安居御嶽(共通語)

概要

鬼屋石(うんやいし)の話は年代不詳で人の名とかもはっきりはししないので、事実あったないか分からんが、先輩方から聞いたところを私が覚えている範囲でお話申し上げたいと思います。この話の鬼屋石(うんやいし)は真栄里にあるので、多分真栄里部落に兄と妹の二人がおって妹は子供を一人産んでおったと。ところがこの兄は真栄里の生まれではあるがね、親の言うことも聞かない乱暴者で家出をして家に帰って来ない。どうしたことかと妹は心配をしておったが、長らく経っても帰ってこないので不思議に思っておったわけです。そのときに世間では自分の兄は海岸端にあるところの岩の下で鬼になって人を食べておると噂になっていたので、これが事実か事実でないかということを確かめるために妹は子供を連れて海岸へ出て行きました。この海岸はこの部落から約四百メーターぐらいの地点に海に面して岩があってそこに人が入れるようなところであったわけです。そこに行ったら案の定向こうに兄はおったと。それで、「こっちにおるんだなあ。じゃあ、鬼になって人を食べておるかどうか試してみよう。」と、家で準備して餅に石を入れて持ってきたわけです。兄さんに会って、「兄さんあなたは会いに来たんだよ。あなたは腹もすいてひもじいでしょうからね、この餅食べなさい。」ちゅうて食べさせたら、この兄はこの石を入れた餅を石までガチリガチリ、ギシリギシリとかじって石も食べたと。だから、あの噂は間違いないんだなと、この妹は、「こっちに居ったら鬼に食われる。どうして帰るか。」と心配して逃げて帰ろうとして、「兄さんうちは家に帰ろう。」と言うても帰してくれないので、子供のせいにして逃げようと思って、「子供が大便に行きたいと言うのでしてくる。」と言っても、「いかさない。どうしてもこっちでしなさい。」と言うので、「この子供は人前ではこういう用便はしないからちょっと行かしてくれ。」と言うたら、この鬼になった兄は、「それじゃあしなさい。」と言って許しはしたものの逃げられないように、妹の足を強い縄で縛って行かしたわけです。そうしたらたもんだから、妹は思案の末、自分の足に縛られているところの縄を解いてこれを石に縛ってから逃げたわけです。兄は妹が出て行くときにその縄を持っておったわけですよね。自分がその縄を持っておれば逃げられないと思っていたら、いくら引いても動かないから、行ってみたら妹を縛った縄は石にくくりつけられていて妹はおらないと。妹は今のうちに逃げようと子供をおぶって逃げて、家の方に四百メーターぐらい帰って来ると部落の百メーターか、百五十メーターぐらいのところに、安居御嶽の拝所があるんですよ。その拝所のところに来ると、そこにこんもりと茂った大きな梯梧(でいご)の木があったらしいんですよ。その梯梧(でいご)の木が大きく割れていたもんだから妹は、そこの中に入って隠れたわけですね。そうしたら木がまた蓋をしたけれども、そのときに着物の裾が垂れていたから少し木の外に出ていたわけさね。後を追うて来た兄は、その木から出ている着物の端を見て、「こっちに隠れておるんだな。じゃあ一応帰って斧を持って来て、この木を倒して割ってやろう。」と斧を取り来て帰っていったと。そのときにね、また梯梧(でいご)の木が開いたからそこから逃げるときに、裾の出ておった分をそのまま切ってそこにむしっておいて逃げたと。だから、自分は難を逃れたというわけさな。ところがこの兄なる鬼が斧を持って来て、着物の裾が残っておるのを見て、「まだおるんだな。」と斧で倒しても妹はおらなかった。今でもその梯梧(でいご)の木があるところは、「人を救った立派な神様がいる。」ということで安居御嶽があるんですよね。

再生時間:4:47

民話詳細DATA

レコード番号 47O341407
CD番号 47O34C107
決定題名 安居御嶽(共通語)
話者がつけた題名
話者名 細工利夫
話者名かな さいくとしお
生年月日 19200930
性別
出身地 沖縄県石垣市字真栄里
記録日 19980313
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 石垣市真栄里 T86 A04
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 本格昔話、 伝説
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料
キーワード 鬼屋石,真栄里,兄,妹,子供,鬼,餅,石,大便,縄,逃げ,安居御嶽,拝所,梯梧の木,割れていた,隠れた,斧,神様
梗概(こうがい) 鬼屋石(うんやいし)の話は年代不詳で人の名とかもはっきりはししないので、事実あったないか分からんが、先輩方から聞いたところを私が覚えている範囲でお話申し上げたいと思います。この話の鬼屋石(うんやいし)は真栄里にあるので、多分真栄里部落に兄と妹の二人がおって妹は子供を一人産んでおったと。ところがこの兄は真栄里の生まれではあるがね、親の言うことも聞かない乱暴者で家出をして家に帰って来ない。どうしたことかと妹は心配をしておったが、長らく経っても帰ってこないので不思議に思っておったわけです。そのときに世間では自分の兄は海岸端にあるところの岩の下で鬼になって人を食べておると噂になっていたので、これが事実か事実でないかということを確かめるために妹は子供を連れて海岸へ出て行きました。この海岸はこの部落から約四百メーターぐらいの地点に海に面して岩があってそこに人が入れるようなところであったわけです。そこに行ったら案の定向こうに兄はおったと。それで、「こっちにおるんだなあ。じゃあ、鬼になって人を食べておるかどうか試してみよう。」と、家で準備して餅に石を入れて持ってきたわけです。兄さんに会って、「兄さんあなたは会いに来たんだよ。あなたは腹もすいてひもじいでしょうからね、この餅食べなさい。」ちゅうて食べさせたら、この兄はこの石を入れた餅を石までガチリガチリ、ギシリギシリとかじって石も食べたと。だから、あの噂は間違いないんだなと、この妹は、「こっちに居ったら鬼に食われる。どうして帰るか。」と心配して逃げて帰ろうとして、「兄さんうちは家に帰ろう。」と言うても帰してくれないので、子供のせいにして逃げようと思って、「子供が大便に行きたいと言うのでしてくる。」と言っても、「いかさない。どうしてもこっちでしなさい。」と言うので、「この子供は人前ではこういう用便はしないからちょっと行かしてくれ。」と言うたら、この鬼になった兄は、「それじゃあしなさい。」と言って許しはしたものの逃げられないように、妹の足を強い縄で縛って行かしたわけです。そうしたらたもんだから、妹は思案の末、自分の足に縛られているところの縄を解いてこれを石に縛ってから逃げたわけです。兄は妹が出て行くときにその縄を持っておったわけですよね。自分がその縄を持っておれば逃げられないと思っていたら、いくら引いても動かないから、行ってみたら妹を縛った縄は石にくくりつけられていて妹はおらないと。妹は今のうちに逃げようと子供をおぶって逃げて、家の方に四百メーターぐらい帰って来ると部落の百メーターか、百五十メーターぐらいのところに、安居御嶽の拝所があるんですよ。その拝所のところに来ると、そこにこんもりと茂った大きな梯梧(でいご)の木があったらしいんですよ。その梯梧(でいご)の木が大きく割れていたもんだから妹は、そこの中に入って隠れたわけですね。そうしたら木がまた蓋をしたけれども、そのときに着物の裾が垂れていたから少し木の外に出ていたわけさね。後を追うて来た兄は、その木から出ている着物の端を見て、「こっちに隠れておるんだな。じゃあ一応帰って斧を持って来て、この木を倒して割ってやろう。」と斧を取り来て帰っていったと。そのときにね、また梯梧(でいご)の木が開いたからそこから逃げるときに、裾の出ておった分をそのまま切ってそこにむしっておいて逃げたと。だから、自分は難を逃れたというわけさな。ところがこの兄なる鬼が斧を持って来て、着物の裾が残っておるのを見て、「まだおるんだな。」と斧で倒しても妹はおらなかった。今でもその梯梧(でいご)の木があるところは、「人を救った立派な神様がいる。」ということで安居御嶽があるんですよね。
全体の記録時間数 5:19
物語の時間数 4:47
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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