昔、あるところに、非常に貧乏な百姓が親子三名住んでおったらしいです。住んでおって、その息子の三
歳のときに、父、母、双方の親が死んでしまって、その子は隣の人の下男として、向こうで世話になったそ
うです。なって、毎日、朝晩馬の草刈りにのっぱらに追いやられたらしいです。その子がいよいよ、十三の
年に、十三の年に草刈りに行って、野原の一本松の下で、もの寂しいように立っておったそうです。その時
に、いつの間にか、その男の後ろに女の娘が現れ、で、その男に言うには、「なぜ、あんたはこんな寂しい
ような、顔つきでここに立っておられるか。」と、聞いたそうです。「わしは、三つの年に親両方を失い、
そいで、よその下男奉公で、非常に難儀しておるもんだ。それで、今日は、親がおればこういうことがなか
ったと、非常に自分は思って、ここを立っておるわけである。」と、この事を女に話したらしいです。女は
それを聞いて、「ああ、自分らも、ちょうどおなしである。兄弟は七人おるけど、小さい時に七人とも親に
捨てられて、非常に苦労して、あんたみたいように、育ってきた。だから、私は、あんたみたような、かわ
いそうな人の妻にでもしてもらえば、自分は、一生懸命働いて、裕福になるはずだと思うておるんだから、
私を必ず妻にしてください。」というたら、その男が言うには、「ああ、わしみたいような貧乏者が、あん
たみたようなきれいな女を妻にすることはできないから、断ります。」と言うたらしいです。無理やりにそ
の女は、「いや、必ず妻にしてください。」と言うたので、その男は、「私は、お父さんお母さんの亡くな
った時に、隣の家から葬式費用と、また着物を借りてきて着けてある。いずれは儲けて返さなくちゃならな
い。その借金と着物を、どうして返そうか。」と言うと、女は、「心配するな。」と。ここで、まあ自分の
妻にしたわけ。
ある晩、自分はゆっくり寝床に就いて寝ておったら、自分の仕事小屋で、ガヤガヤガヤ五六名の人間の音
がしたらしい。それで、その音はですね、その女が、自分の七北斗星の七つの星の六名の兄弟を全部呼んで
、その一晩でね、この反物をこさえたらしい。で、それを隣に返済して、借金も返済した。その後は、二人
が一生懸命働いて、今度もう粟作り、米作ったら、もう良く出来るので、まあ粟倉庫、米倉庫まで作って、
もう非常に裕福な農家となって、裕福な生活をしたらしいです。そうしておって、あるとき、その男が、こ
の北斗七星ですか、その七(なな)つん星(ぶす)を、七斗北星を見たときに、「今日はこの星は、七つあ
るけど六つしかない。」と、あの女に言うたらしい。その女は、「この一人が自分である。自分は、あんた
がそれを分かった以上、是非とも自分の住まいの天に行かなくちゃならない。」と言うことだったけれど、
その男は、そのことを知っておってね。そのいわば羽衣ですね、昔の羽衣をね、隠しておいたらしい。そし
たら、女は、「自分の羽が探されんから、天に行くことが出来ない。」と、いうて毎日泣き、悲しんでおっ
たらしいです。そしたら、その男との子どもが出来て、その子守を連れて、子守をさせておったらしい。そ
の子守の子守歌が、「私のお母さんのね、羽は、お父さんがね、粟倉の粟倉庫に隠してある。」ということ
を子守歌で歌っておったらしい。
それで、その女はそれを聞いて、すぐ粟倉庫に言って、粟を引っ繰り返してみたら、そこに羽衣があった
らしい。あったもんだから、それを着けてもう今度は元気で、天に昇ったらしい。もうその女は、空に飛ん
だんだから、この男は、「ああ、そのことを言わんでおればよかった。」と。それがこの七斗星の七つの星
と言われておるらしいです。
| レコード番号 | 47O150020 |
|---|---|
| CD番号 | 47O15C002 |
| 決定題名 | 天人女房(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 七つ星の由来 |
| 話者名 | 鹿川亀 |
| 話者名かな | かがわかめ |
| 生年月日 | 19081225 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県石垣市大浜 |
| 記録日 | 19750804 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石垣市大浜T02A05 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | むかしあるところに |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 大浜の民話(平成7年度卒業論文)P68 |
| キーワード | 下男,北斗七星,子守り歌, |
| 梗概(こうがい) | 昔、あるところに、非常に貧乏な百姓が親子三名住んでおったらしいです。住んでおって、その息子の三 歳のときに、父、母、双方の親が死んでしまって、その子は隣の人の下男として、向こうで世話になったそ うです。なって、毎日、朝晩馬の草刈りにのっぱらに追いやられたらしいです。その子がいよいよ、十三の 年に、十三の年に草刈りに行って、野原の一本松の下で、もの寂しいように立っておったそうです。その時 に、いつの間にか、その男の後ろに女の娘が現れ、で、その男に言うには、「なぜ、あんたはこんな寂しい ような、顔つきでここに立っておられるか。」と、聞いたそうです。「わしは、三つの年に親両方を失い、 そいで、よその下男奉公で、非常に難儀しておるもんだ。それで、今日は、親がおればこういうことがなか ったと、非常に自分は思って、ここを立っておるわけである。」と、この事を女に話したらしいです。女は それを聞いて、「ああ、自分らも、ちょうどおなしである。兄弟は七人おるけど、小さい時に七人とも親に 捨てられて、非常に苦労して、あんたみたいように、育ってきた。だから、私は、あんたみたような、かわ いそうな人の妻にでもしてもらえば、自分は、一生懸命働いて、裕福になるはずだと思うておるんだから、 私を必ず妻にしてください。」というたら、その男が言うには、「ああ、わしみたいような貧乏者が、あん たみたようなきれいな女を妻にすることはできないから、断ります。」と言うたらしいです。無理やりにそ の女は、「いや、必ず妻にしてください。」と言うたので、その男は、「私は、お父さんお母さんの亡くな った時に、隣の家から葬式費用と、また着物を借りてきて着けてある。いずれは儲けて返さなくちゃならな い。その借金と着物を、どうして返そうか。」と言うと、女は、「心配するな。」と。ここで、まあ自分の 妻にしたわけ。 ある晩、自分はゆっくり寝床に就いて寝ておったら、自分の仕事小屋で、ガヤガヤガヤ五六名の人間の音 がしたらしい。それで、その音はですね、その女が、自分の七北斗星の七つの星の六名の兄弟を全部呼んで 、その一晩でね、この反物をこさえたらしい。で、それを隣に返済して、借金も返済した。その後は、二人 が一生懸命働いて、今度もう粟作り、米作ったら、もう良く出来るので、まあ粟倉庫、米倉庫まで作って、 もう非常に裕福な農家となって、裕福な生活をしたらしいです。そうしておって、あるとき、その男が、こ の北斗七星ですか、その七(なな)つん星(ぶす)を、七斗北星を見たときに、「今日はこの星は、七つあ るけど六つしかない。」と、あの女に言うたらしい。その女は、「この一人が自分である。自分は、あんた がそれを分かった以上、是非とも自分の住まいの天に行かなくちゃならない。」と言うことだったけれど、 その男は、そのことを知っておってね。そのいわば羽衣ですね、昔の羽衣をね、隠しておいたらしい。そし たら、女は、「自分の羽が探されんから、天に行くことが出来ない。」と、いうて毎日泣き、悲しんでおっ たらしいです。そしたら、その男との子どもが出来て、その子守を連れて、子守をさせておったらしい。そ の子守の子守歌が、「私のお母さんのね、羽は、お父さんがね、粟倉の粟倉庫に隠してある。」ということ を子守歌で歌っておったらしい。 それで、その女はそれを聞いて、すぐ粟倉庫に言って、粟を引っ繰り返してみたら、そこに羽衣があった らしい。あったもんだから、それを着けてもう今度は元気で、天に昇ったらしい。もうその女は、空に飛ん だんだから、この男は、「ああ、そのことを言わんでおればよかった。」と。それがこの七斗星の七つの星 と言われておるらしいです。 |
| 全体の記録時間数 | 6:49 |
| 物語の時間数 | 6:21 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |