たるもの家畜とおなじように、簡単に殺すことができると思うのか。それはできない。」と言って、医者は断ったが、それでも、「どうにか考えて欲しい。」と言って、再三お願いしたら、「おまえがそれほどいうのであれば、協力しよう。」と言って、「だがその前に話がある。この薬は大いに喜び、また、とてもおいしい食べ物にまぜないと、絶対利きめはない。」と言っているわけ。「毎日、食べ物をあげるたびに、小さじの一杯ずつ混ぜて、知らんふりして、どうぞ、お召し上がりくださいと心をこめて差し上げないと、利き目がない薬だから、それを守れるなら加勢するよ。」と言われ、「そうですか。」と言って、一包みの薬を貰ってきた。これはおいしいものにしか効果がない、普通のにーじゃむん(おいしくないもの)には利き目がないから、毎日、肉を買ってきたり、魚を買ってきたりして、知らんふりして混ぜて差し上げていた。そして、「お召し上がりください、味はいかがですか。」と聞いたら、姑の気持ちも直って、「どうして、うちの嫁は近ごろ、やさしいかね。」と思い、「うちの嫁は、やさしくなって、いっときの間にいい嫁になった。私は陰口を言ってしまい、私の落ち度だった。とてもいい嫁だよ。」と言って、隣近所の人に話した。人は感情に流されるものであるといい、また、それが伝わって、嫁も隣近所からいい目で見られるようになったので、嫁も同じ気持ちになって、「お姑さんも、あっという間にお姑さんになった。私は親を殺そうとしたのはまちがっていた。こんなに混ぜて食べさせてしまったから、あと何日しかお姑さんの命はない。早く毒を返す薬を習ってこないといけない。」と言って、医者の家に行ったようだ。そうしたら、「私の姑は、まえは悪者のようであったけど、私の方がいたらなかった。今まで毒を差し上げてしまったが、どうにかしてその毒返しをして、元のようにできないかと思っているが、考えてくださいませんか。」と、医者に言ったら、「絶対できない。おまえの勝手か、今は殺せ今は生かせろと、そういった仕事はできん。」と言って、始めは断ったものの、もう泣きわめいて頼んだので、「おまえが、本当に真心から思っているなら、どうにかしてあげよう。」と、医者が言った。「実は、おまえが頼むからと人を殺す薬を、人間として、医者として渡すわけにはいかない。おまえに渡した薬は、いわば、味の素だったから大丈夫だよ。人間というのは心の持ちようだから、これからは親子仲良くしなさいよ。」と言って、さとされたという話。 |
| 全体の記録時間数 | 5:25 |
| 物語の時間数 | 5:08 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |