庭は立派にしても、飾るものがなかった。牧港の上の方の丘に、マッコーを捜しに行らした。いらしたときはいい天気だったので、あちこちの丘を歩いたけれど、マッコーは捜せない。そしたら、北の方から真っ暗になってきて、大雨が降ってきたから、「ああもう、あの岩の下で雨宿りをしなければならんな。」と言って、丘からは下りていらして、人の墓とは思わないで岩の下で雨宿りをしようとしていた。すると、そばの方から声がしてきたって。そうして、ここで雨宿りをしようと、クバ笠のようなものを被って立っていると、「サリ、サリ。」というのが聞こえてきた。そのときまで、そこが墓とは思わず、内からサリサリと声がし、また、「どなた様でしょうか。」と言う声まで聞こえてきた。「私だけどね、私もお金に困って心配しているから、あんたが借りたお金は返してくれないか。」と言ったから、「ああ、貧乏人は、できるだけ早くお返ししようと思って、お金を貯めようと思うのですが、なかなか貯まりません。あなた様がそんなにお金に困っておられるのなら、明後日までは待ってくださいませんか。」と言った。「なに、それじゃあんたは、明後日には必ず返す見込みがあるというのか。」と聞いた。二人とも後生の人だよ、お金を貸した人もね、「まちがいございません、明後日は私の三年忌にあたるものですから、子孫たちがたくさん持ってきて、お供えするはずですから、お待ちになっていてください。」と言った。「それじゃ、ちゃんと全部返してくれるね。」「まちがいございません。」「私はもう、戻って行こうね。」と言って、そのお金を貸した後生の人は戻って行かれたようである。越来親方は、墓の中の二人の会話を真剣に受け取られて、「これは助けないといけない、よほどの貧乏人がお金を借りたんだな。」と思われた。雨も小降りになり、日も暮れかかってきた。越来親方は牧港の一番近い家に行って、「あなたたちのうしろの岩の下にある墓は、どこのものか。」とたずねたら、その家の主人は、「その墓は、この辺りの人のものではありません、親方様。」と言った。「では、どこの墓か。」と聞くと、「その墓は、浦添仲間の人の墓でございます。」と言った。「それで、向こうは遠いのか。」と言ったから、「あなた様が、首里に帰られるとき、まっすぐ行くと十字路がありますから、その十字路から東に向かって脇道から三軒目の家で、城間小という家の墓でございます。」「これは、これは、いいことを聞かせてくれた。さっそく行ってみようね。」と言って、家に帰りながらのことだから、すぐに出かけられた。「このあたりじゃないかな。十字路がある、そして、東に向かうと脇道のある家のところの三軒目の家というから、ここらあたりだな。」と言って、その家に入っていらして、「はい、ご免なさいよ。」と言ったから、「いらっしゃいませ。」と言って、筵を敷いて座らせてくれた。親方は墓の中ら聞こえた後生の会話を聞かなかったふりをして、「あんたたちの、親父はどうされたかな。」と聞いたから、「私たちの親父はもういないですよ、親方様。」と言ったので、「どうして、いなくなったのか。」「もう、三年前に死んでしまいました。」と言った。「それじゃ、あなたたちの親父は生きているときは、長患いをしていたのかね。」とたずねたら、「はい。」と言って、「それじゃ、親父が生きているときにお金を借りたことがあるかね。」とたずねると、「親父が長患いして、貧乏人というのは、銭が必要でもいつも貧乏をしているものですから、払うことができず、このように無礼をしているんですよ。」と言ったので、親方は、「お金を貸した人もすでに亡くなっているから、あなた方の親父のところに、貸した人が請求に来られたとことなど、一切のことを聞いているから、私がお金を持っているから、このお金で払いなさい。」「ところで、親父はいつ亡くなられたのか。」と聞いたら、「もう、明後日が三年忌になります。」と言ったって。「では、このお金で紙銭もたくさん買って、ご馳走もたくさん作って、親父の霊前に供えて紙銭を燃やして子孫たちもみんなで手を合わせお供えしなさいよ。」と言った。越来親方が、このようにお金もたくさん渡してくださってありますよと、親父の霊前に手を合わせなさいと、お金を渡したそうだ。そうして、明後日になったら、「親方様がお金もたくさんくれたから、こんなに紙も銭形も打ってありますよ親父。」と、霊前にお供えした。後生の人はちゃんと聞いているので、その嫡子の夢枕に現れて、「『越来親方様の家がこんなにお金をくださったおかげで、借りたお金もちゃんと払ってちゃんと証文も抜いて、ゆうゆうとしております。お礼はなにも差し上げることはできないが、親方様の家に訪ねて行って、あなた様がたくさんお金をくださったので、三年忌にはたくさんの紙銭を燃やしてお供えしましたから、私たちの親父は、借りたお金も立派に支払いし、喜んでいるよと、ありがとうと言葉だけでも言ってくれ』といわれ、来ました、ありがとうございました親方様。」と言った。「いいから、いいからあんたたちに与えたお金はとらなくてもいいから、もう、よく来てくれた。」と言って。そうして、終わっているわけ。
| レコード番号 | 47O420967 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C030 |
| 決定題名 | 後生の借金(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 越来親方が後生の人を助けた話 |
| 話者名 | 目取真ウト |
| 話者名かな | めどえうまうと |
| 生年月日 | 18900804 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 具志川市田場 |
| 記録日 | 19800809 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T28 A2 |
| 元テープ管理者 | 伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下462頁 |
| キーワード | 越来親方,庭木,にわか雨,雨宿り,後生,借金問答,紙銭,年忌,クバガサ |
| 梗概(こうがい) | 庭は立派にしても、飾るものがなかった。牧港の上の方の丘に、マッコーを捜しに行らした。いらしたときはいい天気だったので、あちこちの丘を歩いたけれど、マッコーは捜せない。そしたら、北の方から真っ暗になってきて、大雨が降ってきたから、「ああもう、あの岩の下で雨宿りをしなければならんな。」と言って、丘からは下りていらして、人の墓とは思わないで岩の下で雨宿りをしようとしていた。すると、そばの方から声がしてきたって。そうして、ここで雨宿りをしようと、クバ笠のようなものを被って立っていると、「サリ、サリ。」というのが聞こえてきた。そのときまで、そこが墓とは思わず、内からサリサリと声がし、また、「どなた様でしょうか。」と言う声まで聞こえてきた。「私だけどね、私もお金に困って心配しているから、あんたが借りたお金は返してくれないか。」と言ったから、「ああ、貧乏人は、できるだけ早くお返ししようと思って、お金を貯めようと思うのですが、なかなか貯まりません。あなた様がそんなにお金に困っておられるのなら、明後日までは待ってくださいませんか。」と言った。「なに、それじゃあんたは、明後日には必ず返す見込みがあるというのか。」と聞いた。二人とも後生の人だよ、お金を貸した人もね、「まちがいございません、明後日は私の三年忌にあたるものですから、子孫たちがたくさん持ってきて、お供えするはずですから、お待ちになっていてください。」と言った。「それじゃ、ちゃんと全部返してくれるね。」「まちがいございません。」「私はもう、戻って行こうね。」と言って、そのお金を貸した後生の人は戻って行かれたようである。越来親方は、墓の中の二人の会話を真剣に受け取られて、「これは助けないといけない、よほどの貧乏人がお金を借りたんだな。」と思われた。雨も小降りになり、日も暮れかかってきた。越来親方は牧港の一番近い家に行って、「あなたたちのうしろの岩の下にある墓は、どこのものか。」とたずねたら、その家の主人は、「その墓は、この辺りの人のものではありません、親方様。」と言った。「では、どこの墓か。」と聞くと、「その墓は、浦添仲間の人の墓でございます。」と言った。「それで、向こうは遠いのか。」と言ったから、「あなた様が、首里に帰られるとき、まっすぐ行くと十字路がありますから、その十字路から東に向かって脇道から三軒目の家で、城間小という家の墓でございます。」「これは、これは、いいことを聞かせてくれた。さっそく行ってみようね。」と言って、家に帰りながらのことだから、すぐに出かけられた。「このあたりじゃないかな。十字路がある、そして、東に向かうと脇道のある家のところの三軒目の家というから、ここらあたりだな。」と言って、その家に入っていらして、「はい、ご免なさいよ。」と言ったから、「いらっしゃいませ。」と言って、筵を敷いて座らせてくれた。親方は墓の中ら聞こえた後生の会話を聞かなかったふりをして、「あんたたちの、親父はどうされたかな。」と聞いたから、「私たちの親父はもういないですよ、親方様。」と言ったので、「どうして、いなくなったのか。」「もう、三年前に死んでしまいました。」と言った。「それじゃ、あなたたちの親父は生きているときは、長患いをしていたのかね。」とたずねたら、「はい。」と言って、「それじゃ、親父が生きているときにお金を借りたことがあるかね。」とたずねると、「親父が長患いして、貧乏人というのは、銭が必要でもいつも貧乏をしているものですから、払うことができず、このように無礼をしているんですよ。」と言ったので、親方は、「お金を貸した人もすでに亡くなっているから、あなた方の親父のところに、貸した人が請求に来られたとことなど、一切のことを聞いているから、私がお金を持っているから、このお金で払いなさい。」「ところで、親父はいつ亡くなられたのか。」と聞いたら、「もう、明後日が三年忌になります。」と言ったって。「では、このお金で紙銭もたくさん買って、ご馳走もたくさん作って、親父の霊前に供えて紙銭を燃やして子孫たちもみんなで手を合わせお供えしなさいよ。」と言った。越来親方が、このようにお金もたくさん渡してくださってありますよと、親父の霊前に手を合わせなさいと、お金を渡したそうだ。そうして、明後日になったら、「親方様がお金もたくさんくれたから、こんなに紙も銭形も打ってありますよ親父。」と、霊前にお供えした。後生の人はちゃんと聞いているので、その嫡子の夢枕に現れて、「『越来親方様の家がこんなにお金をくださったおかげで、借りたお金もちゃんと払ってちゃんと証文も抜いて、ゆうゆうとしております。お礼はなにも差し上げることはできないが、親方様の家に訪ねて行って、あなた様がたくさんお金をくださったので、三年忌にはたくさんの紙銭を燃やしてお供えしましたから、私たちの親父は、借りたお金も立派に支払いし、喜んでいるよと、ありがとうと言葉だけでも言ってくれ』といわれ、来ました、ありがとうございました親方様。」と言った。「いいから、いいからあんたたちに与えたお金はとらなくてもいいから、もう、よく来てくれた。」と言って。そうして、終わっているわけ。 |
| 全体の記録時間数 | 7:23 |
| 物語の時間数 | 7:23 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |