竜の話(方言)

概要

昔、宮良村から五里離れたところに桃里村(とうざとむさ)がありました。これは人頭税確保のために、官の命令で移住させて村寄留(むらぎりゅう)して、作らした村でありますが、大正五年から六年ごろに廃村になっております。その廃村になった理由は、マラリアのために人が一人減り、二人減りして最後にその村を持つことが出来ないで廃村になった村です。この村の中に昔から伝わってる龍の話があるので話してみます。この桃里村の跡には、大きな岩がある山があっちこっちに聳え立っております。その中に屏風山(ぺーふうやま)という山があります。この山はその岩山の合間に大きな桑の古木がいたるところに並んでおったりしておったので、この当時の琉球藩の御主加那志前(うしゅがらすまい)から、「馬の鞍のファマールになる曲がった桑の木を見つけて出すように。」という仰せが出ましたので、村人たちは、この馬のファマールになる桑の木を見つけて回るために岩山の間を駆けずり回ったらしい。そのうちに松本屋(まつもとやー)の人が、その岩山を回ったところが、その石の上に大きな赤いハブが寝ておった。このハブは普通のハブとは違って牙も出ておるというような格好だから、怖くなったって。この人がたまげて、「きゃっ。」ちゅうて、声を出したらしい。その「きゃっ。」と言った声で目を覚ましたこのハブ公は、見る見るうちに、なんか髭を生やした仙人に似たような化身になって声が出て、「私は君に見つかったからには天に昇ることは出来ない。しかし、もし、君が私を見たことを誰にも言わないなら、天に昇って龍になることができる。」と言うから、その松本屋(まつもとやー)の人が誰にも言わないことを約束すると、「そんなら、一言だけ教えておく。何月何日に雨を降らして、その雨で天に昇るんだから君の家の屋敷の東南の隅に確か桑の木があるはずだ。その木の下に水甕を置いて水を溜めろ。」と言って、そのハブの化身の仙人は姿を消したそうです。そのマツモトヤの人は言われたとおり、屋敷の東北の隅にあるた桑の木に、クバの葉を逆さにしてくくって甕の下に水が流れるようにして雨水を溜めるようにすると、仙人が言ったとおり何月何日に大きな雷鳴がして大雨になった。その人はその大雨があった後で何があるだろうと思ってこの甕を探って見たところが、得体の知れないこぶし大の石ともつかない変なものがあったので、これを自分の家の奥深く隠して持っておったと。それからこの人の家は毎年牛が栄え、馬が栄え、田んぼの豊作が続いたと。だから、十数年後には財産も相当できて裕福な家庭になったと。そのようなわけで、松本屋(まつもとやー)のウヤギ〔富貴〕ちゅうて呼ばれるようになったそうです。ところが、この人がある日のこと他の友達が来て、あまり酒を飲んだとき、「君はどういうわけで、こんなに金にウヤギするか。」ちゅうて言ったら、仙人に、「このことは絶対誰にも言うちゃいかんなり。」言われておったのに、お酒を飲んだ上だから、ことの次第をしゃべってしまったそうです。そしたら、その年から年々この人の財産が減り作物が出来なくなり、そうしてまたもとの貧乏になったと。そしてその松本屋(まつもとやー)のウヤぎした話を聞いた人が、「その大雨のときに拾ったのは龍糞ちゅうものだろう。」という結論をつけたのは、ずうっと後年のことだそうです。その松本屋(まつもとやー)の作っとった田んぼは、今でもウンダターいうてそのまま桃里村の西に立派な大きな田んぼがあるんで、これは私たち前花家の何代前かの祖父(じ い)さんが、その田んぼを貰ったから、私たちの家で相続人して不動産にしておった。これは私の小さいころに母から聞いた話です。

再生時間:4:45

民話詳細DATA

レコード番号 47O340023
CD番号 47O34C002
決定題名 竜の話(方言)
話者がつけた題名
話者名 前花哲雄
話者名かな まえはなてつお
生年月日 19090304
性別
出身地 沖縄県石垣市字宮良
記録日 19750804
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 石垣市字宮良 T36 A04
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 日本昔話通観第26巻 P296
キーワード 馬のくら,桑の木,龍糞
梗概(こうがい) 昔、宮良村から五里離れたところに桃里村(とうざとむさ)がありました。これは人頭税確保のために、官の命令で移住させて村寄留(むらぎりゅう)して、作らした村でありますが、大正五年から六年ごろに廃村になっております。その廃村になった理由は、マラリアのために人が一人減り、二人減りして最後にその村を持つことが出来ないで廃村になった村です。この村の中に昔から伝わってる龍の話があるので話してみます。この桃里村の跡には、大きな岩がある山があっちこっちに聳え立っております。その中に屏風山(ぺーふうやま)という山があります。この山はその岩山の合間に大きな桑の古木がいたるところに並んでおったりしておったので、この当時の琉球藩の御主加那志前(うしゅがらすまい)から、「馬の鞍のファマールになる曲がった桑の木を見つけて出すように。」という仰せが出ましたので、村人たちは、この馬のファマールになる桑の木を見つけて回るために岩山の間を駆けずり回ったらしい。そのうちに松本屋(まつもとやー)の人が、その岩山を回ったところが、その石の上に大きな赤いハブが寝ておった。このハブは普通のハブとは違って牙も出ておるというような格好だから、怖くなったって。この人がたまげて、「きゃっ。」ちゅうて、声を出したらしい。その「きゃっ。」と言った声で目を覚ましたこのハブ公は、見る見るうちに、なんか髭を生やした仙人に似たような化身になって声が出て、「私は君に見つかったからには天に昇ることは出来ない。しかし、もし、君が私を見たことを誰にも言わないなら、天に昇って龍になることができる。」と言うから、その松本屋(まつもとやー)の人が誰にも言わないことを約束すると、「そんなら、一言だけ教えておく。何月何日に雨を降らして、その雨で天に昇るんだから君の家の屋敷の東南の隅に確か桑の木があるはずだ。その木の下に水甕を置いて水を溜めろ。」と言って、そのハブの化身の仙人は姿を消したそうです。そのマツモトヤの人は言われたとおり、屋敷の東北の隅にあるた桑の木に、クバの葉を逆さにしてくくって甕の下に水が流れるようにして雨水を溜めるようにすると、仙人が言ったとおり何月何日に大きな雷鳴がして大雨になった。その人はその大雨があった後で何があるだろうと思ってこの甕を探って見たところが、得体の知れないこぶし大の石ともつかない変なものがあったので、これを自分の家の奥深く隠して持っておったと。それからこの人の家は毎年牛が栄え、馬が栄え、田んぼの豊作が続いたと。だから、十数年後には財産も相当できて裕福な家庭になったと。そのようなわけで、松本屋(まつもとやー)のウヤギ〔富貴〕ちゅうて呼ばれるようになったそうです。ところが、この人がある日のこと他の友達が来て、あまり酒を飲んだとき、「君はどういうわけで、こんなに金にウヤギするか。」ちゅうて言ったら、仙人に、「このことは絶対誰にも言うちゃいかんなり。」言われておったのに、お酒を飲んだ上だから、ことの次第をしゃべってしまったそうです。そしたら、その年から年々この人の財産が減り作物が出来なくなり、そうしてまたもとの貧乏になったと。そしてその松本屋(まつもとやー)のウヤぎした話を聞いた人が、「その大雨のときに拾ったのは龍糞ちゅうものだろう。」という結論をつけたのは、ずうっと後年のことだそうです。その松本屋(まつもとやー)の作っとった田んぼは、今でもウンダターいうてそのまま桃里村の西に立派な大きな田んぼがあるんで、これは私たち前花家の何代前かの祖父(じ い)さんが、その田んぼを貰ったから、私たちの家で相続人して不動産にしておった。これは私の小さいころに母から聞いた話です。
全体の記録時間数 4:59
物語の時間数 4:45
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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