「誠の上に弓は立たない。」という話、まず話してみましょう。この誠の上に弓は立たないという話を聞いたのは、三人兄弟がいて、とても親孝行者で、三人とも親のことをよくしていたが、あるとき、母親が病んで、もう、危篤になったものだから、「もう、おまえたちの親は、これだけ危篤になっているから、薬屋に行って、薬を買ってきて飲ませないと治らないよ。」と、親戚の人たちから言われた。そこで、その親戚の人たちみんなが、「それじゃ、長男、早く買ってきなさい、薬を買ってきて差し上げなさい。」と言ったので、長男は馬に乗って薬屋へと出かけて行った。長男は、途中で年寄りタンメー(お爺さん)に出会った。タンメーが、「おい、ニーセー(青年)、馬に乗ってそんなに騒いでいるのは、いったい何事だ。」と聞いたから、「私は、親が危篤になっているので、薬を買いに行くところだ、急いでいるのでそこをどいてください。」と言った。そうして、年寄りにどいてもらって馬に乗って通った。薬屋がどこか、教えられているわけではないから、どこに行けばいいか分からない。ただ、薬を買いにと、どことは分からないけど出てきて、道に迷ってしまったから、いくら待ってもこなかった。「長男が戻ってくる時分だが、まだ来ないから、次男、おまえが買ってきなさい。」と言われ、次男も馬に乗って買いに出た。次男も途中で、その年寄りタンメーに出会い、「おい、子どもよ、そんなに騒いで何事だ。」と聞かれた。「年寄りには、用事はない。」と言って、すぐ年寄りをどけてから急いで行ったが、次男も道に迷ってしまった。長男も薬を買いに行かし、次男にも薬を買いに行かしたが、いくら待ってもこない。親戚の人たちは、もう待ち焦がれて、母親も生死の境をさ迷っているし、「これ以上待てない、三男、早く行け、長男も次男も行かしたが、いくら待ってもこないから、おまえが早く行きなさい。」と言って、三男を行かした。その三男も馬に乗って出かけ、途中で、その年寄りタンメーに出会った。タンメーが、「おい、ニーセーよどうしたのだ、騒いでいるようだが何事かあったのかね。」と聞いたから、「はい、実は私の母親が危篤になって、今日にも明日にもという状態なので、長男と次男が薬を買いに行ったが、なかなか帰ってこないから、私も薬を買いに行かされているんですよ。」と言った。「ああ、そうなのか、それなら、おまえたちの親の薬はどこそこの薬屋に行けばあるから。でもあそこの薬屋の門には、左右に虎が門番しているから、その門に入るときは、この菓子を持たすから、これを虎に喰わしてから門を渡って行きなさい。その門を渡って行くと、内には金の門があり、その門を渡って行かないことには薬は買えないから、私が言う通りにして買ってきなさいね。」
と教えた。「はい、ありがとうございます。」その通りにして、三男は薬を買た。戻ってくる道半ばで長男と次男に会った。二人とも薬屋を捜しても捜しきれなくて、疲れてそこでへばっていた。疲れて座っているとき、三男が薬を買ってくるのを見たから、「おい、私たちも薬を買ってきたが、おまえも薬を買ってきたか。」と声をかけた。「買ってきたよ。」と言ったから、「きっとおまえも疲れているはず、もう私たちも疲れているからここで休もう。」と言って、休んでいる途中で、三男を誤魔化して、長男と次男は偽薬を持っていたから、三男が買ってある本物の薬と取り替えてしまった。そうして、「これだけ休めばいいから、早く親に薬をあげよう。」と言って、急ぎ家に帰った。家では親戚の人たちが待ちかねているところだった。「三人行かしたが、三人とも薬を買ってきたか。」と聞いたから、「はい、買ってきましたよ。」と言った。長男と次男は二人で悪だくみをして、三男の薬と取り替えてあるわけだが。そうして、三男のものから、「それじゃ、三男のものから飲ましなさい。」と言ったから、三男の薬は、悪い薬と替えられているから、その薬を飲ましたら、親の病気は、ますます悪くなった。「どういうことだ、この薬ではよけいに悪くなってしまった。」「それじゃ、次男も買ってきたでしょう、次男の薬を飲ましなさい。」と言って、次男の薬を飲ました。少しはよくなって、「はい、長男も買ってきてある。」と言って、長男の薬を飲ましたら、ますますよくなり、親は元の元気を取り戻した。長男と次男の言い分は、「薬は良薬を買ってきて、親のことをすべきなのに、このように悪い薬を買ってきて、親を死なそうとして、こやつは謀叛を企んでいるので、三男をいかしておいてはならないのでは。」と言って、親戚の人たちみんなと相談した。「その通りだ。親は助けるのであって、悪い薬を買ってきて親を死なそうとするとは。」と言って、長男と次男も同意して、「こんな三男を生かしてはおけない、殺すしかない。」「三男を殺すことは、親戚や兄弟ではできないから、どうして殺した方がよいのか。」と言ったら、「言われてみれば、確かにそうだな。」と言うと、ある一人が、「一つ良い考えがある。ある弓矢の名人がいるから、あの弓矢の名人なら一発で殺すから、それに、手間賃さえ出せばいくらでも引き受ける。仕事だから、飛ぶ鳥も飛ばさないほどの弓矢の名人だから、あいつの一発で殺してもらおう。」と言った。そうして、そのことに親戚の人たちみんなが、同意して相談がまとまった。それから、どこそこの山へ弓矢の名人を連れて行ったら、弓矢の名人は、「では、一発で私がしとめてあげましょう。」と、相談はできているが、持っているだけ全部の弓矢を射るが、この三男にはまったく立たなかった。「珍しいこともあるもんだ。たとえ飛んでいる鳥でも飛ばさないほどの私の弓が、こいつには当たらないということはどうしたことだ。これはなにか変わったことかあるのか、これまでまちがったことはないのに、珍しいことだ。」と言った。「おまえの家に行こう。私の弓がまちがったということはないから、おまえにこの弓が一発も立たないというのは、なにか変わったことがあるかもしれない。ともかく、もう一回相談してこよう。」と言って、それで、親戚や家族が揃っているところで相談した。そしたら、弓矢の名人が、「これは薬を買ってきたところの元を調べてみないといけないようだ。」ということになった。その弓矢の名人の言うとおり、薬を買ったところの元を調べてみた。「それでは、三人とも来い。」と言って、弓矢の名人が三人を連れて薬屋に行った。最初は長男から呼んだ。「長男、どの門を通ってきたか。」と聞いたら、「私は銅の門を通ってきた。」「それじゃ、銅の門通ってきている者は、ここから薬は買ってない。」と言った。次に次男を呼んだ。「次男はどの門を通ってきたか。」「私は、銀の門を通ってきた。」と言った。「いや、銀の門を通ってきたら、ここからは薬は買ってはない。」と言った。今度は三男を呼んだから、「三男は、どの門を通ってきたか。」と聞いたら、「私は、金の門を通った。」と言った。「それじゃ、金の門を通ってきたなら、この人にまちがいないよ。」と言った。それから、弓矢の名人は、三人を連れて家に帰った。「実は、良薬を買ったのは、長男と次男ではない。これは途中で、似ている薬を休んでいるときに取り替えられて、三男は悪い薬を持たされた。こうして長男と次男は良薬を持ってきた。長男と次男は三男を殺すために悪い考えをしているのだ。」と弓矢の名人が言った。「この者たちは、罪罰を当ててやらんといかん。」と言って、それから、長男と次男は罪罰を当てられ、三男は親孝行したというお話。これで終わったということである。
| レコード番号 | 47O420845 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C026 |
| 決定題名 | 金の門(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 誠の上には弓は立たない |
| 話者名 | 上江洲安次 |
| 話者名かな | うえずあんじ |
| 生年月日 | 19140505 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市塩屋 |
| 記録日 | 19800805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T23 B1 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 通観607頁 具志川市の民話ふるさとの昔ばなし77頁 具志川市史第3巻下360頁 |
| キーワード | 三人兄弟,孝行者,病気,仙人,薬,馬,薬屋,虎,門,金,銀,銅,弓矢 |
| 梗概(こうがい) | 「誠の上に弓は立たない。」という話、まず話してみましょう。この誠の上に弓は立たないという話を聞いたのは、三人兄弟がいて、とても親孝行者で、三人とも親のことをよくしていたが、あるとき、母親が病んで、もう、危篤になったものだから、「もう、おまえたちの親は、これだけ危篤になっているから、薬屋に行って、薬を買ってきて飲ませないと治らないよ。」と、親戚の人たちから言われた。そこで、その親戚の人たちみんなが、「それじゃ、長男、早く買ってきなさい、薬を買ってきて差し上げなさい。」と言ったので、長男は馬に乗って薬屋へと出かけて行った。長男は、途中で年寄りタンメー(お爺さん)に出会った。タンメーが、「おい、ニーセー(青年)、馬に乗ってそんなに騒いでいるのは、いったい何事だ。」と聞いたから、「私は、親が危篤になっているので、薬を買いに行くところだ、急いでいるのでそこをどいてください。」と言った。そうして、年寄りにどいてもらって馬に乗って通った。薬屋がどこか、教えられているわけではないから、どこに行けばいいか分からない。ただ、薬を買いにと、どことは分からないけど出てきて、道に迷ってしまったから、いくら待ってもこなかった。「長男が戻ってくる時分だが、まだ来ないから、次男、おまえが買ってきなさい。」と言われ、次男も馬に乗って買いに出た。次男も途中で、その年寄りタンメーに出会い、「おい、子どもよ、そんなに騒いで何事だ。」と聞かれた。「年寄りには、用事はない。」と言って、すぐ年寄りをどけてから急いで行ったが、次男も道に迷ってしまった。長男も薬を買いに行かし、次男にも薬を買いに行かしたが、いくら待ってもこない。親戚の人たちは、もう待ち焦がれて、母親も生死の境をさ迷っているし、「これ以上待てない、三男、早く行け、長男も次男も行かしたが、いくら待ってもこないから、おまえが早く行きなさい。」と言って、三男を行かした。その三男も馬に乗って出かけ、途中で、その年寄りタンメーに出会った。タンメーが、「おい、ニーセーよどうしたのだ、騒いでいるようだが何事かあったのかね。」と聞いたから、「はい、実は私の母親が危篤になって、今日にも明日にもという状態なので、長男と次男が薬を買いに行ったが、なかなか帰ってこないから、私も薬を買いに行かされているんですよ。」と言った。「ああ、そうなのか、それなら、おまえたちの親の薬はどこそこの薬屋に行けばあるから。でもあそこの薬屋の門には、左右に虎が門番しているから、その門に入るときは、この菓子を持たすから、これを虎に喰わしてから門を渡って行きなさい。その門を渡って行くと、内には金の門があり、その門を渡って行かないことには薬は買えないから、私が言う通りにして買ってきなさいね。」 と教えた。「はい、ありがとうございます。」その通りにして、三男は薬を買た。戻ってくる道半ばで長男と次男に会った。二人とも薬屋を捜しても捜しきれなくて、疲れてそこでへばっていた。疲れて座っているとき、三男が薬を買ってくるのを見たから、「おい、私たちも薬を買ってきたが、おまえも薬を買ってきたか。」と声をかけた。「買ってきたよ。」と言ったから、「きっとおまえも疲れているはず、もう私たちも疲れているからここで休もう。」と言って、休んでいる途中で、三男を誤魔化して、長男と次男は偽薬を持っていたから、三男が買ってある本物の薬と取り替えてしまった。そうして、「これだけ休めばいいから、早く親に薬をあげよう。」と言って、急ぎ家に帰った。家では親戚の人たちが待ちかねているところだった。「三人行かしたが、三人とも薬を買ってきたか。」と聞いたから、「はい、買ってきましたよ。」と言った。長男と次男は二人で悪だくみをして、三男の薬と取り替えてあるわけだが。そうして、三男のものから、「それじゃ、三男のものから飲ましなさい。」と言ったから、三男の薬は、悪い薬と替えられているから、その薬を飲ましたら、親の病気は、ますます悪くなった。「どういうことだ、この薬ではよけいに悪くなってしまった。」「それじゃ、次男も買ってきたでしょう、次男の薬を飲ましなさい。」と言って、次男の薬を飲ました。少しはよくなって、「はい、長男も買ってきてある。」と言って、長男の薬を飲ましたら、ますますよくなり、親は元の元気を取り戻した。長男と次男の言い分は、「薬は良薬を買ってきて、親のことをすべきなのに、このように悪い薬を買ってきて、親を死なそうとして、こやつは謀叛を企んでいるので、三男をいかしておいてはならないのでは。」と言って、親戚の人たちみんなと相談した。「その通りだ。親は助けるのであって、悪い薬を買ってきて親を死なそうとするとは。」と言って、長男と次男も同意して、「こんな三男を生かしてはおけない、殺すしかない。」「三男を殺すことは、親戚や兄弟ではできないから、どうして殺した方がよいのか。」と言ったら、「言われてみれば、確かにそうだな。」と言うと、ある一人が、「一つ良い考えがある。ある弓矢の名人がいるから、あの弓矢の名人なら一発で殺すから、それに、手間賃さえ出せばいくらでも引き受ける。仕事だから、飛ぶ鳥も飛ばさないほどの弓矢の名人だから、あいつの一発で殺してもらおう。」と言った。そうして、そのことに親戚の人たちみんなが、同意して相談がまとまった。それから、どこそこの山へ弓矢の名人を連れて行ったら、弓矢の名人は、「では、一発で私がしとめてあげましょう。」と、相談はできているが、持っているだけ全部の弓矢を射るが、この三男にはまったく立たなかった。「珍しいこともあるもんだ。たとえ飛んでいる鳥でも飛ばさないほどの私の弓が、こいつには当たらないということはどうしたことだ。これはなにか変わったことかあるのか、これまでまちがったことはないのに、珍しいことだ。」と言った。「おまえの家に行こう。私の弓がまちがったということはないから、おまえにこの弓が一発も立たないというのは、なにか変わったことがあるかもしれない。ともかく、もう一回相談してこよう。」と言って、それで、親戚や家族が揃っているところで相談した。そしたら、弓矢の名人が、「これは薬を買ってきたところの元を調べてみないといけないようだ。」ということになった。その弓矢の名人の言うとおり、薬を買ったところの元を調べてみた。「それでは、三人とも来い。」と言って、弓矢の名人が三人を連れて薬屋に行った。最初は長男から呼んだ。「長男、どの門を通ってきたか。」と聞いたら、「私は銅の門を通ってきた。」「それじゃ、銅の門通ってきている者は、ここから薬は買ってない。」と言った。次に次男を呼んだ。「次男はどの門を通ってきたか。」「私は、銀の門を通ってきた。」と言った。「いや、銀の門を通ってきたら、ここからは薬は買ってはない。」と言った。今度は三男を呼んだから、「三男は、どの門を通ってきたか。」と聞いたら、「私は、金の門を通った。」と言った。「それじゃ、金の門を通ってきたなら、この人にまちがいないよ。」と言った。それから、弓矢の名人は、三人を連れて家に帰った。「実は、良薬を買ったのは、長男と次男ではない。これは途中で、似ている薬を休んでいるときに取り替えられて、三男は悪い薬を持たされた。こうして長男と次男は良薬を持ってきた。長男と次男は三男を殺すために悪い考えをしているのだ。」と弓矢の名人が言った。「この者たちは、罪罰を当ててやらんといかん。」と言って、それから、長男と次男は罪罰を当てられ、三男は親孝行したというお話。これで終わったということである。 |
| 全体の記録時間数 | 11:06 |
| 物語の時間数 | 11:06 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |