昔、川平から約一里離れたところに崎枝という村があった。そこに両親をなくした兄と妹が二人で暮らしていた。この二人の家には、カナマターというところに田んぼがあった。兄は妹に「今日は天気もいいから一生懸命働かなければならない。昼飯に弁当を作って持ってきてくれ」と言いつけて田んぼに行った。妹はマラリアにかかっていた。熱は出たり出なかったりで、熱が出ていないときは起きて仕事はできる。妹は腕によりをかけて弁当をつくり、いつも頭に被っているプップィ(風呂敷)に包んでいたら、急にマラリアの高い熱が出て動けなくなってしまった。しばらく寝ていたら熱は引いたのだが、陽はすでに西に傾いてしまっていた。慌てて田んぼに向かう途中怒りくるった兄と出会う。兄は「何をしているかこの野郎。」と妹を殴り倒して、弁当を風呂敷ごと投げ捨ててしまう。妹は兄が鬼のように見えたので目を両手で覆っていたので、兄が風呂敷をどこに投げたのかわからなかった。家に帰って腹を満たした兄は「短気を起こして自分も悪かった」と反省した。翌日妹は兄にプップィを返してくれと頼むと、兄は探しに出かけた見つからない。二日、三日と探しても見つからない。妹は八重山全部の神様に、「どうか風呂敷を捜して下さい。」とお願いした。八重山の神は集まって相談して、「ブナル〔妹〕のプップイを捜して、御願崎の石の上に上げてやろう。」ということになった。このとき竹富の神と崎枝の神と川平の神の三か所の神が遅刻した。竹富の神は、お産があったので遅刻したと言い、崎枝村の神は、葬式があったのだと言い、川平の神は、「部落村の人の拝みがあったので遅くなった」と言った。全神様が揃ったのでみんな力を合わせてプップイを捜して、それをこの御願崎(おがんざき)の岩の天辺に無事安置した。それが岩石になって、今ではあれをフツプイ石という名で呼ぶようになった。それから数年経って、竹富は毎年お産があり繁栄した。崎枝は毎月のように葬式が出て廃村になった。川平は、信心の心が深く、神行事だけは今も昔のとおり継続している。旧暦の七月だけでも覚えきれないぐらい神行事がある。
| レコード番号 | 47O340217 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C014 |
| 決定題名 | 御願崎のプツプ石(方言) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 喜舎場兼次郎 |
| 話者名かな | きしゃばけんじろう |
| 生年月日 | 19040113 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県石垣市字川平 |
| 記録日 | 19760802 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石垣市字川平 T23 B01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | むかす |
| 伝承事情 | 祖父より |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 崎枝,兄,妹,マラリア,風呂敷(プップィ)竹富の神,崎枝の神,川平の神 |
| 梗概(こうがい) | 昔、川平から約一里離れたところに崎枝という村があった。そこに両親をなくした兄と妹が二人で暮らしていた。この二人の家には、カナマターというところに田んぼがあった。兄は妹に「今日は天気もいいから一生懸命働かなければならない。昼飯に弁当を作って持ってきてくれ」と言いつけて田んぼに行った。妹はマラリアにかかっていた。熱は出たり出なかったりで、熱が出ていないときは起きて仕事はできる。妹は腕によりをかけて弁当をつくり、いつも頭に被っているプップィ(風呂敷)に包んでいたら、急にマラリアの高い熱が出て動けなくなってしまった。しばらく寝ていたら熱は引いたのだが、陽はすでに西に傾いてしまっていた。慌てて田んぼに向かう途中怒りくるった兄と出会う。兄は「何をしているかこの野郎。」と妹を殴り倒して、弁当を風呂敷ごと投げ捨ててしまう。妹は兄が鬼のように見えたので目を両手で覆っていたので、兄が風呂敷をどこに投げたのかわからなかった。家に帰って腹を満たした兄は「短気を起こして自分も悪かった」と反省した。翌日妹は兄にプップィを返してくれと頼むと、兄は探しに出かけた見つからない。二日、三日と探しても見つからない。妹は八重山全部の神様に、「どうか風呂敷を捜して下さい。」とお願いした。八重山の神は集まって相談して、「ブナル〔妹〕のプップイを捜して、御願崎の石の上に上げてやろう。」ということになった。このとき竹富の神と崎枝の神と川平の神の三か所の神が遅刻した。竹富の神は、お産があったので遅刻したと言い、崎枝村の神は、葬式があったのだと言い、川平の神は、「部落村の人の拝みがあったので遅くなった」と言った。全神様が揃ったのでみんな力を合わせてプップイを捜して、それをこの御願崎(おがんざき)の岩の天辺に無事安置した。それが岩石になって、今ではあれをフツプイ石という名で呼ぶようになった。それから数年経って、竹富は毎年お産があり繁栄した。崎枝は毎月のように葬式が出て廃村になった。川平は、信心の心が深く、神行事だけは今も昔のとおり継続している。旧暦の七月だけでも覚えきれないぐらい神行事がある。 |
| 全体の記録時間数 | 5:46 |
| 物語の時間数 | 5:07 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |