昔、川平の男と崎枝の女が非常に親しくなっていずれは結婚という話までしておったらしいです。ところがそのころ崎枝村はマラリアで毎年毎年どんどん人が死んで村は滅亡が近くなってきた。だから崎枝の村では協議をして崎枝の娘は別の村には嫁には行かさないという村の法規を作ったから、二人はもうとうとう別れなければならないということになったらしい。ですけど川平の男の方は、「俺たちは、いくら部落の決まりでも、前から付き合っているから、なんとしても結婚する。」と言ったけど、崎枝の女の方は、「いや、村の協議だから私も村の規則を破ることはできませんし、親に話しても許してもらえません。」と言ったけれども、なかなか別れられない。だから、夜、崎枝の娘は浜づたいに川平にきて、山の後ろ側に人目を忍んでくると今の海老養殖場がある海の側に二畳ほどある平たい石で待っていると、川平の宮良の男もやってきてそこで密会をした。女は棒を持って行ってね、待っているときや男と話をしているとき、毎日その平たい石をその石で突ついていたんです。だから、その密会石には、そのとき女が掘った跡が今もあるんですよ。だけど男が掘った跡は分からない。だから女はそれだけ愛情があったと言っているんです。 こうして二人は会っておったが、「こんなことはいつまでも続かない。仕方がないから別れることにしよう。」と今晩限りで別れることになった。その最後の別れの時に崎枝村の娘が言った。「だったら、私は誰とも結婚しない。」と言った。川平の男も言った。「俺も妻をとらないで一生独身でいい。」と、二人とも一生結婚しないと誓いをたてて別れた。そのとき、崎枝村の娘が言った。「死んだらあなたのお墓は崎枝から見えるところに作ってください。」「そんなら、お前の墓もここから真っ直ぐに見えるところに作ってくれ。」とこう言って二人は別れることになった。川平の男は、崎枝の娘が山道から浜に下り山を登ると崎枝の裏の方になるので、浜に出てそこまで見送って、密会をした石に戻ってみると、娘は振り返ると結った髪の毛をほどいて振ったらしいんです。これは非常に不吉で縁起が悪いことだから、それを男は見て、「ああ、これでもう終わり。」とはっきり思ったわけですね。二人が約束通り一生結婚しないで死んだ後、遺言があったから、お互いに見えるところに墓を作ることになった。お墓は近いところに作るべきですが、川平のずうっと端っこに行かないと、崎枝は見えないので、男の墓は川平のずうっと端っこに作られ、そこから見える直線のところに娘の墓を作るために、今なら測量器もあるから難しくはないけど、そのころはそれが難しくて、夜になってから川平の男の墓の所に松明をつけて、崎枝ではその火が見える所に崎枝の娘の墓を作ったらしいですね。その墓には、昼でも向こうが見えるように、二つの四角の穴が開けられていましたよ。その男の墓に私は学校時代に海に行く時に一度見たですよ。そこには、密会石に崎枝の娘が穴を掘った棒もあったですよ。その石の棒は、それを動かすと雨が降るから動かしてはいけないと言われていました。だから、日照りのときに、そこで雨乞いをすると必ず夫婦雨を降らせてくれるということで雨乞いをしていました。今ではもう雨乞いをすることもないし、牧場も廃止になったから、誰もそこには通れなくなってしまった。また川平の男の墓も改築して村の近くの仲間森の下に造ってある。石の名前は特にないが、石に開いた穴をメーラアーパーカーと言う。カーは、井戸の意味。
| レコード番号 | 47O340392 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C028 |
| 決定題名 | クイツ石(共通語) |
| 話者がつけた題名 | メーラアーパーカーの石の話 |
| 話者名 | 喜舎場兼次郎 |
| 話者名かな | きしゃばけんじろう |
| 生年月日 | 19040113 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県石垣市字川平 |
| 記録日 | 19960909 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石垣市字川平 T64 A04 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 八重山諸島民話集 P161 |
| キーワード | 川平の男,崎枝の女,平たい石,結婚,穴,墓 |
| 梗概(こうがい) | 昔、川平の男と崎枝の女が非常に親しくなっていずれは結婚という話までしておったらしいです。ところがそのころ崎枝村はマラリアで毎年毎年どんどん人が死んで村は滅亡が近くなってきた。だから崎枝の村では協議をして崎枝の娘は別の村には嫁には行かさないという村の法規を作ったから、二人はもうとうとう別れなければならないということになったらしい。ですけど川平の男の方は、「俺たちは、いくら部落の決まりでも、前から付き合っているから、なんとしても結婚する。」と言ったけど、崎枝の女の方は、「いや、村の協議だから私も村の規則を破ることはできませんし、親に話しても許してもらえません。」と言ったけれども、なかなか別れられない。だから、夜、崎枝の娘は浜づたいに川平にきて、山の後ろ側に人目を忍んでくると今の海老養殖場がある海の側に二畳ほどある平たい石で待っていると、川平の宮良の男もやってきてそこで密会をした。女は棒を持って行ってね、待っているときや男と話をしているとき、毎日その平たい石をその石で突ついていたんです。だから、その密会石には、そのとき女が掘った跡が今もあるんですよ。だけど男が掘った跡は分からない。だから女はそれだけ愛情があったと言っているんです。 こうして二人は会っておったが、「こんなことはいつまでも続かない。仕方がないから別れることにしよう。」と今晩限りで別れることになった。その最後の別れの時に崎枝村の娘が言った。「だったら、私は誰とも結婚しない。」と言った。川平の男も言った。「俺も妻をとらないで一生独身でいい。」と、二人とも一生結婚しないと誓いをたてて別れた。そのとき、崎枝村の娘が言った。「死んだらあなたのお墓は崎枝から見えるところに作ってください。」「そんなら、お前の墓もここから真っ直ぐに見えるところに作ってくれ。」とこう言って二人は別れることになった。川平の男は、崎枝の娘が山道から浜に下り山を登ると崎枝の裏の方になるので、浜に出てそこまで見送って、密会をした石に戻ってみると、娘は振り返ると結った髪の毛をほどいて振ったらしいんです。これは非常に不吉で縁起が悪いことだから、それを男は見て、「ああ、これでもう終わり。」とはっきり思ったわけですね。二人が約束通り一生結婚しないで死んだ後、遺言があったから、お互いに見えるところに墓を作ることになった。お墓は近いところに作るべきですが、川平のずうっと端っこに行かないと、崎枝は見えないので、男の墓は川平のずうっと端っこに作られ、そこから見える直線のところに娘の墓を作るために、今なら測量器もあるから難しくはないけど、そのころはそれが難しくて、夜になってから川平の男の墓の所に松明をつけて、崎枝ではその火が見える所に崎枝の娘の墓を作ったらしいですね。その墓には、昼でも向こうが見えるように、二つの四角の穴が開けられていましたよ。その男の墓に私は学校時代に海に行く時に一度見たですよ。そこには、密会石に崎枝の娘が穴を掘った棒もあったですよ。その石の棒は、それを動かすと雨が降るから動かしてはいけないと言われていました。だから、日照りのときに、そこで雨乞いをすると必ず夫婦雨を降らせてくれるということで雨乞いをしていました。今ではもう雨乞いをすることもないし、牧場も廃止になったから、誰もそこには通れなくなってしまった。また川平の男の墓も改築して村の近くの仲間森の下に造ってある。石の名前は特にないが、石に開いた穴をメーラアーパーカーと言う。カーは、井戸の意味。 |
| 全体の記録時間数 | 8:55 |
| 物語の時間数 | 5:58 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |