昔、川平に非常に仲の良い友達二人がいた。、二人とも農民だった。一人は、そのころとしてはとても珍しい鉄の箆(へら)を持っていた。もう一人は、箆(へら)は無いけど、牛は持っていたので、畑を牛で耕していた。この牛を持った友達が鉄へらを借りて畑を耕してみると、とても仕事がはかどる。鉄へらをもっていた友達は、二日でも、三日でも持っていって使っていいと言った。牛をもていた友達はこの鉄のへらをすっかり気に入ってしまい、どうにかして自分のものにしたくなった。そこで悪知恵を働かせて、翌朝、夜も開けないうちに、箆(へら)の柄だけを持って友達の家に行き「大変なことになってしまった。起きてくれ」と友達をたたき起こし「恐ろしい。世の中は変になってしまった。」と言いながらへらの柄を見せて、「君の箆(へら)を畑の畦に置いていたのだが、今朝見ると土の中におる石蚤(いしのみ)が、鉄箆(てつへら)を全部喰ってしまった」と言った。昔は、石の下の水溜(みずたま)りに人間を喰う蚤(のみ)よりは倍ぐらい大きい蚤(のみ)がいた。友達は「石蚤(いしのみ)が鉄を喰う訳ない。」「だから、それが不思議なのだ。ほらこのとおり木の柄は残してぜんぶ食われてしまった。今は鉄の箆(へら)は高いし、自分は弁償するだけのお金もない。しかしこれは自分の不注意ではない。虫けらが喰うたんだから一つ勘弁してくれ。」と言って家に帰り、鉄のへらをしばらく使わないで隠しておいた。しばらくして、鉄のへらを取られた友達も悪知恵を働かせ男の家に行くと、「あんたの牛を貸してくれんか。」と頼んだ。箆(へら)を盗んだ男は、気が咎めているから、素直に牛を貸した。そして翌朝日ものぼりきらないうちに「大変なことになってしまった」と友達をたたき起こし、「牛を畑にくくっておいて、今朝行ってみると、島全部の大きい馬蠅(うまぱい)が集まってきて、牛の肉を全部喰うてしまった。しかしこれは僕の不注意ではない。牛を買うお金もないし、勘弁してくれ」と言った。男は「いや、蠅が一晩で牛の肉を全部喰うことはどこの世界にもない。だから、お前の言うことは嘘だ。」と言うから、「いや、あります。それじゃあ、あんたが鉄の箆(へら)を石蚤(いしのみ)が喰うたというのは通るか。」と言ってお互いにゆずらないのでとうとう裁判になった。二人は裁判官から「馬鹿野郎。白アリが鉄を喰うわけもない、蠅が牛一頭の肉を喰う訳もない。貴様らはそういう馬鹿なことを言うな。裁判のも価値ない。」と叱られて帰ってきたか。それでもう、「あんたの箆(へら)はここにある、持っていけ。」「そんなら、牛は裏に置いたから引いて行け。」ということになったそうだ。
| レコード番号 | 47O340211 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C014 |
| 決定題名 | 鉄喰虫と牛喰銀蝿(方言) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 喜舎場兼次郎 |
| 話者名かな | きしゃばけんじろう |
| 生年月日 | 19040113 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県石垣市字川平 |
| 記録日 | 19760802 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石垣市字川平 T23 A07 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 笑話 |
| 発句(ほっく) | むかし |
| 伝承事情 | 祖父より |
| 文字化資料 | 石垣島の民話 P226 |
| キーワード | 鉄のへら,石蚤,牛,蝿,悪知恵,裁判 |
| 梗概(こうがい) | 昔、川平に非常に仲の良い友達二人がいた。、二人とも農民だった。一人は、そのころとしてはとても珍しい鉄の箆(へら)を持っていた。もう一人は、箆(へら)は無いけど、牛は持っていたので、畑を牛で耕していた。この牛を持った友達が鉄へらを借りて畑を耕してみると、とても仕事がはかどる。鉄へらをもっていた友達は、二日でも、三日でも持っていって使っていいと言った。牛をもていた友達はこの鉄のへらをすっかり気に入ってしまい、どうにかして自分のものにしたくなった。そこで悪知恵を働かせて、翌朝、夜も開けないうちに、箆(へら)の柄だけを持って友達の家に行き「大変なことになってしまった。起きてくれ」と友達をたたき起こし「恐ろしい。世の中は変になってしまった。」と言いながらへらの柄を見せて、「君の箆(へら)を畑の畦に置いていたのだが、今朝見ると土の中におる石蚤(いしのみ)が、鉄箆(てつへら)を全部喰ってしまった」と言った。昔は、石の下の水溜(みずたま)りに人間を喰う蚤(のみ)よりは倍ぐらい大きい蚤(のみ)がいた。友達は「石蚤(いしのみ)が鉄を喰う訳ない。」「だから、それが不思議なのだ。ほらこのとおり木の柄は残してぜんぶ食われてしまった。今は鉄の箆(へら)は高いし、自分は弁償するだけのお金もない。しかしこれは自分の不注意ではない。虫けらが喰うたんだから一つ勘弁してくれ。」と言って家に帰り、鉄のへらをしばらく使わないで隠しておいた。しばらくして、鉄のへらを取られた友達も悪知恵を働かせ男の家に行くと、「あんたの牛を貸してくれんか。」と頼んだ。箆(へら)を盗んだ男は、気が咎めているから、素直に牛を貸した。そして翌朝日ものぼりきらないうちに「大変なことになってしまった」と友達をたたき起こし、「牛を畑にくくっておいて、今朝行ってみると、島全部の大きい馬蠅(うまぱい)が集まってきて、牛の肉を全部喰うてしまった。しかしこれは僕の不注意ではない。牛を買うお金もないし、勘弁してくれ」と言った。男は「いや、蠅が一晩で牛の肉を全部喰うことはどこの世界にもない。だから、お前の言うことは嘘だ。」と言うから、「いや、あります。それじゃあ、あんたが鉄の箆(へら)を石蚤(いしのみ)が喰うたというのは通るか。」と言ってお互いにゆずらないのでとうとう裁判になった。二人は裁判官から「馬鹿野郎。白アリが鉄を喰うわけもない、蠅が牛一頭の肉を喰う訳もない。貴様らはそういう馬鹿なことを言うな。裁判のも価値ない。」と叱られて帰ってきたか。それでもう、「あんたの箆(へら)はここにある、持っていけ。」「そんなら、牛は裏に置いたから引いて行け。」ということになったそうだ。 |
| 全体の記録時間数 | 4:27 |
| 物語の時間数 | 3:56 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |