怪我の功名 塩売りの出世(シマグチ)

概要

塩売りの出世=ある日、塩売りが塩を担いで、渡口の村に行ったって。そうしたら、雨が降って来た。ほら、塩は雨に濡らすと水になるから、道端に金持ちの家があったので、「この塩を濡らすと、大変だから。」と言って、急いで金持ちのアサギ(はなれ)の軒下に塩を置いて、雨が止むまでと縁側に腰を掛けていたら、手の届くところに弓が立ててあったって。弓が立っていたので、その塩売りはまた余計なことをして、 「珍しいことだ。弓が立ててあるよ。」と言って、いたずらをしようとしたら、その弓の矢がトゥパチと鳴って、アサギの倉に飛んでいった。アサギの倉のそばには、盗人が隠れていたらしい。この塩売りは、隠れているとは思わないで、ただ、いたずらをしただけなのに、その矢で盗人を射殺してしまった。そうしたらもう、そこの金持ちの主人は、弓の矢で射ってあるとは思わず、盗人が苦しんで転げ回り、ガラガラガラーと音をたてたので、「なんだ、うちのアサギに誰も行かないのに、こんなにカラカラクヮラと大きな音がするのか。誰か行って見て来い。」と言ったら、「アギジャバヨー(大変です)、うちのアサギに、盗人なのか人が入って、死んでしまっているよ。」と言ったらしい。「さあ、もう大変。アサギに盗人が入っていたんだね。誰がしたことか。」と言って、その塩売りは、自分がしたと言うと大変なことになると、ガタガタガタガタふるえていた。なんと言っても、それはいたずらでやったのだから。そうしたら、誰も自分がしたとは言わないわけさ、驚いて。それで、「これはもう、盗人が入っていると分かっていたのかね。誰が射ってくれたのかね。盗人を捕らえて、弓を射ってくれたの者にはお礼をしなくてはならないが。これは、家族の誰かがやったのかね。」と聞いたところ、家族は誰もしなかったという。その塩売りは、お礼をしなければという言葉を聞いて、「私がやりました。」と言ってしまったらしい。「なんで、おまえはうちの倉に盗人が入っていると分かったのか。おまえは弓を扱ったことがあるのか。」と聞かれ、「扱ったことはないが、私が悪うございました。私は、雨宿りをしようとしていたのだが、弓があるのでただ触ってみて、ちょっとふざけただけなんです。そこに、盗人が入っていたなんて思いもせず、私は弓の矢を射ったところ、盗人を射殺してしまいました。」と言った。「いやいや、おまえには感謝しているよ。もしおまえが射らなければ、うちは、どれだけの米が盗まれたか分からなかった。おまえにはとても感謝しているよ。」と言って、ほめられた。そうしたら、その金持ちの家は、男の子は生まれず女の子が二人いたって。それで、「おまえは、こんなに知恵があるから、塩は私が買い取るから、しばらくここにいてくれないか。」と頼まれた。 「はい。」と、しばらくその家に住むことになった。その塩売りは泡瀬の人で、知恵があり親しくなるほどに上等だったので、金持ちは、「これは、こんなにもまじめでしっかりしているから、下の娘の夫になってもらい、二人に私らのことは頼むことにしよう。」と言ったら、「それはいい考えだ。その前に、その者の知恵を試すために、わが家のうしろにある竹が、何本生えているか、見ないでそれを当てられるのであれば、婿にしよう。」ということになった。そうしたら、その塩売りは運があったわけさ。「おまえは、わが家のうしろにある竹が何本生えているか、当ててみろ。」と、その金持ちの主人が言ったところ、何か妙な声がして、耳の中で、「竹は千本、竹は千本。」したって。「竹は千本。竹は千本。」と聞こえたので、塩売りは、すかさず、「千本生えています。」と答えたらしい。数えるとやっぱり千本生えていたので、「これは、まさしく知恵者だ。なんとも珍しいことだ。これはうちの次女の夫にしなければならない。」と言われ、次女の夫になり、塩売りは金持ちの婿になった。その金持ちのいる渡口村の浜には、一年に一度、蛇が出て来て、人一人を喰っていたって。「おまえたちの婿になった者は、とても知恵があるというから、明日は、蛇が出て来て人一人喰ってしまうし、彼を馬に乗せて行かせ、蛇に喰われようが何だろうが、とても運があるので生きるはずだから、蛇を退治してもらおうじゃないか。」と言って、村の人たちがお願いに来た。そうしたら、「よかろう。明日は、この村は年に一度蛇が海から出て来て、人一人を喰うことになっているが、おまえに徳があれば喰われないはずだから、うちの馬に乗って行って蛇を追っぱらってこい、射って来なさい。」と言われ、「そのようにいたしましょう。」と言って、馬に乗って浜に行くことになった。それから、その塩売りはおそらく容姿が美しかったんでしょう。妻の姉が、「私は妻にしないで、妹を妻にするのか。」と、妹の夫になったことを嫉妬してね、「これはもう、亡きものにしなければならん。」と言って、弁当に毒を入れて支度し、立派な風呂敷に包んで持たせた。弁当は背中に掛けて馬に乗って行ったらしい。そうして、男は馬に乗って浜に行ったら、蛇に追われてね。いまにも蛇が男を喰ってしまおうと追っかけ、馬は一目散に駆けて逃げた。ずっと追いかけられたが、どういう幸運のもちぬしだったのか、担ぐようにしばっていた弁当がはずれて、落ちてしまった。すると、蛇は男を放してその弁当を喰ったらしい。毒入りの弁当を喰ったので、とうとう蛇は死んでしまった。死んで、腹を上にしてひっくり返っていた。男は知恵があるものだから、「今日はもう蛇と闘って、私が負かしました。蛇は死にました。」と、家に帰って言ったらしい。そうしたら、「村中の者は集まりなさい。うちの婿になる者が、蛇を殺して来たよ。」と言って、本当は毒を喰って死んでいるのだが、金持ちの主人は、「うちの婿が蛇を殺したから、みなさんお集まり下さい。」と言った。「この男はどんな人になるか見当もつかない。いつまでも、これを婿にしなければならない。」と思った。「この蛇が生きているときには、年に一度は人が喰われて大変だったが、この塩売りが殺してくれたので、もうこんな嬉しいことはない。」と、村中揃ってお祝いして、非常に崇められたって。その塩売りは、村の人に崇められ、金持ちの婿になり、とても楽に暮らしたそうだ。

再生時間:9:34

民話詳細DATA

レコード番号 47O420970
CD番号 47O42C030
決定題名 怪我の功名 塩売りの出世(シマグチ)
話者がつけた題名 塩売りの話
話者名 目取真ウト
話者名かな めどえうまうと
生年月日 18900804
性別
出身地 具志川市田場
記録日 19800809
記録者の所属組織 沖縄口承文芸調査団
元テープ番号 具志川市T28 A5
元テープ管理者 伝承話資料センター
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 具志川市史第3巻下231頁 具志川市の民話ふるさとの昔ばなし133頁
キーワード 泡瀬,塩売り,雨宿り,弓矢,泥棒,竹の数,難題,蚊の耳うち,婿,毒入り弁当,大蛇
梗概(こうがい) 塩売りの出世=ある日、塩売りが塩を担いで、渡口の村に行ったって。そうしたら、雨が降って来た。ほら、塩は雨に濡らすと水になるから、道端に金持ちの家があったので、「この塩を濡らすと、大変だから。」と言って、急いで金持ちのアサギ(はなれ)の軒下に塩を置いて、雨が止むまでと縁側に腰を掛けていたら、手の届くところに弓が立ててあったって。弓が立っていたので、その塩売りはまた余計なことをして、 「珍しいことだ。弓が立ててあるよ。」と言って、いたずらをしようとしたら、その弓の矢がトゥパチと鳴って、アサギの倉に飛んでいった。アサギの倉のそばには、盗人が隠れていたらしい。この塩売りは、隠れているとは思わないで、ただ、いたずらをしただけなのに、その矢で盗人を射殺してしまった。そうしたらもう、そこの金持ちの主人は、弓の矢で射ってあるとは思わず、盗人が苦しんで転げ回り、ガラガラガラーと音をたてたので、「なんだ、うちのアサギに誰も行かないのに、こんなにカラカラクヮラと大きな音がするのか。誰か行って見て来い。」と言ったら、「アギジャバヨー(大変です)、うちのアサギに、盗人なのか人が入って、死んでしまっているよ。」と言ったらしい。「さあ、もう大変。アサギに盗人が入っていたんだね。誰がしたことか。」と言って、その塩売りは、自分がしたと言うと大変なことになると、ガタガタガタガタふるえていた。なんと言っても、それはいたずらでやったのだから。そうしたら、誰も自分がしたとは言わないわけさ、驚いて。それで、「これはもう、盗人が入っていると分かっていたのかね。誰が射ってくれたのかね。盗人を捕らえて、弓を射ってくれたの者にはお礼をしなくてはならないが。これは、家族の誰かがやったのかね。」と聞いたところ、家族は誰もしなかったという。その塩売りは、お礼をしなければという言葉を聞いて、「私がやりました。」と言ってしまったらしい。「なんで、おまえはうちの倉に盗人が入っていると分かったのか。おまえは弓を扱ったことがあるのか。」と聞かれ、「扱ったことはないが、私が悪うございました。私は、雨宿りをしようとしていたのだが、弓があるのでただ触ってみて、ちょっとふざけただけなんです。そこに、盗人が入っていたなんて思いもせず、私は弓の矢を射ったところ、盗人を射殺してしまいました。」と言った。「いやいや、おまえには感謝しているよ。もしおまえが射らなければ、うちは、どれだけの米が盗まれたか分からなかった。おまえにはとても感謝しているよ。」と言って、ほめられた。そうしたら、その金持ちの家は、男の子は生まれず女の子が二人いたって。それで、「おまえは、こんなに知恵があるから、塩は私が買い取るから、しばらくここにいてくれないか。」と頼まれた。 「はい。」と、しばらくその家に住むことになった。その塩売りは泡瀬の人で、知恵があり親しくなるほどに上等だったので、金持ちは、「これは、こんなにもまじめでしっかりしているから、下の娘の夫になってもらい、二人に私らのことは頼むことにしよう。」と言ったら、「それはいい考えだ。その前に、その者の知恵を試すために、わが家のうしろにある竹が、何本生えているか、見ないでそれを当てられるのであれば、婿にしよう。」ということになった。そうしたら、その塩売りは運があったわけさ。「おまえは、わが家のうしろにある竹が何本生えているか、当ててみろ。」と、その金持ちの主人が言ったところ、何か妙な声がして、耳の中で、「竹は千本、竹は千本。」したって。「竹は千本。竹は千本。」と聞こえたので、塩売りは、すかさず、「千本生えています。」と答えたらしい。数えるとやっぱり千本生えていたので、「これは、まさしく知恵者だ。なんとも珍しいことだ。これはうちの次女の夫にしなければならない。」と言われ、次女の夫になり、塩売りは金持ちの婿になった。その金持ちのいる渡口村の浜には、一年に一度、蛇が出て来て、人一人を喰っていたって。「おまえたちの婿になった者は、とても知恵があるというから、明日は、蛇が出て来て人一人喰ってしまうし、彼を馬に乗せて行かせ、蛇に喰われようが何だろうが、とても運があるので生きるはずだから、蛇を退治してもらおうじゃないか。」と言って、村の人たちがお願いに来た。そうしたら、「よかろう。明日は、この村は年に一度蛇が海から出て来て、人一人を喰うことになっているが、おまえに徳があれば喰われないはずだから、うちの馬に乗って行って蛇を追っぱらってこい、射って来なさい。」と言われ、「そのようにいたしましょう。」と言って、馬に乗って浜に行くことになった。それから、その塩売りはおそらく容姿が美しかったんでしょう。妻の姉が、「私は妻にしないで、妹を妻にするのか。」と、妹の夫になったことを嫉妬してね、「これはもう、亡きものにしなければならん。」と言って、弁当に毒を入れて支度し、立派な風呂敷に包んで持たせた。弁当は背中に掛けて馬に乗って行ったらしい。そうして、男は馬に乗って浜に行ったら、蛇に追われてね。いまにも蛇が男を喰ってしまおうと追っかけ、馬は一目散に駆けて逃げた。ずっと追いかけられたが、どういう幸運のもちぬしだったのか、担ぐようにしばっていた弁当がはずれて、落ちてしまった。すると、蛇は男を放してその弁当を喰ったらしい。毒入りの弁当を喰ったので、とうとう蛇は死んでしまった。死んで、腹を上にしてひっくり返っていた。男は知恵があるものだから、「今日はもう蛇と闘って、私が負かしました。蛇は死にました。」と、家に帰って言ったらしい。そうしたら、「村中の者は集まりなさい。うちの婿になる者が、蛇を殺して来たよ。」と言って、本当は毒を喰って死んでいるのだが、金持ちの主人は、「うちの婿が蛇を殺したから、みなさんお集まり下さい。」と言った。「この男はどんな人になるか見当もつかない。いつまでも、これを婿にしなければならない。」と思った。「この蛇が生きているときには、年に一度は人が喰われて大変だったが、この塩売りが殺してくれたので、もうこんな嬉しいことはない。」と、村中揃ってお祝いして、非常に崇められたって。その塩売りは、村の人に崇められ、金持ちの婿になり、とても楽に暮らしたそうだ。
全体の記録時間数 9:34
物語の時間数 9:34
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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