「運玉ぬ御願 中ぬ窪ぶたまい 与那嶺ぬチルが 忍ぶ所。」と歌がありますでしょう。運玉村に与那嶺のチルーというきれいな娘さんがおりました。また、この娘さんはあまりに美しいので外に出なかったそうです。そうして、モーアシビーのとき、村の青年たちは誰がチルーを嫁にするか、誰が初めに恋をするかと、チルーの話をしていたんですよ。そこへ、みんなからミッチアマヤー(言動がとっぴで、風変わりなことをやる人)といわれている青年が来ました。「なんの話かと思えば、あのチルーのことか。」と言うと、 「おまえは、なんの話かと笑うけど、我々一人前の男でもチルーと話をしたことがないんだよ。」「あっそうか、それなら、おれがチルーと恋をしてみせる。」「はあ、おかしい。おまえみたいな奴が。チルーは家から外には出ないというのに、どうして連れ出すか、これが問題だよ。」「じゃあ、私が家から連れ出して恋をするよ。」と言って、村の青年たちとミッチアマヤーの青年が賭けをした。それから、その青年がチルーのところに行き、チルーの父母に、「私は山に薪を取りに行くんだが、チルーを私と一緒に行かしてもらえんですか。」と言ったら、「うん、いいんじゃないか、あなたとだったら。」「じゃあ、チルーに相談してください。」と言って、チルーも、「うん、この人だったら何もしないだろう。行ってもいいです。」と言って、二人で薪を取りに行くことになったんです。それで、チルーも喜んで、「じゃあ、薪を取って来ます。」と言って、父母もまた、その青年に、「うんと薪を持たせてくれねえ。」と頼んで、二人を行かしたそうです。そうしたところでですね、「チルー、たくさん薪を取ってあげようなあ。」「はい、取ってくださいねえ。」と言って、あの運玉の御願というところ、御願所ですがそこに水たまりがあったそうです。この水たまりのところで、男が持っている下の棒ですね、それが痛んでですな、「チルー、私はここが痛くてどうにもならんよ。」と言うたらね、「じゃあ、医者を連れて来ようね。」と言うたんですよ。チルーは無邪気なもんですから。「いや、いや、私のこれは慢性の病気だから、医者が来るまで我慢できないから、そこの窪みの水をかけてくれんかあ。」と言うたら、「はい、それならできますよ。」と言って、チルーはそこから水を汲んできて、痛いところにかけてあげたそうです。「今日は、あなたが一緒にいてくれたから、私の病気は助かったよ。」「はい、治りましたか。」「治ったよ。お礼として薪をたくさん取ってあげようなあ。」と言って、「はい、たくさん取ってください。」と言って、また、山へ行ったそうです。すると、この慢性病がまた痛がってですな、「チルー、また痛くなってしまった。」と言ったから、チルーはまた騒いでですね、「水汲んで来ますか。」と言って、水を汲みに行こうとしたら、「ちょっと待ってくれ、痛くてたまらないから水を汲んで来るまでは、待てないかもしれない。私を助けると思って、水の代わりにおまえの小便をかけてくれ。」と言うたら、「あなたの命を助けることでしたら、できますよ。」「じゃあ、私を助けると思って、とにかくやってくれ。」と言われ、そうして、小便をかけてあげたそうですよ。そうして、今度もまた、元気になり、「ほら、治った。下から水を汲んで来るまではとても間に合わなかったよ、チルー、ありがとう、お礼にうんといい薪をあげようなあ。」それから、山の頂上まで上がって、「ここだったら薪もたくさんあるし、たくさん取ろうなあ。」と言って、薪を取り始めたところでですね、また、この慢性病が痛がったんですよ。「チルー、私の慢性病はどうもまた痛みだしたが。」と言ったので、「えっ、もうどうしますか、下から水汲んで来ますか。」「いや、もう間に合わんよ。じゃあ、助けると思って、またも小便かけてくれ。」と言ったが、「いや、今したところで、もう出ないですよ。」とチルーが言うたんですよ。「あっ、そうか、今やれと頼んでもできないね、じゃあ、先ほど小便をしたから、そこはまだ湿りけがあるはずだから、その湿りけに入れさせてもらえんか。」ということになったんですよ。これは、チルーも、「はい、あなたの命が助かるのであれば、いいですよ、湿りけがあるから。」と言って、入れさせたわけ。それで、入れさせたところがチルーも初めて、「あれっ、おかしいなあ。」と思って、恋の味を分かって。それから、チルーが要求したわけです。「はい、青年、まだ痛くはないですか。また、痛ければまだ湿りけがありますよ。」と言うふうに、チルーの方から誘うようになったわけです。男が忍ぶべきものがですね、反対にチルーの方から忍ぶようになって、それで、「運玉ぬ御願 中ぬクブタマイ 与那嶺ぬチルが 忍ぶ所。」という歌ができたという話もあります。
| レコード番号 | 47O420848 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C026 |
| 決定題名 | 薪取りと女(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 運玉森の薪取り |
| 話者名 | 上江洲安次 |
| 話者名かな | うえずあんじ |
| 生年月日 | 19140505 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市塩屋 |
| 記録日 | 19800805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T23 B3 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 艶笑譚 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下774頁 |
| キーワード | 運玉村,モーアシビ,賭け,運玉森,下の棒,薪取り,病気 |
| 梗概(こうがい) | 「運玉ぬ御願 中ぬ窪ぶたまい 与那嶺ぬチルが 忍ぶ所。」と歌がありますでしょう。運玉村に与那嶺のチルーというきれいな娘さんがおりました。また、この娘さんはあまりに美しいので外に出なかったそうです。そうして、モーアシビーのとき、村の青年たちは誰がチルーを嫁にするか、誰が初めに恋をするかと、チルーの話をしていたんですよ。そこへ、みんなからミッチアマヤー(言動がとっぴで、風変わりなことをやる人)といわれている青年が来ました。「なんの話かと思えば、あのチルーのことか。」と言うと、 「おまえは、なんの話かと笑うけど、我々一人前の男でもチルーと話をしたことがないんだよ。」「あっそうか、それなら、おれがチルーと恋をしてみせる。」「はあ、おかしい。おまえみたいな奴が。チルーは家から外には出ないというのに、どうして連れ出すか、これが問題だよ。」「じゃあ、私が家から連れ出して恋をするよ。」と言って、村の青年たちとミッチアマヤーの青年が賭けをした。それから、その青年がチルーのところに行き、チルーの父母に、「私は山に薪を取りに行くんだが、チルーを私と一緒に行かしてもらえんですか。」と言ったら、「うん、いいんじゃないか、あなたとだったら。」「じゃあ、チルーに相談してください。」と言って、チルーも、「うん、この人だったら何もしないだろう。行ってもいいです。」と言って、二人で薪を取りに行くことになったんです。それで、チルーも喜んで、「じゃあ、薪を取って来ます。」と言って、父母もまた、その青年に、「うんと薪を持たせてくれねえ。」と頼んで、二人を行かしたそうです。そうしたところでですね、「チルー、たくさん薪を取ってあげようなあ。」「はい、取ってくださいねえ。」と言って、あの運玉の御願というところ、御願所ですがそこに水たまりがあったそうです。この水たまりのところで、男が持っている下の棒ですね、それが痛んでですな、「チルー、私はここが痛くてどうにもならんよ。」と言うたらね、「じゃあ、医者を連れて来ようね。」と言うたんですよ。チルーは無邪気なもんですから。「いや、いや、私のこれは慢性の病気だから、医者が来るまで我慢できないから、そこの窪みの水をかけてくれんかあ。」と言うたら、「はい、それならできますよ。」と言って、チルーはそこから水を汲んできて、痛いところにかけてあげたそうです。「今日は、あなたが一緒にいてくれたから、私の病気は助かったよ。」「はい、治りましたか。」「治ったよ。お礼として薪をたくさん取ってあげようなあ。」と言って、「はい、たくさん取ってください。」と言って、また、山へ行ったそうです。すると、この慢性病がまた痛がってですな、「チルー、また痛くなってしまった。」と言ったから、チルーはまた騒いでですね、「水汲んで来ますか。」と言って、水を汲みに行こうとしたら、「ちょっと待ってくれ、痛くてたまらないから水を汲んで来るまでは、待てないかもしれない。私を助けると思って、水の代わりにおまえの小便をかけてくれ。」と言うたら、「あなたの命を助けることでしたら、できますよ。」「じゃあ、私を助けると思って、とにかくやってくれ。」と言われ、そうして、小便をかけてあげたそうですよ。そうして、今度もまた、元気になり、「ほら、治った。下から水を汲んで来るまではとても間に合わなかったよ、チルー、ありがとう、お礼にうんといい薪をあげようなあ。」それから、山の頂上まで上がって、「ここだったら薪もたくさんあるし、たくさん取ろうなあ。」と言って、薪を取り始めたところでですね、また、この慢性病が痛がったんですよ。「チルー、私の慢性病はどうもまた痛みだしたが。」と言ったので、「えっ、もうどうしますか、下から水汲んで来ますか。」「いや、もう間に合わんよ。じゃあ、助けると思って、またも小便かけてくれ。」と言ったが、「いや、今したところで、もう出ないですよ。」とチルーが言うたんですよ。「あっ、そうか、今やれと頼んでもできないね、じゃあ、先ほど小便をしたから、そこはまだ湿りけがあるはずだから、その湿りけに入れさせてもらえんか。」ということになったんですよ。これは、チルーも、「はい、あなたの命が助かるのであれば、いいですよ、湿りけがあるから。」と言って、入れさせたわけ。それで、入れさせたところがチルーも初めて、「あれっ、おかしいなあ。」と思って、恋の味を分かって。それから、チルーが要求したわけです。「はい、青年、まだ痛くはないですか。また、痛ければまだ湿りけがありますよ。」と言うふうに、チルーの方から誘うようになったわけです。男が忍ぶべきものがですね、反対にチルーの方から忍ぶようになって、それで、「運玉ぬ御願 中ぬクブタマイ 与那嶺ぬチルが 忍ぶ所。」という歌ができたという話もあります。 |
| 全体の記録時間数 | 10:36 |
| 物語の時間数 | 10:36 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |